表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かわいい少女に癒されたい—転生したので、居場所を失った少女を拾うことにした—  作者: 夢見る冒険者
黒髪の少女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/41

第36話 不平等な条件

転移魔法でニィナを送り届け、再び戻ろうとする。けれど、ニィナはまだ恐怖が抜けきっていなかったのだろう。小さな手で、俺の服をぎゅっと掴んだまま、決して離そうとしない。震えを堪えるように、必死で。それを自身でも理解しているのだろう、俺に迷惑が掛かると。


だから、離れろうと腕に力を込めて、ぷるぷると震わせていた。けれど、やっぱり離れることができないようだった。だって、買い物に行っているミアハこの場にいないのだ、ここで俺まで学園に戻ったら、独りになってしまうと、理解しているんだろう。


もちろん学園の方は気になる。けれど、あそこにはフェリシアがいる。だからきっと、なんとかしてくれるという一方的な信頼があった。


ニィナの細い指先に込められた力が、妙に心細さを強調していて。だからミアハが帰ってくるまでこの状態にいることにした。


「……大丈夫だよ」


そう声をかけならが、安心させるように背中を撫でる。


数分もすれば、ミアハは帰宅した。「ただいまっす」なんて、声を上げながら部屋に入ってくる。そして、俺がいる事に気付くと、勢いよくばっと振り向き。そして、ニィナが俺から離れないことで察したようだ。


「なんすか~ご主人様、寂しくなっての一時帰還っすか?」

「そうだな。最近二人との時間が減って寂しかった」

「でも、そろそろ学園に戻らないとだ。フェリシアたちを待たせているから」

「そうっすね。じゃあ、ニィナちゃんはこっちで預かるっす」


優しく撫でていた手を離し、腰に抱きついているニィナに声をかける。


「ニィナ、また夜に会おう。今夜は寂しいから、一緒に寝てくれる?」


ニィナは少し視線を彷徨させて、それでもこくりと頷いた。


「うん!」


と頷いて、手を離す。


「ミヤハ、悪いけど頼んだよ」

「はいっす」


ミヤハは優しい笑顔で頷いた。


俺は転移魔法で学園に移動する。本来は隠しておきたかった魔法を使って。でも、使ったことは仕方ないと思った。だって、これは考えるよりも先に、染みついた習慣なのだから。大切な人を助けるために躊躇しないよう、何千回と練習した魔法。


それを使って学園へ戻る。


想定したように学園の空気は思い。張り詰めた視線の中心で、王子がこちらを睨みつけていた。その顔に浮かんでいるのは、敗北感と、抑えきれない怒り。


「……なるほどな」


低く吐き捨てるような声。


「てめぇが余裕ぶってた理由、ようやく分かったぜ」


ここ二週間、王子の方でもまた、勝利するために色々動いていたことを理解している。全ては俺に勝つために。策を練り、条件を揃え、確実に潰すために準備していたことを知っている。


それでも俺が余裕を崩さなかった理由。それは、奥の手を隠していたからに他ならない。そして、その余裕をやっと理解したのだろう、転移魔法を発動する際に露見した、魔力量によって。


王子の3倍だと思っていた魔力量は5倍だった。それはもはや王族にすら届くレベル。一貴族の範疇を確実に超えていた。


王子は、ゆっくりと口角を吊り上げる。その笑みに滲むのは、敵意と執念だった。


「面白いよな、この世界というのは。全て俺様の為に、創られている」


そんな戯言を王子は口に出す。この場に教会の関係者がいたら、きっと敵意を持つ発言を堂々とする。この場の支配者は自分であると示すために。


「あのままだったら確実に俺は負けていたよ。お前の戦力を誤解してな。だが今は違う。俺はもう、お前を侮らない。徹底的に潰す」


その視線の先に物語っているの謀られた事実に対する怒りを超え、俺を始めて宿敵と認めた者の視線だった。初めて俺の表情から、笑みが消え、その真剣な表情を見て、王子は何かを確信したようだった。


「最終的な保険がなくなったってことで、ようやくフェアだな。だからこそ、条件を追加させてもらう」


嫌な予感がした。けれど、王子は構わず続ける。


「回復アイテムは一切禁止とする。もちろん、神器など他の道具を使ってもだ」


明らかに俺たちを制限するもの。戦力を固定して考えるために逃げ道をふさぐ。


「それと、こっちは五十人でいく。もちろん、お前も50名ほど選出すればいい。この学園に在籍する者からな」


分かっているさ、50名ほども使えば過剰戦力だという事も。そして、アルシェの方も、今まで希望を持っていた表情から一転して、険しいものへと変わる。それに、何かを確信したようにニヤリと笑みを浮かべた。


そりゃそうだ。アルシェは貴族令嬢として、駆け引きをこれまでしてこなかった。だからこそ、表情の変化を取り繕えない。奇しくもそれは、俺達が彼女の感情を引き出したからこそ、知られた事実だった。


そして王子は、勝ち誇るように笑った。


「さて、契約に入ろうか」


こちらに一切の猶予を与えないつもりらしい。この場で即決させる。


「断ったら?」


俺が静かに問い返すと、王子は鼻で笑う。


「意味ねぇだろ」


その声音は、あまりにも冷たかった。


「女子寮に押しかけるだけじゃねぇ。お前の屋敷にも、二人ほどいたよな?」


魔力で威圧しようと、殺気を向けようともはや彼に対しては意味をなさない。より、何かを確信しているようだった。


俺が押し黙る中、彼は続ける。


「安心しろよ、レオニス」


口元だけが歪む。


「今はまだ、何も奪わねぇでやるから」


そう愉悦的な表情を浮かべていた。権力があるものが何かを手にする。それは時代が変わっても、変わらない真実で。だからこそ、俺は、立ち向かわないといけないのだ。その事実に。


「いいだろう、たとえお前だけだろうと、徹底的に潰して見せる」

「やってみろよ」


その表情で確信はした。こいつはきっと、死ぬ間際になろうと、自分の行動を後悔することがないと。脅しは通じない相手だと。その意志の強さがきっと、魔法の強さに変わっているのだと、そう確信した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