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かわいい少女に癒されたい—転生したので、居場所を失った少女を拾うことにした—  作者: 夢見る冒険者
白髪の少女編

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第14話 寂しそうに見えるあなたを、私は救いたいと思った

それから約1週間。何千と試行錯誤した結果、ようやく解析が完了する。ここずっと寝ずに考えていたお陰なのか、それとも天啓のように閃いたことから神様が力を貸してくれたのかは分からない。


けれど、今はそんなことより彼の秘密にしたものが見れるという興奮の方が勝っていた。はやる気持ちのまま、駆け出して鍛錬の部屋をそーっと開く。


地下の施設、屋敷と同じくらいに広い広大な部屋にたどり着く。未知の素材でできる部屋は頑丈そうな部屋その先にいた彼をみて、私は足を止めてしまう。だって、浮かれていたその先にいたのは、真剣な表情で、自分の分身と殺し合う姿だったから。


いつものお気楽な様子なんてない。いつになく真剣で、誰も見ることを許されないそんな悲惨な空間。腕が千切れて、身体を魔法で焼かれても、それでも、前に立ち向かう。


それに驚き、私はただ、ぺたりと地面に座り込んでしまう。ただ、圧倒されていた。傷つきながらも、目線だけは前を見据えている。拷問だと思える、そんな徹底的に自分を追い込む行為を。それを自ら自分に課す。異常な行動だった。


でも、なんでかな……それが誰のためなのかは、一瞬で理解できる。私達のためだと。ただ、ただ。私達を守るために強くあろうとする。そう理解できた。


ただ、少女が好きなら、わざわざ多種族をかう理由もない。貴族なら裏でやればいい。でも彼は堂々としている。それは時々私達が自由に街中を歩くため。外でも笑って過ごせるためにだった。ただ、私達が自由に過ごせるために、最強であり続ける。


この姿を見て、私はようやくフェリシアの言葉を理解する。寂しそうに見える意味を。同時に、最初に私のことを悲し気な表情で見つめた視線の意味も理解した。あれは私だけじゃなく、自分にも向けられたものだったのだと。


相手を見るようになって、初めて理解できた気がした。同時に彼の中に悲しそうにする少年の姿が思い浮かび、私は涙を流していた。それが止まらなかった。


思えば最初からそうだった、ずっと分からないことばかりだったなと。


彼と一緒に馬車に乗った当初はずっと後悔しかなかった。もう少し私に可愛げがあれば、奴隷になんてならなかったと。そして辿り着いた先の街、そこの宿で当然のように体を求められると思っていた。


当然のように身体が強張っていたのを覚えている。奴隷なら当然そういう扱いを受けるのも当然だと、理解していた。——そう、納得して……そうして受け入れる覚悟までした。


けれど、彼は私達に指一本触れることすらない。それが不思議で分からなくて。だから、試すように彼の前に何も身に付けないまま出ようとしたら、傍にいる女性に止められたんだ。


その女性はどこか優し気に私を眺め、優しく抱きしめた。


「大丈夫だよ。あなたのご主人様は、無理強いすることはないから」


そう宥める。それが不思議だった。どうして、同情をするのかと、貴方も辛い目に遭ったことがある筈なのにどうしてそんな表情を出来るのかって思った。


きっと彼女は強要されているのだろうと、私が警戒を解くことはなかった。けど、時たま、疲れて眠りに落ちてしまう時もあったが、身体に触れられた形跡は一切ない。


それは屋敷へと近づいく。5日たっても同じだった。


そうか、きっと他の人には私が喘ぐ声を聞かせたくないのだ。独占欲が強い彼はどうせ、屋敷に戻ったら。そう思いたいのに、彼の態度からどこか警戒心が薄らぐのが分かった。


自分は御者と一緒に座り。なぜか、私達二人だけ、中で過ごす。その中でフェリシアと呼ばれる少女は安心させるために私に告げる。


「実は私も奴隷なんだよ」


そういって、丁度鎖骨の下。胸の少し上の位置にある円形の奴隷紋を見せてくれた。そして続ける。


「他の誰に購入されるより、ご主人様に拾われたことは何よりの幸運だよ」


とも。その時の表情はどこか穏やかで、でもそれ以上に恋する人の表情だった。だからつい、聞いたっけ。


「あなたは彼に恋をしているの?」


その問いに彼女は驚いたように目を見開き、首を振る。少し悲しそうな表情で。


「そんなわけないでしょ」


と。自分の身分を知っているからこそ、叶わぬ恋だと目線がいっていた。なにより、自分が伝えた行為で主人を困らせたくないのだろう。奴隷と貴族が結婚など、許されるはずがないのだから……。


けど、最初は疑っていた、彼に有利になるように行動しているだけに過ぎないって。でも、違った。


屋敷に戻ってからも彼は私に無理強いすることなんて何もない。元居た屋敷のようにメイドが私に悪戯することも差別する事も無くて、みんなが私のことを理解しようと努めてくれる。分からなくても一人の少女として認めてくれる。それはきっとご主人様が定めた、ルールが関係していた。


誰かと関わる事。褒める事。他者に歩み寄るために、理解しようとするためのルール。それに基礎学習、頼る大切さ。それは身を染みて感じてた。きっと彼は自分がいなくなった時をどこか想定しているように感じた。


