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因果を解く

にゃっぴーを抱っこして癒された私は、囲炉裏の火を見つめた。

火が消えていない。それだけで、胸の奥が緩む。


「……結構汗かいたなぁ……制汗剤もないし……大丈夫?匂いしない?」


にゃっぴーが鼻をひくひくさせる。


「……してるにゃ」

「マジで!?」


にゃっぴーは猫さんだから敏感なだけだよね!?

ヘレネが咳払いをひとつ。


「ミコト。行水しましょう。いまは落ち着くことが大切です」

「うん……お願いします……」


にゃっぴーとヘレネを伴って、“お風呂”へ向かった。正式には“湯殿”というらしい。

というか改めて宿の中を見回して、ようやく気付いた。客間が四部屋。広間が一つ。台所の土間。そして、湯殿。


……私たち、広間で生活してたんだ……


まぁ囲炉裏はそこにしかないから、仕方ないけど!


戸を開けると、木と湿気の匂いがする。洗い場があって、桶や簡単な浴槽がある。ここなら濡らしても大丈夫そう。

……お手洗いと違って、思いのほかしっかりした作りだ。


今日は、念のため巫女服を着たままで行水しようと思う。服を脱いで、しっかり湯船に浸かりたい気持ちもあるけど、緊急事態があるかもしれないからね。

ヘレネが真面目な顔で言う。


「目を閉じて、少し上を向いてください」


これは……朝にも見た流れだ……


「……ヘレネちゃん、また溺れさせようとしてない?」

「違います。顔も含めて全身丸洗いしようと思ったら、その姿勢が一番ですので」


……疑ってしまって、ごめんなさい……

言われるがまま、私は目を閉じて顔を上げた。そしてしっかり口を閉じた。


「“水瓶座”よ。来なさい」


適度な勢いで温かい水が降ってくる。

あぁ〜……生き返るぅ。やっぱり余裕ができたら湯船にも浸かりたいなぁ。

だけど、服を着たままなのにやたら快適だ。

しかも水に濡れてるはずなのに、白衣も透けない……!めちゃくちゃ便利だ!


クレンジングも洗顔料もシャンプーもボディソープも無しで汚れを落とせる“水瓶座”。元の世界でも使えるようにならないかなぁ……


ん?クレン……ジング?


――その瞬間、私の脳内に稲妻が走った――


あれ?今、ベースメイクどころかスキンケアすら……やれてなくない?これはマズい……


私は、神託をもたらす巫女のように、厳かに告げた。


「にゃっぴー、ヘレネちゃん。今回の件が解決したら、スキンケア用品の代わりとなるものを探しに行きます。これは私の“尊厳”案件です」


にゃっぴーが呆れたように言う。


「紙の次はスキンケアかにゃ……ミコトの“尊厳”は傷付きやすいにゃ……異世界生活二日目にしてボロボロにゃ」


おい、誰の肌がボロボロだって?少し乾燥してるような気もするけど、まだ気のせいの範囲だぞ!


ヘレネは頷きながら同意してくれた。


「ミコト、それは大事なことです。余裕ができたら、ぜひ探しに行きましょう」


さすがヘレネちゃんだ。女子にとっては外せない案件だと分かってらっしゃる。

ヘレネから渡された手拭いで、髪を優しく拭きながら改めて決意する。

絶対に、化粧水くらいは探すのだ!


