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かわいい少女に癒されたい—転生したので、居場所を失った少女を拾うことにした—  作者: 夢見る冒険者
黒髪の少女編

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第23話 くだらない理由

王子の前で堂々と宣言した俺は今、セレフィが住む屋敷に足を踏み入れていた。


アルシェリアを笑顔にする。そう宣言したからに当然、彼女について知る必要がある。だからこそ、信頼できてかつ、教えてくれそうな人物に当たったというわけだ。


数十人が住めそうな豪華な屋敷。その応接間。15畳ほどの部屋にはアンティーク調の家具が所々に置かれている。その中央、木製の長机を挟んで俺とシルフィは青色のソファに腰を下ろす。後ろにエリシアとフェリシアをそばに置いて。彼女もまた、メイドを二人ほどそばに控えさせる。


セレフィは俺が座ったことを確認すると、ふっと表情を緩めた。


「にしても、なんであんな啖呵切っちゃうのかな、レオは」


なんて、どこか嬉しそうに口元に笑みを浮かべながらセレフィは笑う。目元を優しげに、緩めながら。


「仕方ないだろ、あんな風に嘲笑されたら、流石に苛立つ」

「ふふっ……そうじゃないでしょ、後ろにいる、エリシアちゃんのためでしょ」


メイド服を着てるからだろう。主人の恥にならないよう、決して表情を緩めなかった少女が頬を緩める。少し嬉しそうに口元をぴくぴくと動かせ、笑みも隠せていなかった。


セレフィはその様子を、優し気に見ながら、俺の気持ちを問うように、視線を戻す。どうなの?と問いかける視線に、一度目を逸らしてしまう。だって、そういった想いを話すのは恥ずかしい。俺だけ、突っ走ったみたいで、また感情を抑えられなくて。


でも、その気持ちが本物で、大切な想いだからこそ正直に答える。


「うん。そうだね。エリシアのおかげで俺が一番大切にしてる想いを再確認できた。大切な人が笑顔でいられるために、俺は頑張ってきたんだって、思い出せた」


自分の気持ちを言葉に出して、温かい気持ちに包まれる。だから、


「改めて、ありがとう、エリシア」

「レオニス様こそ、ありがとうございます。……とっても、カッコよかったです」


なんて、まっすぐな笑顔を向けられる。目を逸らすことなく、取り繕うこともなく見つめられる。けど、少しだけ恥ずかしいのか、胸の前で指先を絡めながら、頬を緩めていた。


いつものように、明るい姿ではなく、少ししおらしい仕草。なにより、水色に輝く瞳が、やわらかく細められている。飾らないまま向けられる素直な感情に、言葉より先に想いが伝わってくる。


気づけば、俺は目を逸らせなくなっていた。その温もりに触れ続けたくて見つめていた。彼女が首を傾げるまで。


その仕草でようやく我に返り、慌てて視線を逸らす。その先には、少し頬を膨らませて、どこか悔しそうにするセレフィの姿があった。


(……私だって、レオに助けてもらったことあるもん)


少し俯きながら、何かを呟いていて、でもそれが聞き取れない。


「……えっと、セレフィ」

「なぁに、レオニス」


少しだけ、ぶっきらぼうに返される言葉に驚いたように目を見開きつつ、彼女の表情を窺いながら尋ねる。


「いや、何かあったかなって……」

「ううん、なんでもないよ、自分の気持ちを整理してただけ」

「そう……」


何故かそれ以上踏み込んではいけない気がして、俺は踏み込まないことにした。彼女は言葉通り気持ちを整理したのだろう。真剣な表情に戻る。


「それで、アルシェリアちゃんの過去について聞きたいんだよね?」

「あぁ、学園での立ち位置と彼女自身について聞きたい」


俺も彼女の態度に気を引き締めて、セレフィを見つめる。気になっているのは、どうして今になって、彼女が目の敵にされているのか、ということだ。


入学してから少なくとも数年は経っているはずだ。なのに、セレフィは最近になって頼ってきた。その理由が知りたかった。


「今から話すのはあんまりいいものじゃないんだ、ほんとくだらない理由」


視線を少し下げながら、悲し気な表情に少し影が落ちる。そして、顔を上げて、彼女は口を開いた。


「アルシェリアちゃんが入学してきたのは、おそらく2年前。当時は避けられていたんだと想う。呪いを恐れてね」


その言葉には理解はできなくても納得は良く。闇属性の印象に関わる部分だから。


闇属性の魔法は主に、対象の能力を下げる、魔力を奪うといった、他者から何かを奪うイメージがある。対して、光属性は、能力の強化、結界、癒しなど与える力に溢れている。なにより、魔族に対して有効だという点が光属性を聖なるものというイメージの象徴にしていた。


「だからみんな関わらないようにしていた。それは1年前、私たちのクラスに昇級してからも、変わらない」


悲しげに告げる彼女もまた、自分の立場故に動けなかったの後悔があるのかもしれない。赤いスカートの裾をぎゅっと、握り締めながら、表情を歪めた。


「そして状況が動いたのはちょうど最近。第三王子が第二王子に勝って、序列一位になったことがきっかけだったんだ」


その言葉を聞いて初めて疑問が浮かぶ。序列一位になって、どうして彼女に突っかかるのか理由が分からなかった。お世辞にも、闇属性が使えたからといって、あの王子にアルシェリアが敵うとは思えない。けど、可能性があるとしたら……


「……もしかして、権能か?」


神が人に与える絶対的な力。それなら、魔力量に差があっても勝てるとは思えない。あの王子だってその力を得ることが出来ないはずだ。その可能性に俺は唾をごくりと飲み込んでセレフィを見つめる。


その言葉に彼女はキョトンとした顔をする。なんの話といったように首を傾げながら、俺を見つ返す。


「…………」


……うん。どうやら違ったらしい。俺は見当違いの回答をしたことに思わず、頬を赤くする。恥ずかしくて、俯いてしまう。うわー、マジか。少し自信があったんだけど、全くの見当違いでしたよ。そうだよね、それだったら、あんな冷遇されないよね。


でも、教会が彼女を攫っていないことを考えると、国が護っているのかな?とか考えた結果で……なんて自己弁護を行っている中、ふと小さな声が耳に入る。


(……かわいい)


なんて、誰かの呟きが聞こえた。その声がか細かったからかな。誰かわからなくて、思わず顔を上げて、みんなを見るけれど、何故か視線を逸らされる。


(……え? なんで?)


