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かわいい少女に癒されたい—転生したので、居場所を失った少女を拾うことにした—  作者: 夢見る冒険者
プロローグ

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第3話 兄を慕う妹って尊いよね?

……にしても、二人とも可愛かったな。なんて思いながら歩いていると、ずっと隣にいた少女、フェリシアから声が掛けられる。


「ほんと、不思議ですよね、ご主人様は?」

「……何が?」


唐突に投げかけられた言葉に首を傾げながら、思わず彼女の方に視線を向ける。すると、目が合う。何が不思議かは分からないけど、フェリシアがかわいいのは分かる。


年は俺と同じく14歳。赤いサラッとしたショートカットが特徴の少女で、胸はCカップくらいある。お腹はくびれていて、スタイルが良く、目元もぱっちりとしていた。服装は黒のゴスロリ風ワンピースで、胸元には赤いリボンがついている。ぴちっとしているので、つい胸に目がいきそうになる、のだが……先程のことがあったので、我慢する。


彼女は皆から信頼も得ていて、一人一人をよく見ている。誰からも求められる姿は、まさしく《《アイドル》》だった。クラスに居たら絶対にモテただろうな……。きっと、俺なんか話しかけることすら出来なかっただろうけど……。なんて別のことを考えているなか、彼女は続ける。


「ご主人様は、私たちに何も求めません。普通なら、あり得ません。私たちは……その、商品、のようなものですし……」


自分で言いながら、フェリシアは少しだけ悲しそうな表情をする。そして、目の前でまだ楽しそうに遊んでいる少女達を見つめた。


その言葉の中にはきっと、彼女自身を含んでいっていないことが分かる。誰かのために自分を犠牲にできる。そんな《《異常な精神》》を持っているのが彼女だった。いや、高潔というべきなんだろうね。


彼女は、目の前の少女達を貶めることが無いように、言葉を選びながら、続ける。


「普通、ニィナのような態度を取ったら、罰を与えられてもおかしくないです。……それに……その、女性であれば、別の目的で扱われることも多いですし」


彼女の言葉通り、普通、奴隷を買うなら戦場や労働で使い潰すか、それとも愛玩か。多くがそのどちらかだった。それがこの世界の普通だから。


俺のように、金貨数十枚~数百枚をはたいて買って、ただ自由に過ごさせている。それが彼女からしたら異常な行為だと思っているのだろう。賢い彼女は未来を想定できる、その頭脳を持っているからこそ、他の少女たちがこの先に何を求められているのか、少し不安なのだ。


こんな問いかけをして、主人の不興を買うデメリットを彼女が想像できないはずがない。それでも、目の前の子達を想って、問いかけてくる。その献身さは相変わらず、眩しい。素直に嫉妬を覚える。彼女のように高潔に生きられたら……と。


(……きっと俺は、彼女にこそ認められたいから、傍に置いているのだろう)


俺はフェリシアを安心させるようにふっと笑う。それは杞憂だと伝えるように。


「何も求めてないわけじゃないよ」

「……え?」


素直な気持ちを吐露すると、フェリシアは少し緊張した目線で俺の方を見つめてくる。出会った時。互いに11歳の頃とは違う。体も成長した今、扱いが変わるのか……そう改めて問う彼女に、自分が求めるものを伝える。


「俺が求めるのはね、あの光景だよ」

「……あの光景?」


フェリシアは俺の視線の先、みんなが遊んでいる姿を見つめる。そうして首を傾げた。


「みんなが楽しそうに笑ってる、あの感じ」

「……それが、目的ですか?」


少女は少し黙ってから、首をかしげる。それを肯定して頭を立てに振る。


「うん。種族とか関係なくさ。みんなが笑っている光景。それがたまらなく嬉しい。何より、誰かが笑っている場を俺が作れたならきっと、どこか自分が満たされるんだよ」


前世の世界。昔の営業先の社長の言葉を思い出す。人は誰かに優しくすることで初めて、自分を満たすことが出来る。昔は分からかったその言葉を今は少し理解できる。


まぁ、別の欲を満たしている側面は拭えないけど……。


俺の事をじっと見つめていた彼女は、その言葉が嘘ではないと分かったのだろう。どこか納得するように頷いた。


「……そう、ですか」


普通の人に言ったら理解されない言葉。他の貴族に金貨を何百枚使って得るモノが誰かの笑顔。なんて、言ったら、間違いなく嘲笑される。けど、フェリシアは理解してくれる。彼女は、誰かの笑顔を見るために、頑張れる人間だから。


だけど、そこに自分の幸せまで考えていない。どこか自己犠牲の精神がある。だから、


「フェリシアのことも幸せにしてみせるから」


そう伝える。すると、彼女は一瞬驚いた後、ふっと表情を緩めた。


「はい、期待してます」


そう、少しだけ距離を詰めて、頷いた。




***




約束していた、図書室に向かう前にまずは、スラム街で拾った兄妹の所に向かうとしよう。絶対に図書室は長くなるからな。そう思いながら、兄妹がいるだろう部屋へと向かう。


一応はマナーを含めてコンコンッとノックする。するとドアの向こうから兄の声がしてドアが開かれる。


改めてみた部屋は本当に簡素だと感じる。10畳ほどの部屋。床にカーペットは引いてあるが、他にあるのはベッドと洋服を入れるクローゼットのみ。それ以外には何もない。


二人とも来て、3ヶ月ということでまだ警戒心が解けていないからこそ、何も要望を言ってこないようだった。


「ようこそ、おいでくださりありがとうございます」


そう兄の方が覚えたての敬語を使ってくる。そんなにかしこまる必要がないのに。


目の前の少年はThe優し気な主人公みたいな感じだ。肩の力が抜けた自然体の佇まいからも彼の親しみやすい性格がわかる。服装は19世紀末のアメリカの労働者階級を彷彿とさせる、ウェストコートとシャツを着ていた。