行水が終わって、囲炉裏の前に座る。

不快感もなくなり、体も温まった。

さて――“あの子”を救うための、作戦会議だね。

ヘレネが静かに言う。


「では、“あの子”について整理しましょう」


私は頷いた。

あの爪、あの血を舐める動き――思い出すだけで身が竦む……

でも、“あの子”だって困ってるんだ。

にゃっぴーが床に座り、真顔になる。


「まず、さっきの“止まった”動き。あれは牽制で、じゃないにゃ。飲んでたにゃ」

「うん……見えた。水を飲んでた」


ヘレネが指を組む。


「つまり、“あの子”は“飢え”だけでなく、“渇き”も抱えていた、ということです。渇きが満たされたから、一段攻撃性が落ちた」


だから、帰り道では襲ってこなかった。


「……じゃあ、“あの子”、本当は……」

「“人喰い”になりたいわけじゃないにゃ」


にゃっぴーの声が、少しだけ低くなる。

その一言で、私の胸が少しだけ楽になった。

ヘレネが続ける。


「問題は、渇きが満たされた後――次に何を欲しがるか、です」


私は顔をしかめた。


「食べ物、だよね……」


だけど、こちらの抱えている食料も、決して潤沢ではない。


「その通りです」


ヘレネは手を見つめた。


「そして今日、“牡牛座”が解放されました」


食べ物が必要、という結論のあとで“牡牛座”の解放宣言……まさか、牛の幻影からお肉でも取るのだろうか……さすがにグロいぞ。


「百聞は一見にしかず、です。来なさい、“牡牛座”よ」


ヘレネが掌を翳したあたりで、幻影が浮かび上がる。


だけど何故か、現れたのは“乳牛”さんだった。


私は一旦目を閉じて、眉間のあたりを揉んで、もう一度、目を開いた。


――やっぱり、乳牛にしか見えない。


「ねえ、ヘレネちゃん。“牡牛”座なのに、なんか……“乳牛”っぽいんだけど」

「“牡牛座”です」

「いや、でも」

「“牡牛座”です」


そうなのか……何か、そういう“お約束”でもあるのだろうか……


「さて、ではここからが“牡牛座”の能力となります」


“牡牛座”が元気よく、やたらいい声で鳴いた。


「モォ〜っ!!」


次の瞬間、瓶が五本、ぽん、ぽん、と並んだ。

乳白色で、ふた付き。多分二百ミリリットルずつ。


……これ……どう見ても……


「……牛乳だね」

「牛乳です」

「あの、やっぱり、“牡牛”では――」

「“牡牛座”ですね」


押し切られた。





私は一本手に取って、ヘレネを見る。


「私が飲んでも平気?」

「えぇ、むしろ栄養補給のためにも、おすすめします。成人女性なら、三本も飲めば一日分の栄養はだいたい賄えるようです」


すごくない?完全栄養食じゃん。ここに来て、いきなり食料問題が解決したな!

飽きない限りは、だけど。

ごく、ごく、と飲む。


「……おいしい。二日ぶりのタンパク質だから、余計に」


ヘレネが少しだけ肩の力を抜いた。


「栄養価は、かなり高いはずです。“あの子”に与えれば、“飢え”を緩められる可能性があります」


私はそのまま、一気に牛乳を飲み干し――瓶が消えた!?無駄にエコ仕様だな!?