じっと見つめると、何故かみんな頬を染めながらふいっと視線を逸らした。いつも、凛としているフェリシアですら、頬を赤らめていて、思わず見てしまう。じーっと見つめると、徐々に耳まで赤らめていき……


「レオっ、そろそろ続けていい?」


セレフィにから声が掛かる。


「あぁっ、ごめん」


自分で話の腰を折ってしまい、申し訳なくなり、慌てて振り返る。少しほっとしたように、肩を下ろすセレフィ。それに呼応するように、後ろでフェリシアもまた、ほっと胸を下ろした気配を感じる。


(……もしかして、フェリシアなの、か?)


先ほど、発したあの声。透き通るようなソプラノボイスを脳内で再生しようと試みるが敵わない。でも、もしも、フェリシアだとしたら、それはとても嬉しい。だって、普段は、好意的な反応を見せてくれないから。


セレフィは、少し咳払いをして、続ける。俺の視線をジッと捉えながら、俺が集中しだしたのを確認し、少し視線を強めながら続ける。


「ゼルヴァイン殿下は第二王子を倒して、退屈していた。最初に負けてから2年間、倒すことを目標にしていたし、それがみんなの注目を集めていた」


確かに注目集めるだろう。王選候補者の二名。その中でも第三王子と第一王子は拮抗していて、第二王子はどちらかというと、第一王子派閥だ。敵対している二人の行く末が気にならないはずがない。


けれど疑問に思う。


「ゼルヴァイン殿下ならもっと早く、第二王子を倒せたんじゃないか?」


お世辞にも第二王子が彼に勝てるとは思えない。一度見たことがあるが、努力して追いつけるほど、彼に才能があるとは思えなかった。


「うん、レオの言う通り、ゼルヴァイン殿下が努力していたなら、すぐに勝っていただろうね。自分の召喚獣を使って」

「……なるほど、殿下は未だに召喚獣を扱えていないのか」


王族なら誰でも教わっているだろう、召喚魔法。その初歩ともいえる、魔法が召喚獣との契約だった。俺も一応は知識としてある。けれど、使っていない。確かに契約するメリットは多いのだが、それでも召喚者が攻撃されて、気絶でもしたら存在は消えるし。召喚の維持にも魔力が必要になる。そして、信頼関係もまた必要だ。


俺は自分の限られた時間をどちらに費やすか考えて、そっちの道は必要ないと判断した。俺自身が強くならないと、複数の相手に狙われた時に対処できないから、ね。


「うん、扱えないから、時間が掛かった。でも、授業の範囲内でしか彼は努力しない。それでも持ち前の才能で、他者の何倍も速く成長する」


その言葉には現時点で勝てるとしても、将来的には自分が負ける可能性を想定しての言葉だった。だからこそ、彼女は殿下の次のターゲットにならないように、実力を抑えたんだろうな。


セレフィは自分が弱気になっていることに気付いて、少しだけ悔しそうに唇を噛む。そして、気持ちを整理するように息を少し吐き、続ける。


「第二王子が卒業して、退屈な日々に戻った。周囲の注目もまた、落ち着いてくる。それが許せなかったんだろうね。殿下は、アルシェリアさんを次のターゲットに選んだ。皆が、畏怖する存在に、自分は立ち向かう、勇者であるかのように気取ってね」

「……は!? そんな理由で」


思わず、声を荒げてしまう。けど、それに呼応彼女もまた、目に力を強く入れて、告げる。


「そう、そんな理由。……ほんと、くだらない!」


彼女にしては珍しく感情を高ぶらせ、語気が強くなる。歯を強く噛みしめ、眉間に皺を寄せる。彼女の気持ちがセレフィには痛いほどわかるから。


それは、かつて自分が貴族なのに、魔法を上手く扱えなかったが故に、蔑まれた過去を。家族で一人、肩身の狭い思いをした気持ちを思い出してだったんだろう。視線が細く鋭くなっていた。


やがて、力一杯に握りしてめいた、拳を緩め、彼女は続ける。


「そうして、彼女はここ三週間で、責められるようになった。最初は些細な悪口を教室で呟くくらい。それがだんだんエスカレートしていった。そして先日、魔法で攻撃されるくらいに発展した……そんな行き過ぎ中で、彼女の前にレオが現れたんだ」


少しだけ愛おし気に俺を見つめる。その目には信頼と安心をどこか感じていて、そう思ってくれることが、俺は心底嬉しい。でも……


「最初から守れたわけじゃない」


現に彼女はずぶ濡れになっていた。それを自然に耐えるほどに、彼女の心は傷つくことに慣れていた。だから、


「今度は最初から守り抜くよ!」


その宣言に彼女は大きく頷く。


「うん。たのんだよ、レオっ!」


そう信頼の笑みを浮かべて。彼女は頷いた。

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