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かわいい少女に癒されたい—転生したので、居場所を失った少女を拾うことにした—  作者: 夢見る冒険者
黒髪の少女編

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第22話 宣誓

始めて彼女と授業を受ける日。なんとか、話すきっかけを作りたくて、話題を探す。だから、


「悪いんだけどさ、まだ教材が用意できてないんだよね。見せてくれない?」


なんて、少しだけ距離を詰めて、尋ねてみる。けれど、アルシェリアは特に反応することなく前を見つめていた。距離を詰められたことに嫌がる素振りすら見せない。だから今度は褒めてみることにした。


「アルシェリアっていい名前だよね。姿勢正しく、授業に向き合う姿。常に前を見続ける君にぴったりな名前だね」


彼女と目線が合うように、エリシアたちを残して一人、彼女が座る机の前に立って告げる。階段状になっているからこそ、座っている彼女と目線が合う。そう合っているはずなのに、なんの反応も返ってこない。というかその瞳に俺が映っているようにも見えなかった。


返ってくるのは王子を含めた俺達を眺めていたクラスメイトの嘲笑だけだった。無駄なことを続ける者に対する哀れみの視線。男爵家でありながら王子に逆らなと、愉悦混じりに口の両端を釣り上げる。


渦中にいる王子さまもまた、口の端を吊り上げて俺の事を見下していた。その表情には先程までの、怒りはもうない。憐れな人間に対しての優越感だけが潜んでいる。


「どうやら、ソイツは自分の立場を理解しているようだな。お前と違って」


なんて、言葉すら吐いてくる。確かに今は無意味なのかもしれない。けれど、心を閉ざした人間がそう簡単に、応じてくれるほど甘くないことを俺は身を持って知っている。


一時の気の迷い、また期待するのが怖い。ならいっそ、一人の方が楽だと。そう考えた前世を持つ俺からすれば、当然の反応だ。


そんな俺に、今世ではエレナさんが辛抱強く向き合ってくれたんだ。俺が信頼するまでずっと向き合ってくれた。話しかけ続けてくれた。だから俺はそれをするよ。


そう自分で自分を慰める中で一人。俺が嘲笑される姿に肩を震わせて怒ってくれている人がいる。俺より一段上の席。アルシェリア隣で、悔しそうに下唇を噛み、王子の方に鋭い視線を向ける。その水色に輝く、眩い瞳に怒りを宿し、身につけたメイド服を怒りによって振るわせながら睨みつける。


当然、それを王子が許すはずもない。魔力を高ぶらせて、威圧する。エリシアとは比べ物にならない程の膨大な魔力に、怒りの感情を乗せて、放って来る。それに怯える表情をエリシアが見せた。


その時になって俺は、ようやく顔を上げる。何を弱気になっていたのかと。皆の視線に俺が怯えていたのかとバカらしくなる。


(なぁ、俺は。一体何のために、強くなったんだ?)


前世のような、生活するために両親に頼るしか無くて、暴力が振るわれることに耐えるしかなかった、そんな理不尽な状況に立ち向かうために。親が決めた選択以外、否定され続ける、そんな縛られた人生から抜けるために。なにより"少女が笑っていられるように俺は強くなったんだ!!"。


王子の視線を遮るように俺はエリシアの前に降り立つ。そして、安心させるように、頭をそっと優しく撫でる。ブラシで髪を解すように優しく撫でる。


「ありがとう、エリシア。俺のために怒ってくれて」


すると、彼女は俺の表情を見つめて、ふっと表情を緩める。そして、乗せられた手を両の手で包み込み。肩の力を抜いた。その温もりを感じるように。


その間も視線は強くなる。俺達を責めるように。たかが一人に何ができるのかと、嘲るように鋭くなる。その視線がいい加減、鬱陶しい!


なによりこの時間を邪魔されたくない。だから、俺は、抑えていた魔力を解放した。実力を知らしめるために。威圧的な圧力を込めて解放する。


瞬間、まるで風が吹き上がったかのように錯覚する程の魔力の奔流が視認される。俺から湧き上がるように、燃え盛るように、透明な魔力が俺の身体を覆い、先程まで俺達を嘲笑していた人たちから嘲るような笑みがやっと消えた。


そして、理解したのだろう。最強とは何かを。今まで格下だと侮っていたものが、自分よりも圧倒的な強者であるという事実を。


魔力量が絶対的な才能の指標である世界で、最強だと信じていた、王子より、圧倒的で。なにより、自分の両親すら凌駕する、この国で一番魔力を保有している貴族だということを、ようやく理解したようだった。


クラスメイトの嘲笑は、驚愕や畏怖に変わる。数名いれば、何とかなると思っていた筈の存在は。有象無象が集まったところで、敵わない圧倒的な存在だと認識した。


俺はさらに魔法を発動する。この場で一番、視覚的に分かりやすく、威光にあふれる魔法を。


『アブソリュート・レガリア』


自身を光のオーラで包み、一切の不浄を許さない魔法。俺はそこに干渉し、頭の上に王冠を携える。この場を支配しているのは俺だと告げるように。口の端をにいっと吊り上げて告げるんだ。


「確かに今は、アルシェリアの視線すら映らないのかもしれない。けれど、俺は彼女のことを、絶対に笑顔にして見せる!」


先程まで、嘲笑した第三王子は既に俺を警戒するように鋭い視線を携えていた。その王子が初めて、椅子から立ち上がった。そうして俺を真正面から捉える。


「やってみろよ、レオニス!!」


獰猛な笑みを携えて、目をギラギラと輝かせる。地面を力強く踏みしめて、赤い魔力を身体を覆うように迸らせる。あぁ、その周囲に影響を与えるほど魔力変質。やっぱり天才は違うな。なら、俺は努力がどこまで達しているか


「照明してやるよ!」


そう返した。二人の視線が交差し、その魔力の圧力を感じたクラスメイトは当然動くことすら出来なかった。巻き込まれないように、注目されないように微動だにしない。


そんな中、これまでなんの反応もしなかったアルシェリアが、初めて顔を上げて、俺の方を見つめていた。驚くように、目を見開いて、瞬きをする。


その時に初めて、彼女の綺麗なアメジスト色に輝く瞳と目が合った気がした。

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