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かわいい少女に癒されたい—転生したので、居場所を失った少女を拾うことにした—  作者: 夢見る冒険者
白髪の少女編

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第13話 心変わり

彼にアイラと呼ばれる少女を任されたその日。初めて敗北を味わった。


私のようにただ情報を羅列するのではない。彼女が分かりやすいように、たとえ話をする。それも身内ネタも良いところ。周りの関係や物に例えて説明する。それは完全に目の前の少女を知らないと出来ない説明で。彼が本当にアイラと呼ばれる少女を大切にしている証明でもあった。


(……私だって、できるし)


どこか悔しい気持ちを抱いた私は、再度図書館へ戻る。その後、私は少女のことを観察する。同様に彼の側にいたフェリシアと呼ばれる少女のことも。その少女の教え方に私は驚く。恐ろしいほど、彼に酷似していた。きっと、傍にいてずっと見続けるうえで、盗んだんだろう。


たしかに、フェリシアと呼ばれる少女は知識量では劣る部分がある。けどそこを恥じることなく、「一緒に考えてみようか?」と提案する。それが彼女らしい、相手を見るという事なんだろう。


彼女達は問題を解くように仮説を立て、正解になりそうな本を一緒に探す。


「これかな?」

「こっちは、どう?」


なんて二人して会話しながら、楽しそうに話し合う。その光景を私は、"羨ましい"と思ってしまった。


誰かと一緒になって何かに取り組む。本を読むという楽しい時間を共有する。そんなことこれまで一度もなくて、つい仲間に入れて欲しいなんて願ってしまう。そんな、私の気持ちを察したのか、フェリシアから声を掛けてくれる。


「ねぇ、手伝ってもらっても良い?」


そんな声に背中を押されて私も一緒に探す。中には当然、分からないものがあって、でも推測は知識がある分多く提案できる。すると、アイラちゃんの方も


「おねえちゃん、すごい」


そう感心したようにキラキラした目線でこちらを見つめてくれる。そうして、「これはこれは」と私に尋ねてくれる。さっき失敗したばかりのダメな私に……。私は少し緊張するのを感じる。また失敗するのではないかと不安になる。


けど、誰かに頼れるのは初めてで、それが嬉しくて、私はプライドを捨てて説明することにする。今度はご主人様、それにフェリシアさんを真似して、自分なりに必要だと思うものに絞って説明する。すると、


「そうなんだ!ありがとう!!」


そう笑顔で私にお礼を伝えてくれる。感謝される。それが嬉しくてつい、笑みが零れた。そんな私をアイラちゃんは再度じーっと見つめて少し困ったような顔をする。


「……えっと——」


その表情から察する。彼女は私の名前を覚えていなかったのだろう。アイラちゃんは困ったように視線を彷徨わせる。


確かに、人の名前を覚えるのって難しいよね。そう感じて、私は紙に名前を書いた。


「私はエリシアだよ、アイラちゃん」

「ありがと、エリシアおねえちゃん!」


そう再度お礼を伝えてくれる。その真っ直ぐに私を見つめて微笑む彼女の表情。それはきっと、私が誰かに求めていたものだった。私の存在を認めて、笑いかけてくれる人。その初めての行為に、私が存在した意味があると思わせてくれた。だからかな、私はその言葉に……涙を流していた。


「……どうしたの? エリシアおねえちゃん?」

「……ううん、ごめんね。目に、ちょっと、ごみが入って」


なんて、少し下手なごまかしをしてしまう。


「……そう」


それでも彼女は心配そうに私を見つめてくれる。それがより嬉しかった。ようやく私はそこで肩の力が抜けたような気がした。その後もみんなで一緒に本を読み進める。それは初めて自分以外の人と過ごすことが楽しいと感じる時間だった。


本をみんなで呼んだ後は食堂で夕食を取る。私がこの場所に来た記念らしい。どうやらビュッフェスタイルで色々と豪華なものが用意されている。


だからかな、なぜか私に感謝する子が何人かいる。「お姉ちゃんのおかげだよ、ありがとう」って。


きっと、これもご主人様が私を受け入れやすくするための一つの施策なんだと思った。そんな気遣いを感じつつ、温かい風呂に入り、ふかふかのベッドに入って眠る。自分が想像していたよりも、何倍も良い待遇で。むしろ、子爵家で隔離した部屋に閉じ込められた日々よりも自由だった。