……でも、これで解決の目処が立ったかもしれない。

にゃっぴーが言った。


「明日、匂いを追うにゃ。今日出会ったやつの匂いが濃い場所を探すにゃ」


ヘレネも頷く。


「“水”で渇きを、そして“牛乳”で飢えを。そこまでできれば、次は――話が通じる段階に戻せるかもしれません」


私は小さく息を吐いた。


「……よし。やろう。正直ビビってるけど……やる」


あの子だって、困ってるはずなんだ。キヨちゃんのように。


だから――最善を尽くそう。





その夜。囲炉裏の(おき)が残る部屋で、私は客間から持ってきた布団に潜りながら、改めて、明日“以降”に思いを馳せる。


「……明日、この件が無事に解決したら、にゃっぴーには頑張ってもらうからね」

「急に何にゃ」

「スキンケア用品の代わりになる物を、探すんだからね」

「……明日が無事に過ぎたら、にゃ。もう寝るにゃ。さっさと寝ない方が肌に悪いにゃ」


そう言われたら、ぐうの音も出ないね……


にゃっぴーを湯たんぽ代わりに抱っこして、私は目を瞑った。





翌朝。

囲炉裏の熾が、まだほんのり温かい。

それだけで「今日も生きてる」って実感が来る。


「……起きるにゃ。ミコト、起きるにゃ」


どこからか声が聞こえた気がして、私はゆっくり目を開けた。


「うぅん……にゃっぴーだ。おはよ〜……」

「おはようにゃ」


にゃっぴーが、私のお腹の上で丸くなっていた。

朝からとっても可愛いし、ふわふわで暖かい。


「……今日が勝負の日だね」


ヘレネが戸口の近くで頷く。


「はい。無理はしないでください。まずは身支度を」


私は昨日の“水瓶座”の快適さを思い出して、少しだけ元気になる。そして昨日の残りの“牛乳”も一本飲んで栄養補給しておく。

“尊厳案件”も大事だけど、まずは“あの子”をどうにかしてあげたい。


出発前に、昨日の残りの“牛乳”を一本ずつ、合計二本、両手で大事に持つ。

割ってしまったら、中身ごと消えてしまうのだとヘレネから説明を受けた。エコが過ぎる……さすがに、麻袋に入れては持って行けない。


「ミコト、わざわざ持って行くのですか?一日に出せる数量は決まっていますが、“あの子”と対峙したその場で出すこともできますよ?」

「うん、せっかく昨日の残りもあるんだし、一旦このまま持っていくよ。……それに、目の前で“牡牛座”の幻影を出したら、警戒されるかもしれないし」


にゃっぴーも頷きながら、


「確かににゃ。僕たちは“そういうもの”だと分かってるけど、向こうは違うからにゃ。ミコトの判断が正解だと思うにゃ」

「……言われてみれば、そうですね。信頼を得たあと、改めてこちらの事情を説明しましょう」


これが、あの子を“元に戻す”鍵なんだ。大切に持ち運ぼう。





森に入ると、昨日より空気が刺さる気がする。

怖さが消えたわけじゃない。

けれど――覚悟は決まった。

にゃっぴーが先頭に立つ。


「匂い、こっちにゃ」


私は、なるべく前を見て歩く。

ヘレネは私の少し後ろ。

いつでも掌を上げられる距離で、静かに身構えている。


「……ヘレネちゃん。何かあったらすぐ水瓶座お願いね」

「もちろんです」

「にゃっぴーも……無理しないでね」

「ミコトが無理しない方が大事にゃ」


……まぁ、その……実際にやることって、牛乳飲んでもらうだけなんだけどね……





だんだん、生物がいる気配が濃くなってくる。

土が荒れ、落ち葉の上に、何か引きずったような跡。


そして――見えた。


黒いもや。痩せた影。赤い目。唾液。

そして……複数いる。昨日出会った子は、群れの一員だったようだ。


「……いたね。けど、七人もいるね……」


私は息を止める。

にゃっぴーが私の前に出る。


「近づくにゃ。僕が見るにゃ」


にゃっぴーが“意識して”視線を合わせる。

一瞬だけ、にゃっぴーの目が鋭くなった。


「……“餓鬼”、って見えるにゃ。複数。……空腹が強いみたいにゃ」


おそらく渇きは、小川の水を飲めるようになったから解消したんだと思う。だから残りは――空腹。

多分、当たりだ。あとは、空腹をどうにかできれば、理性を取り戻してくれるはず……


そして、名前が分かっただけで、心臓の音が少し落ち着く。

“分からない恐怖”が、“分かる怖さ”に変わったから。

ヘレネが小さく言う。


「ミコト。ここからは、あなたが中心です」


……分かってる。私は覚悟を決めて、瓶を一本持っ

て、ゆっくり前に出た。


「……こんにちは」


返事はない。

餓鬼たちはうろうろして、私の匂いを嗅いで――舌なめずりをした。


……これ、私を食べ物扱いしてるんじゃないよね?やっぱり怖くなってきた……

私は喉が鳴るのを必死に抑える。


「ねえ。これ……飲んでみない?おいしいよ?」


私は瓶のふたを開ける。

そして、わざと大きめに、目の前で飲んだ。

ごく。ごく。


「……ほら。ちゃんと飲めるものだよ?」


餓鬼たちが、動きを止めた。

そして目が、瓶に釘付けになっている。

……見てる。欲しがってる。

私は瓶を地面に置いた。そっと、倒れないように。


「飲んで、いいよ」


一歩、下がる。

にゃっぴーが私の横にぴたりと付く。

ヘレネは掌を上げ、いつでも“水瓶座”を呼べる体勢。

群れの中で体格のいい“餓鬼”の一体、おそらく昨日襲ってきた子が、じり……と近づいた。

鼻先で匂いを嗅ぎ、一瞬、私を見る。


――そして、瓶に口をつけた。


ごく、ごく、ごく。

あまりに必死で、むせた。

それでも飲む。

飲み終えた瞬間――瓶が、ふっと消え、“餓鬼”が目を丸くする。