「どうだ。ここでの生活には、慣れてきたか?」


問いかけると、間を置かずに返答が返ってきた。


「はい。おかげさまで、慣れてきました」


はっきりとした口調。言葉遣いも、三ヶ月前とは比べ物にならないほど整っている。流石だな。妹のことになると覚えが早いなんて思いつつ、件の少女を探す。


すると、ベッドの支えに身を隠しながらこちらを見つめていた。視線が合うと、びくり、と小さく肩を震わせ隠れるように身を縮めながら、ベッドの柱に身体を隠す。


けれど完全には隠れ切れていなくて、かわいらしいおて手や子供らしいぽっこりとしたお腹が見える。やっぱり、幼児体型って短めの手足に、丸みを帯びた感じが特徴なんだよな。なんて思い出しながら少女を見る。


二人とも三カ月前の痩せ細った状態とは違う。ご飯はしっかり食べているのだろう、標準的な体型に戻っている。


兄妹ということもあり妹の方も兄と同じ茶髪だ。妹は、白いワンピースを着ていて、胸元にあしらわれた三つのボタンが印象的。目元はくりっとしていて、赤ちゃんのように柔らかそうな、もちもちとした肌。肩まで伸びた髪をまとめるように、おっきな赤いリボンで結んでいる。


やはり、俺と同じ転生者がいるおかげかな。ファッションなどの簡単に変更しやすい部分は置き換えられる。さすがに建物に関しては難しいが、うちは最近作ったため"ビルトモア・エステート"を参考に作っていた。えっへん。


そういえば、前世では豪邸が好きで、よく検索していたな~、と過去を思い出す。特にアメリカの近未来間のある豪邸が個人的に一番のお気に入りなのだが、素材がなく再現しにくいということで諦めた。それに浮くしね……。


改めて二人に意識を戻すと、兄の方が妹を見ていて、咎めるように「ご主人様から隠れるのは、失礼だろ!」そう注意をしていた。


……そこまで注意しなくても柱からちょこんと顔を出す姿かわいいから、そのままでもいいよと思うが、口にはしない。二人の関係性があるから、強制になるようなことは言わないようにしている。


すると兄に嫌われたくないのか、俺と視線が合わないように下を向きながら、ぱたぱたと走って兄の背中に隠れる。


ぴたりと身を寄せながら、そっと顔だけを覗かせる。そして、こちらの様子を窺い、視線が合うと逸らす。


(……その仕草は、反則でしょ!)


思わず胸がきゅんきゅんと締め付けられるのを感じ、思わずニヤケそうになる顔をどうにか堪えながら、兄が自分の前に妹を出すように促すのを止めた。


「そのままでいいから」

「でも……」


そう口にはしたが俺の表情を見て納得する。こういう機微を察するところはやはりスラムで培われたものがあるんだろうな。そう素直に感心する。


にしても納得してくれてよかったよ。まだ、いや、もっとこの光景を見ていたからね。そこにほっと、一安心をしつつ、会話を続ける。


その間中、ずっと妹の小さな手は、兄の服を両手でぎゅっと掴んでいる。離れまいとする意志を、服を引っ張る際に出来る、布の皺から、強く感じる。


(……兄を信頼する妹の行動、最高かな)


なんて思いながら、兄とだけ話し続けた。


「それじゃ、もう俺はいくから、何か必要な事があればエレナにでも伝えてくれ」

「……はい。分かりました」


少年が頷いたのを確認して部屋を出る。少しでも頼りにしてくれればいいなと思いながら。そう伝えた。


だってさ、トップの人って話しかけずらいじゃん。前世でも直属の上司には伝えられても、社長と話すとなると、上手く伝えられかったんだよね。だから、エレナを挟んくれたら要望も言いやすいかな~なんて、最近気づきました……。


そういうところがまだ甘いんだよな、俺。なんて考えて図書室に向かう。二人の部屋を出ると、フェリシアが声を掛けてくる。


「少しは慣れてきたようですね、二人とも」

「おっ……やっぱりそう思う?」

「えぇ、妹さんの方も少しはご主人様をちらちら見るようになっていましたから。少しは信頼されていると思いますよ」

「……はぁ~、そっか」


彼女の言葉にひと安心する。少しは距離が近くなったということだから。でも、そうだよね。時々俺の方を見てくれたのは勘違いじゃないよね。


さっきも、ちらっと俺を見て、視線があってはさっと兄の背中に隠れる。それが、本当に可愛いんだよ!いや~、可愛さの暴力ってやつを堪能しました。若返ったね、10歳くらい。実際に、転生したから27歳分若返ってるんだけど!


そんなことを考えつつ、時々、妹の姿を思い出してはにやける。そんなことを繰り返しながら、俺は図書室へと到着するのだった。

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