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かわいい少女に癒されたい—転生したので、居場所を失った少女を拾うことにした—  作者: 夢見る冒険者
黒髪の少女編

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第17話 旅立ち

「それでね。今日来た理由は、レオにお願いしたことがあったからなの」

「……お願いしたいこと?」


そう告げる彼女の表情は、自分ではどうにもできないことに対する悲しさと、俺に対する申し訳なさが交じった表情だった。


「学園で気になることがいるんだ……ずっと一人、教室の隅っこにいる女の子。それを悲しそうにしない彼女のことが私は気になってる」


本来、そんな子がいれば彼女は手を差し伸べるだろう。そんな俺の思考を引き取るように彼女は続ける。


「けれどね、私はその子のことを助けられない」


そう断言する。彼女にしては珍しい物言い。それが引っ掛かる。自分ではどうにもならない状況。それは単純な実力とかでは決められない、派閥とかの問題か?


たしかに、公爵家といっても全ての貴族に大きな顔を出来るわけじゃない。ましてや、王国派にも貴族派にも属さない、中立派であるエーデルシュタイン公爵家なら、なおさら深く干渉はできない。


それでも、大抵の障害なら彼女はなんとかする。けど、それが出来ないってことは……


「……王子か」


そう言葉が漏れていた。俺の言葉を彼女は肯定も否定もしない。ただ、穏やかに笑っている。王族批判をしないために。例え、この場に俺とメイドたちしかいなくても、セレフィは失言をしない。


確かに王子相手に争うのは両親にも迷惑が掛かり、その負担は領民にも及ぶ。流通とか、税率とかそういった面で不遇を強いられる可能性がある。


誰だって王族を敵に回したくない。それでも、敵に回せる人物がいるとしたら、俺しかいないだろうな……。少女の為に一度、王族と争ったことがある俺しか、ね。


さすがに、種族関係なく少女を囲うということは教会と敵対するに等しい。だからそれ以上のメリット示すために俺は最強の一人になった。王国の支柱の一人と言われるほどの功績を上げた。


……まぁ、認めてもらう代わりに、結構な功績を上げても評価されるのは3分の1になるというデメリットつきだけど……。それでも、俺は自分の行動に後悔がない。むしろ誇っている。


改めて、彼女は俺を見つめ直す。


「だからね、レオ。あなたに学園に来てほしいの? ダメ、かな?」


こちらの表情を窺うように尋ねる少女。あくまで選択権はこちらに与えている。仮に俺が断ったら、セレフィなりに何かしら対策をするんだろう。それで自分が傷つくことになっても……。


本音で言えば行きたくない。誰が貴族のクソガキ相手に日々精神を削られないといけないのかと。どうして現状エリシアに癒されている状況を手放さないといけないのかと。そうダダをこねたいよ。


