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かわいい少女に癒されたい—転生したので、居場所を失った少女を拾うことにした—  作者: 夢見る冒険者
白髪の少女編

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第10話 誰かを信頼するには時間が必要

改めて目にした少女の服装は、まるで死に装束を思わせるものだった。


全身を覆うのは、純白のドレス風ワンピース。肩や首元、袖口には繊細なフリルがあしらわれ、どこか儚げで、触れれば崩れてしまいそうな印象を受ける。


胸元には白――いや、わずかに青みを帯びた大きなリボンが結ばれており、それは首筋からみぞおちのあたりまで、静かに垂れ下がっている。


そのリボンの上には瞳と同じ青色の、楕円形の宝石が飾られていた。視線を上にあげると、頭に乗せられたヘッドドレスが目に入る。その両端には薔薇を模した小さな装飾が、リボンとともに揺れている。


だが、その外見以上に目を引いたのは、彼女の視線だった。


俺を見つめるその瞳には、何も映っていない。虚無――そう呼ぶしかないほどの空白。そこには希望の欠片すらなく、ただ静かに、すべてを諦めきったような色が宿っていた。


……ああ、これは。かつて虐げられていた頃の、自分と同じ目だった。


ただ耐えることだけを選び、何も期待せず、何も求めない。そんな "生き方" を強いられた者の目。その目線に少し気分が落ちこむ。


「……さすがに、警戒されてるよな」


小さく呟きながら、俺は視線を外す。今は下手に踏み込むべきじゃない。より警戒されるのが目に見えている。なら、まずはこの場を離れるのが先だろう。そう決断し、俺は出来るだけ、穏やかな表情を浮かべ、二人に声をかける。


「それじゃあ、二人とも行こうか」


そう声をかけ、扉を開く。俺に続いてフェリシアが外へ出る。その後を、白髪の美少女も静かに追った。オークション会場を抜け、預けていた剣を受け取る。腰に刺し直し、俺達はようやく地上へと出た。


外の空気は、やけに軽かった。……だが、彼女の中にある重さは、何一つ変わっていない。相変わらず無表情なままだ。そりゃ、この先を想像したら、希望なんて持てないよな……。


その気持ちを理解できるからこそ、この欲望渦巻く場所から、少しでも早く離れようと少し歩みを早める。馬車までは確か、5分くらいか。改めて停車した場所を思い浮かべて、最短ルートで歩く。二人を連れ添いながら。



それは、数歩ほど歩いた時だった。こちらに対して、敵意ある視線が向けられていることに気づく。確認しているのは俺と……エリシアか。


ふと思い浮かぶのは、オークション会場で競り合った、太った男性の姿だ。……あいつ俺を知らなそうだったし、早速というか、なんというか……。まぁ、ここを離れる前にけりを付けたいんだろうな……。などと一人ぼつりとつぶやき、俺は馬車の前で止まる。


ここで対処しておくべきだろうと判断し振り返る。すると、エリシアがビクッと肩を動かし、身を縮こまらせる。それに悲しい気分になりながら、けれど一切おくびにもださず、俺は声をかける。


「二人とも、少しここで待っていてもらってもいいかな? それと、この場から離れちゃダメだよ」


その言葉にフェリシアは穏やかに、いつも通り優し気な笑みで頷いてくれる。


「はい、ご主人様」


エリシアの方は、相変わらず俯いたままだった。何の反応もしない。それがきっと、自分から興味を無くしてくれる方法だと信じているから。


俺は軽く息を吐いて、気持ちを切り換えながら、一人、闘技場の方。それも薄暗い道へと入っていこうとする。当然、敵はチャンスだと思ったのだろう。俺の前後を囲むように、六人の存在が俺を包囲する。


「悪いが坊ちゃんには死んでもらうぜ……」


そう彼が声を発すると同時に、俺は剣の柄に手を置く。慣れた感触。そこから自分のイメージを思い出し、瞬間的に魔法を発動する。対象がいる座標に斬撃を。剣をふるイメージを、風魔法で再現する。


途端に目の前の三人は真っ二つになり、崩れ落ちた。 時間にしてわずか、0.01秒にも満たない瞬間。完全なる無詠唱魔法。それは、Sランクの冒険者でなければなし得ない、そんな戦いの境地だった。


俺に敵対をしていた残り三名は、ようやく察したのだろう。自分が手を出した相手というものが、どれほどの人物だったかを。俺は確認するように、誘導するように告げる。


「にしてもあの、キモデブの野郎は、俺が購入した奴隷を手に入れるためにここまでするのか……なぁ、それについて、どう思うよ。お前ら」


完全に警戒することなく三名に近づいていく俺の姿に、より一層怯える。自分たちが脅威としてすら認識されてないとようやく理解したのだろう。圧倒的格上。それも手を出してはいけないような、自分たちを殺すのに全く躊躇のない人物だとようやく脳が理解しだす。


「俺はお前たちに聞いているんだけど、話せないなら仕方ないか」


俺は少し目を伏せながら、再度手元にある剣に手を伸ばす。すると、彼らが慌てたように言う。


「ま、待ってくれ。お、俺達は、ただ依頼されただけなんだ」

「それで……あのキモデブ野郎はどこに?」

「し、知らねえぇよ。あいつは、頼んですぐにどっかいったし」

「ふ~ん」


彼はそう興味なさそうに、呟き。ふっと笑う。


「なら、いいや。……あっ、依頼は失敗したと伝えておけよ。それと、このおとしまいはきっちり払ってもらうとも」


こう言っておけば、そいつはきっと俺という人間を調べ、そして理解し、身を隠そうとするだろう。自分の悪知を働かせ、その証拠を隠滅しようと行動をする。そこを抑え、追い詰めるだけでいいのだが、それにはかなり手間がかかる。