というか、ルールってなに。完全に私達が自立するための、指針じゃない。つい、そのことがおかしくて笑ってしまう。


自分ばかり辛いことを見せないで、いつもあなたは私達が笑顔になれるために努力をする。自分に縛りをかけて。これじゃあ、どっちが主人なのか分からない。少しいやらしい視線で見つめて、でも肝心な所で引く。


独り鍛錬する彼は、自身の苦痛を歯を食いしばりながらも立ち向かう。どうしてそこまで出来るの?その疑問は私達を見る目を見ればわかる。どこか寂しそうで、でも、優し気な視線。


それはどこか彼自身の過去を見つめているように終えた。だからから、ふと自分が一人きりの夜、ふと涙した時の感情を思い出す。自分は一人なのだと、孤独だと理解した時と。


一番傷ついてるのは、あなたじゃない?

なら、あなたは誰が幸せにするの?


そんな気持ちが湧いてくる。ならさ、誰か。じゃなくて、私がレオニス様を支えたい。奴隷?だからなに?ちょっと優しくされて、靡いた?そう言われても結構。私があなたを幸せにする。私があなたの一番になってみせる。そう決めたの!!


自然と流していた涙を私は拭う。なんでもこなせるのにどこか孤独を埋めるために努力する彼。誰かのために自分を一番犠牲にする彼。そんな彼を私が笑顔にさせて見せる。彼の居場所になって見せる。


これがまだ恋心かはわからない。でも確実に一つ言えることがある。私はご主人様を観察する。彼をもっと知りたいから。


それから魔力が尽きたのだろう。彼は地面にべったりと横たわる。そうして荒い呼吸を整え、立ち上がった。埃を払い、こちらに歩き出す。


まずい、ここに居たことがバレる。そう感じ、私も急ぎ足でこの場所から立ち去った。


その日の夜。ベッドに入る前に浮かんでくるのは、彼の優し気な視線、笑った表情……そして寂し気な視線だった。だから決意する。この気持ちを明日伝えようと。


***



翌日。フェリシアに頼んで、彼と二人っきりにしてもらう。彼と一緒にいる中庭。暖かな日差しが私達を祝福するなかで、問いかける。


「ねぇ、ご主人様はどうして私に良くしてくれるんですか?」


彼は私の方を振り返り、穏やかな表情を浮かべる。


「……優しく?」

「はい、私のせいでメイド長に怒られていたのに、私に当たりませんし、翌日も笑って接してくれましたよね?」

「うっ……あれ、見られてたんだ」


なんて、口元を覆いながら、頬を赤らめる。その初めて見る、反応が可愛らしくて、同時にそれをさせたのが私という事実に嬉しいと感じる。


「はい、見てました。でも嬉しかったんですよ、私の為に行動してくれたこと」


そう伝えると、穏やかな表情を浮かべて、頬を緩める。嬉しそうに。……うん。私もやっぱりご主人様の笑顔を見ることは嬉しい。心が温まるのを感じる。


「もう一度、尋ねます。どうして、ご主人様は私たちに優しいんですか?」


彼は少し俯きながら考える。そして、私の目をしっかりと捉えて返してくれる。


「皆が笑っている姿が好きだからかな?」


口元に穏やかな笑みを浮かべて。


「その割にはみんなの感触とか、身体にいやらしい視線を向けているような……」


なんて告げると、彼は少し取り乱す。それが楽しい。


「でも、私はそれくらいの権利があると思いますよ。別に嫌じゃないですし……」


こういったらどんな反応をしてくれるの?……そっか、少し悲し気な表情をするんだね、ご主人様。


「私、本当に自由にしていいんですよね?」


だから改めて問いかける。これは彼に対する挑戦状。そのための第一ステップ。彼は私のことを驚いたように見つめて、優し気な視線で頷く。


「うん」


それを確認する。あぁ、やっぱりご主人様はご主人様なんだな~って。それが分かった。


「私、この屋敷に来てから、好きなことに囲まれて、私を必要だって言ってくれる人に出会て、凄く楽しいんです」

「そっか。よかった」


始めて見せる心からの安堵した笑み。その表情に自分の気持ちが抑えられなくなってくるのが分かる。


「そんな中でも私、新たな目標が出来たんです。初めて、出来たんです」

「そっか。ちなみにどんな目標なの?」


私を見つめるその目線に、思わず吸い寄せられる。私はその目線を捉えて宣言する。


「私が、ご主人様の一番になってみせます!」


そう伝えながら彼に抱きついた。ご主人様はそれに驚きつつ、受け止めるように両手を広げる。ぎゅっと抱き着いた、私。それに目を見開きながら、彼は私の胸元へ視線を落とす。……ふふっ、やっぱり気付いていなかった。


それはある種、最後の確認。旅路中、もしくは私の風呂に入っている姿を見ればわかったこと。ずっと性的にみられないように隠していたんですよ。レオニス様。ねぇ?少しは意識してくれましたか?


ふと、恐る恐る見上げた彼は、少しだけ頬を染めて私を見つめる。その胸元の感触が本当かを確かめるように。私はにやりと笑いながら、思う。……絶対に一番になってみせますって。今は強く、強くただその事だけが胸の中を支配していた。


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