……でもね。セレフィを助けることは、ずっと前から俺が決めている事の一つだから。返す言葉は決まっている。


「当然行くに決まってるだろ、そんなの」


彼女の願い事は全て叶えると自分に誓った。だから、俺はセレフィを真っ直ぐに見つめ返すんだ。そんな俺を彼女は見つめ返し、真剣な表情で深く頭を下げる。


「ありがとう、レオニス」


顔を上げた彼女はいつものような優し気な笑みに戻っていた。


「それで、学園に行って何をすればいいんだ?」

「いつもどおり、貴方がしたいことをすればいい。きっと、あの子のことを、あなたは助けたいと思うはずだから……」


セレフィはそれ以上は教えてくれない。先入観を持ってほしくないという事だった。


しばらく雑談すると、セラフィはふっと笑った。


「長居すると、中の子達が緊張するでしょ?だから、私もお暇するね」


彼女はこの場を後にするべく、立ち上がろうとする。その時になって、エリシアが少し俯きながら、それでも意を決して顔を上げて尋ねた。


「お二人はどういった関係なのですか?」


それに対して、セレフィは少しいたずらっぽい笑みを浮かべながら、ふっと笑った。


「元婚約者だよ。それも、互いを信頼しする程、仲のいい婚約者」


そう告げる彼女は少しだけ嬉しそうに笑う。その姿をエリシアは呆然としたまま、見つめていた。固まったままのエリシアを見て、セレフィは俺の方に向き直る。


「それじゃあね、レオ」

「……あぁ、また学園で会おうセレフィ」


踵を返して去っていく彼女を見つめながら思う。少し厄介なことになりそうだな……と。



***



彼女の背中を見送る中でおずおずとこちらを窺うエリシアの姿が目に入る。さっきのことで尋ねたいのだろう。誤魔化したい気持ちもあるが、どうせエレナさんからバレる。


なので、彼女の視線に合うように膝を曲げて彼女の顔を見つめ、尋ねる。


「どうしたの? エリシア?」


視線を彷徨わせながら、それでも俺の方を真っ直ぐに見つめ直し尋ねてくる。


「……さっきの、本当なのですか?」

「うん! 彼女の言うように俺は彼女を信頼している。エレナの次に」


素直な気持ちを俺は真っすぐに告げる。すると彼女は、驚いたように俺の目線をジーっと見つめ、少しだけ目を細めながら目尻を下げる。そして、何か気持ちを整理するように俯き続けた。


やがて、うんと深く頷き、俺に飛びついてくる。


「なら、私もご主人様に信頼してもらえるよう頑張りますっ!」


そう明るい表情で、押し倒した俺の表情を見つめる少女。その表情はどこか吹っ切れたような明るさが宿っていた。



***



それから決まったことを説明するため、食堂にみんなを集めることにする。長机と椅子が整然と並ぶその空間には、普段の賑やかさとは違う、少し引き締まった感じがある。


エレナさんはもちろん、今回は神様にもこの場に来てもらっているからこそ、大事なことがあると思っているようだ。たしかに前回神様を読んだ時は戦争に行く時だったしな、緊張するのも良く分かる。


俺はそんな緊張するものではないと、肩の力を抜き、自然体になる。そして、ゆっくりと落ち着いた言葉で、中庭で話したことをかいつまんで説明をする。いつものように、みんなの表情や納得しているかを確認し、俺は続ける。


「ということで、明日から俺は、学園に通う。その間はいつも通り、エレナさんの言うことを聞いてほしい」


メイド長であるエレナさん。それは公爵家時代からずっとお世話になってきた人で、俺は彼女を母親のように思っている。それを一度伝えたことがある。


「母親はエレナさんだけだよ」って。けれど、その時は本気で怒られたな。『産んでくれたお母様も大切にしなさい』と。


あんなに厳しく怒られたのは初めてだった。それが初めて本気で怒られた経験で。そこに優しも感じて、俺は本当の意味で心を許したんだ。


それからは、エレナさんは育ての親という感じで慕い。彼女も納得してくれた。視線を戻すと、エレナさんはいつものように静かに頷き、みんなも頷く。


「戦闘に関しては、グランネ。それと、アンジュ。もしものことがあった場合、みんなを守ってくれるか?」

「ええ、もちろん」


龍人族のアンジュは胸を張って自信満々に頷く。対照的に、巨人族のグランネはまどろんだ視線でこちらを見つめながら、ゆるく頷いた。


「うん。いつもお世話になってるから、それくらいは働くよ」


二人の返答に、小さく頷く。それでも、それは最悪の場合を想定してのこと。もしも俺が施した防御結界が破壊された場合のことだし、正直なところ、そう簡単に破られるとは思っていない。


この国最強で、世界でも序列3位に君臨する彼が破壊を試みても1日はもつ結界は、この国の上位貴族、全員を集めなければ数分で破壊することは叶わない。そして、その可能性は極めて低いだだろう。自身の領地を危険に晒す行為だし、国境にいる貴族もくれば、国を危機にすら陥らせるのだから……。