面倒なことなので、そういった部分は、ここを運営している奴隷商に任せておいた方が楽だよな。金銭的な負担を考えないのなら……。それに、あいつのことだ。どうせある程度は察しているだろうし、普通に対処してくれるだろう。


多分、金貨500枚で手は打ってくれるんだろうな。メリットとデメリットを頭の中で整理し、俺は決断をする。そして、手元の魔道具を手に取り、連絡をした。


すると、案の定察していたのだろう、すぐに「了承しました」と返ってくる。やっぱり知っていたな……なんて思いつつ、俺は馬車への方へと再度歩いていく。


さすがに、手は汚れていないけど、もし彼女に触れたとなったら、ということを考え、魔法を出して手を洗う。その水を地面に落とした。


そして俺は、馬車の扉を開けて、


「二人とも足元に気をつけて」


乗車を促す。その際には当然、彼女たちの頭がぶつからないよう、馬車上部に手を添えておく。すると、エシリア嬢は戸惑った様に動かない。


「…? すまないが、乗車してもらってもいいかな?」

「……はい」


彼女は戸惑いながら返事をして馬車へと乗り込んだ。



***



それからは1週間ほどの旅になる。その間も当然、彼女は俺のことを警戒している。 例えば宿に泊まる時なんて、覚悟を決めたように俺の方を見つめる。 風呂上がり、その身のまま来ようとしたところをフェリシアに止められていたっけ。


いや~、彼女を配置しておいてよかったと思うと同時に、まあ見たかったというのも正直な感想だった。あ、いっとくけど、美しい少女の造形美をただ眺めたいだけだよ。なんなら俺は鍛え上げられた男性の身体も興味あるから!


性的にではなく、ただ、美しいと思うから見たい!!ほら、彫刻のようなものですよ。本当に……。


まぁ、本人の意思に反する行いをする。それは俺の理想に反することなのでしない。なにより、どうしてもあの目線を見ると、前世の自分を思い出して興味より先に同情が勝つ。母親に見捨てられて、 父親には暴力を振るわれた過去を思い出してね……。


にしても前世の父は酷かったな~、気分次第で殴るくせに、一旦自分の気が収まると、ごめんなと言って おもちゃを買ってくれたりするのだ。物を買えば許されると思っている。そんな人だった。一度傷ついた心が戻ることはないのにね……。


でも、その不安定さが、きっと依存を促していたんだろうな。 経済的な自立も、冷静な判断もできない、未熟な俺の防衛本能がきっとそうさせていた。それを客観的に見れたのは、親元を離れて暮らしてからだったな。


だから、冷静に判断できない現状で、俺が欲望ままに行動するのは違う。賢い彼女がその事実に気が付いたときの悲し気な表情を見て、罪悪感に苛まれるのは、結局自分なのだから……。


結局、考えているのは自分のこと。やっぱり俺は、フェリシアのように献身的に出来はしない。


だから、この旅路の多くは、できるだけフェリシアとエリシアが、一緒になるようにしていた。自分は、御者のところに一緒に座って旅をする。


久しぶりに、外の空気を吸いながら、景色を見るというのは、意外にも楽しいものである。何より、御者の方はいろんなことを知っているので、結構面白い。追加で金銭を払えば、ある程度のことを丁寧に教えてくれるのだ。


これほど有益なものはない。実際にその土地で生きている人の言葉というのは、本で得られる知識よりも価値があったりするものだ。


ただし、そこには当然感情も混ざっているからこそ、上層部はそれを無視した上で、判断を下さないといけない。だから、ギャップが出るんだよな。などと、前世の社畜時代を思い出す。やっぱ労働はクソだな、と思いつつ、俺たちは自分の領地へと着いた。


エリシア嬢の顔を見る。それは、最初に見た時よりも随分穏やかだった、フェリシアのおかげだろう。だいぶ彼女は落ち着きを取り戻している。けれどどこかまだ、懐疑心だけは残っていた。


「これから屋敷に入るにあたり、守っていただきたいルールがある。それ以外は基本自由にしていいよ」


そう伝えるとエリシアはやっぱりという、どこか諦めた表情へと変わる。それを悲し気に見つつ、俺は七つのルールについて、説明をした。


1つ、問題が起きたときには第三者をいれて話し合うこと

2つ、週に一度、普段関わらない相手と時間を過ごす

3つ、週に一度、誰か一人の新しい一面を見つけ褒める

4つ、毎日三十分は読み書き・計算などの基礎学習をする

5つ、将来金を稼ぐために必要な行動を書き出し、一つ実行すること

6つ、悩みごとがあったら、誰かに頼る、相談すること。

最後に、うちには神様がいるので、敬うこと!


「最初に相談する人物については、俺かフェリシア。それとメイド長のエレナが一番たよりになるかな」


なんて言葉を最後に伝える。すると、彼女はその言葉に続きを待っているかのように俺をじーっと見つめる。


「えっと、一応は以上だけど……」

「それ以外は?」


ようやく彼女が言葉を口にした。それにふっと笑って返す。初めて俺に対して言葉を発してくれることが嬉しかった。けどそれ以上に、絶望じゃなく、ただあっけにとられた素の様子が嬉しかったのだ。


それに少し涙しそうになる。その気持ちを振り払うように俺は楽しそうに告げる。


「特にないかな。あっ、要望とかあったら言ってくれ。可能な限り叶えるように努力する」


それだけ告げると、彼女はまた何かを考え出す。その瞳には、未だに希望すら何も映さない。けど、少しは前を向くように、その瞳に若干の光を宿した。

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