当初想定したような、地下牢の鎖につながれて、冷たい床で寝ることも。見ず知らずの男性の部屋、そこで涙しながら今日の最悪な出来事を振り返ることもない。それが不思議だった。だからかな、馬車でのフェリシアの言葉を思い出す。


「他の誰に購入されるより、ご主人様に拾われたことは何よりの幸運だよ」


それな言葉が頭に浮かぶ。そんなわけない。最初は否定していた、その言葉を。それが今は少しづつ現実味を帯び始めている。でも、希望を抱き始めるの早いと自分を叱責する。明日以降は分からないと……。



***


それから3日ほど経過する。その間、特に私が命令されることはなかった。暴力を振るわれることもないし、その……夜の勤めを求められることもなかった。


たった一つ私に求められることがあったとしたら、アイラという少女に本を読んで解説してあげるということ。最初はわかりづらいと言われたけど、最近は満足げに頷いて。「ありがとう」って感謝の言葉までくれる。それが嬉しい。


1週間経ってもそれはずっと変わらなくて、みんな自由に過ごしている。だからこそ私は気になって、ご主人様を観察するようになった。他の子にはどうなのかなって。けど、彼は基本的に私たちのことを見守るだけで、何かしら手を出すわけではなかった。


それが不可解で、だからこそ、信頼出来そう。かつ、彼と交友が長いフェリシアに彼について尋ねる。


「ご主人様の対応、その意味を教えてもらってもいい?」


図書館から出る彼女を追った廊下で私は彼女に声をかける。すると彼女は、驚いたように目を見開いて私を見つめて、どこか優し気な目線を向ける。……その分かっている感じは正直止めて欲しい。


「確かに最初は戸惑うよね。なにか求められるわけじゃないし、きつい言葉をご主人様に投げかけても怒られない」


そう彼女はくすっと笑いながら告げる。そうなのだ、別に主人を貶しても怒られないのだ!ニィナという子が「レオニス様、また負けちゃったね~」と煽っても彼は口元に笑みを浮かべて受け入れる。それが異常なのだ。


普通なら、その場で斬られてもおかしくない。それが出来る実力も彼は備えているのに。何かがきっかけで変わったのだろうか?もしくは、誰かの命令で?そんなことが思い浮かぶ。だからこそ、同じようにきっかけ次第でこの現状が変わるのが怖い。


「あなたは長くいるんでしょ?これまでずっとそうなの?」

「そうだね、私は最初の奴隷の一人で3年間ずっと一緒に過ごしてる。その間に、良くなることがあっても、悪くことはなかったよ」


そう懐かしむ様に過去を振り返る。そして続ける。


「私もずっと半信半疑だったよ。奴隷っていうのは基本商品だしね。物であることに変わりはない」


その認識がある分だけ、彼女は優秀な人間だとわかる。それも私に匹敵するくらいには。だからこそ疑問に思う。


「あなたは怖くないの?」


彼女は、眉をぴくっと動かし、それでも優しく微笑む。


「それは怖いよ。この先に絶望があるかもしれない。主人様の気が変わるかもしれない。でも時折あの人は寂しそうな目を見せる。だから、放っておけないって気持ちが勝っちゃうんだろうな」


(寂しい気に見える?)


そんなこと考えたことも無い視点に、それが彼の本心を知るチャンスなんじゃないかって探るように、私は彼を観察するようになった。それも一日中ずっと。アイラちゃんに断って、彼を見張った。


大抵は、子供達と一緒に過ごす。獣人の子達と一緒に運動して、人形を遊びをする子達を楽しませるために魔法を使う。喧嘩の仲裁をして、姉妹のメイドを褒める。そして、一人の少女のために、分かりやすく本を読み進める。


ただ、そんなご主人様にもどうやら一つだけ秘密にしていることがあった。それが鍛錬の風景。それだけは絶対に誰も見せない。高度な結界魔法を用いていて、それを突破することができない。


その日の夜私はフェリシアの部屋を訪ねて、また質問をした。自室であの結界を破る方法を考えていても、いきずまって、突破できるとは思えなかったから。


彼女の部屋に訪れ、扉を開いた先。そこには彼女らしい、白とピンクを基調とした可愛らしいぬいぐるみなどの小物にあふれた部屋だった。勉強用の机と、小さい花瓶を飾るための机。その上には、赤いカーネーションの花が飾ってある。