そう結論付けて、俺は神様の方に歩いて行く。見た目、9歳くらいのプラチナブロンドの髪色を携えた少女の元に。


俺は、彼女の前でくると、ゆっくりと膝まづいた。


「神様、少しの間学園へと参ります」


彼女の耳に届くよう、しっかりと発音する。そして、最大限の敬意を込め、深く頭を下げる。すると、


「わかった」


彼女が俺の言葉に返答し、その小さな手を載せて、優しく撫でてくれる。まるで、俺の内心にある緊張を解すように、優しく撫でる。


神聖な力が宿っているからか、それとも彼女の優しい気持ちが手から伝わるからか、不思議と張り詰めていたものが、ゆっくりほどけていく。


……思えば、すべての始まりは、この子と出会ってから始まった。森で一人、ぽつんと存在していた彼女と出会ったことが、俺が最強になるきっかけを作り、決意を信念へと昇華させた。


「ありがとうございます。神様」


俺は礼をいって、静かに立ち上がり、再度礼をする。そうしてから、皆の方に振り向く。


「それじゃあ、一緒に行くメンバーについては……フェリシア。いつも通り、お願いできるかな?」


彼女の方に視線をやると、いつものように薄っすらとした柔らかい笑みを携えて、頷く。


「はい」


彼女の笑みに安堵しつつ、思う。本当はもう何人か連れて行きたいが流石に危険度が増すと。守り切れるとしたらきっと一人だからこそ、彼女を選んだ。


これで話を終えよう。そう思っていたのに、まっすぐな瞳がこちらを捉えて離さなかった。


「レオニス様、お願いがあります」


アクアマリンの様に透き通った水色の瞳で、こちら見つめる少女がいる。


「私も連れて行ってもらえませんか?」


自分が置かれた状況も、立場も理解しながら。それでも付いてきたいとエリシアは俺を見つめる。その真っ直ぐな瞳を見て、ふと臆病な自分に気付き、笑ってしまった。


いつも間にか、安泰を取っている自分がいて。なにより、不確実な未来に怯えていたことに笑ってしまう。


そうだ! 何のために力を付けたんだ?少女たちと一緒に過ごして癒されるためだろ?なら応える言葉は決まっている。


「もちろん。いいよ」


安心させるように、優しい言葉で、けれど目には確かな意志を持って伝える。


すると、彼女は一瞬驚いたように目を丸く見開き。ぱぁ~っと顔を明るくさせる、そうして、両手を頬に当てながら、にやけていた。その表情を見れただけで、俺はもう満足感がある。


この笑顔を守るためなら、たとえどんな敵がいようと、全力を尽くして排除すると。


自分の気持ちを再確認する中。もう一人、服の裾をぎゅっと掴んで、こちらを見つめる少女がいた。


「ニィナも連れてって」


いつもような揶揄うような調子ではない。まっすぐに俺を見つめる瞳は、わずかに潤んでいた。そんな勇気を出した彼女に俺は頷く。


「うん、ニィナも来てくれる?」


すると、嬉しそうに微笑み、はたと今の自分の言葉に気付いたのか、訂正した。


「まぁ~、ご主人様が付いてきて欲しそうだったから、言ってあげるんだけどね~」


って。


「そうだな、俺もニィナと一緒にいられると嬉しい」


そう伝えると口元にωを浮かべながら、によによと表情を緩める。……かわいい。


そうなると学園の寮ではなく、屋敷に住む必要がある。となると当然管理する人も必要になるわけで。


「エレナさん、ミアハも連れて行っても良い?」

「えぇ、ミアハちゃんが納得したらね」


穏やかな返答が返って来たのを確認し、俺はミアハの方へと向き直る。


「ミアハ、ついてきてもらっても良いか?」

「いいですよ、ご主人様っ!」


間を置かず、ぱっと明るい声が返ってくる。その返答に頷き返し、そのまま食事の準備へと移った。


数日後、用意が出来た俺たちは馬車に乗り込む。


「それじゃあ、行ってきます!!」


窓からみんなが見送ってくれてるのを確認しながら、少し遠い王都へと旅立つのだった。

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