その華やかな部屋に感心しつつ、私は彼女に問いかける。


「どうやったらあの鍛錬を見れるの?」


再度、フェリシアに頼るように問いかける。すると、少し悲し気な表情をする。


「あんまり見ても面白いものじゃないよ」


彼女は言いずらそうにそう告げて、それ以上は教えてくれない。彼女だけが知っているようでズルい……。内容すらも教えてくれない。少し膨れながら帰りつつ、毎日突破する方法を試しては挫折する。


そんな日々が一週間も続けば流石に心が折れた。あれは突破出来ないと理解させられる。だからこそ彼を信頼したくて、別の方法で彼を試すことにした。


それは入手難易度がかなり難しいものを入手して貰うこと。彼自身、どうやら冒険者をしているみたいだから、苦手そうな、本の入手にした。なにより、高価な素材とか言われても知識がなくて分からない。


求めた本は、世界でも限られた冊数しかない物から一点物まで。3冊ほどねだった。当然全て用意できるなんて思っていない。もしも、一冊でも用意してくれたら。私はきっと彼を信頼できる。そう思って依頼したのに……


手渡された物を見て、私は驚愕する。驚いたように手に持っているものをマジマジと見つめて固まってしまう。


だって、必要な3冊に加えて、追加で私が欲しいと思うような2冊の本も調達してくれたのだから。


「……どうして?」

「……? だって、欲しそうにしていたから。それにいったでしょ、要望があれば、可能な限り叶えるように努力するって」


さも当然のことであると、不思議そうにこちらを見つめる。多分喜んでくれると思って渡した先の反応が、呆然と見つめるからこそ、彼も戸惑っているのだろう。


そりゃ、こちらだって戸惑う。だって、1週間だよ。てっきりダメだったと言われるのを想定した。想定していたのに、期待以上のことをされても困る。


思わずぎゅっと本を抱きしめる。強く強く抱きしめる。そうして、この状況がおかしくなってつい、声を上げて笑ってしまう。


だって、そうでしょ?奴隷相手に言った守る必要もない言葉。それを律儀に守って、それ以上に気遣ってくれる。これが笑わずには言われない。


この人は本当に……。


つい、自分でも肩の力が抜けるのが分かる。でも、それ以上に温かな気持ちが胸を支配する。


「ありがとう、ご主人様」


そう告げる私は、心の底から笑えていたと思う。この時になって私は彼を心から信頼しだしていた。だって、そうでしょ。奴隷一人一人のことをちゃんと知って、欲しいものを用意する。そんな人、他にいるはずがない。


ふと、笑った先に見えた彼の表情は、安堵している様だった。その表情にまた心が温かくなった。


だからだろう。そんな、彼が私に用意してくれた本のことで怒られている時は本当に申し訳ない気持ちになった。


「ご主人様この金額の使い道なんですが、どういうことですか?」

「いや、ほら……その……新しく入ってきた子がいるじゃん。それが、少し、要望をたくさん言ってくれたから、つい叶いたくなっちゃって」

「一度に叶える範囲、それは何個まででしたっけ?」

「3つまでです」

「そうですよね、レオニス様。甘やかすのと、自立を促すの、それは違うと思いませんか?」

「はい、おっしゃる通りです」


すーっと近づいた先。ドアを少し開けて覗い先に居たのは、正座をして、頭を垂れながら怒られている彼の姿だった。それに申し訳ない気持ちになる。


メイド長のエレナさんは少しだけ表情を和らげながら告げる。


「ここに来たばかりで、環境に慣れてもらうためというのは理解できます。ですが皆を平等に愛すと言ったはあなた様ですよ」

「……はい、すいません」


彼は申し訳ないと思ったのだろう、諦めたように深く頭を下げた。ご主人様に申し訳ないと思いつつ、もしかしすると、この屋敷で一番すごいのはエレナというメイド長かもしれないと理解する。同時に、ご主人様以上に敵に回してはいけない存在を知った。


私のせいで怒られたのに、翌日の彼は気楽に接する。何事も無かったのかのように。だからかな、そんな彼のことを知りたくて私は彼が秘密にしている鍛錬を見ると決意する。そこに彼の本心が見れると思ったから。


それから毎日、私は魔術に解析に専念する。初めてこの時、神様に祈った。どうにか突破する方法を授けて下さいと。

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