「……?」


そして、徐々に黒いもやが薄くなっていき……完全に消えた。赤い目の色が、落ち着いてくる。

唾液が止まり、呼吸が整う。

その“餓鬼”は、ふらつきながら座り込み、小さく言った。


「……う、うまい……」


言葉が、出た。

にゃっぴーが再び、“餓鬼”に視線を合わせる。


「……“小鬼”になってるにゃ」


私は息を吸って、ようやく安心した。


「……よかった。通じるかな?私はミコトっていうんだ。もう、大丈夫?」


“こおに”――“小鬼”が、首を振る。涙でも出そうな顔で、片言のまま言う。


「……ごめん。おれ、けが……させた……」


私の手の甲に、視線が落ちる。

私は反射で隠しかけて、やめた。

怖かったのも、少し痛かったのも事実。


でも――今は。


「……大丈夫。ちょっとだけ痛かったけど、もう平気」


“小鬼”は、ぐっと拳を握った。


「……なかま……いる。みんな……おなじ。おなか……からから……」

「うん。仲間の分も、ね。とりあえず手元にある、もう一本を渡すね」


瓶をもう一本。“見せる”ように置く。

すると“小鬼”に戻った子が、他の子のところに持って行き、何か声をかけて牛乳を飲ませる。

飲むたび、黒いもやが薄れていく。赤い目が落ち着き、言葉が戻っていく。


だけど――たった今、牛乳を飲んだ子は、まだ“澱み”が薄く残っている……どういうこと?最初の子は、完全に消えたのに。


「……今から、他の子の分も牛乳を出すけど、驚かないでね?ヘレネちゃん、お願い」


ヘレネもあまり驚かせないように気を遣い、私たちの背後に掌を向け


「“牡牛座”よ、来なさい」


モォ〜!!というよく響く声のせいで、“小鬼”たちの群れに動揺が広がったけれど……

理性が戻った子が何とか落ち着かせてくれる。この体格が少しいい子が群れの“リーダー”なのかもしれない。


ぽん、ぽん、と五本の牛乳が並び、それを一本ずつ、慎重に彼らの近くの地面に、そっと置く。


再び、“リーダー”らしき子が、他の子たちのところに持って行き、牛乳を飲ませていく。

――が、やはり“澱み”が薄く残っている。


「ねぇ、最初の子以外、まだ“澱み”が残っているように見えるんだけど……」

「でも、全員“小鬼”って視えるにゃ」

「えぇ。それに言葉も戻ってきているようです。手順は完璧だったように思えますが……」


最初の子と何が違う?見落としてることは――


あ。そうだ、“水瓶座”だ。昨日“リーダー”だけ、牽制で“水瓶座”を直接浴びていた。


もしかして、それが完全に“澱み”を祓う一手なの?


「ヘレネちゃん、“水瓶座”だ。多分それが、最後の一手なんだ」

「……!水妖の時は、水自体が汚染されていたから、“水瓶座”の浄化が効いたのだと思っていましたが……そもそも“澱み”自体を浄化する効果とは――」


私が、再び“小鬼”の群れに声をかけようとすると、“リーダー”が前に進み出てきた。


「ありがとう……おかげで、みんな、たすかった」

「うん、どういたしまして。でも、君にも見えてると思うけど、仲間の方はまだ“黒いもや”が見えるよね?それをどうにかするためにも、ひとつ試してもらいたいことがあるんだ」

「……!あれ、どうにか、できるか?あれ、でてから、だんだんみんな、おかしくなった」

「多分ね。ヘレネちゃん、“水瓶座”を」

「えぇ。“水瓶座”よ、来なさい」


私たちの近くに水瓶の幻影が現れ、ちょろちょろとした勢いで、浄化の水が溢れだした。


「……“黒いもや”が残っている子にも、この水を浴びてもらえるかな?それで、どうにかできる――はず」


さっそく“リーダー”が他の子の目の前で、水を浴びてみせ、誘導していく。


そして予想どおりに、浄化の水を浴びた子から順に、“澱み”が消えていった。


……これで、おそらくだけど、“澱み”を祓う条件がわかった。“水瓶座”による浄化、そして現在の“差し迫った問題”の解決。この二点だ。


キヨの場合は“澱み”による“本体の汚染”。

キヨが言っていた、自然に近く、弱い妖怪は影響を受けやすい。だから“澱み”が溜まるだけで汚染され、“水瓶座”のみで一息に解決できた。


“餓鬼”の場合は、“澱み”、そして“飢え”と“渇き”。キヨを浄化したことにより、小川の水を飲めるようになり“渇き”が癒え、牛乳で“飢え”を満たし、“水瓶座”で“澱み”が浄化された。


これが――多分、絡まった因果とそれを解く方法。目の前の霧が晴れたかのような気分。

もしかすると“これ”が、私が異世界に呼ばれた理由なのかもしれないね……


改めて“リーダー”が私の前に進み出てきて、膝をついた。


「ありがとう……なかま、みんな、もとにもどった。つぎは、おれのばん。おんを、かえす」


にゃっぴーが私の裾を軽く引いた。


「ミコト、今にゃ。名付けるなら、今にゃ」


……うん。分かってる。

私は一歩近づいて、目線を合わせた。


「あなたに、お名前をあげたい。……いい?」


“リーダー”は、一瞬だけ戸惑って――頷いた。


「……なまえ……ほしい」


私は、しっかり目を合わせていう。


「じゃあ――“サツマ”。キミのお名前はサツマ。

私が呼んだら、来てくれる?」


“同意”が降りるみたいに、一瞬、サツマが柔らかく光った。


その瞬間――視界の端に、板が浮かんだ。


───────

サモニャー

スロット1:にゃっぴー LV.1(※送還不可)

スロット2:ヘレネ LV.1(※送還不可)

スロット3:空き


控え(“名付け”済み):キヨ(水妖“清水”)、サツマ(小鬼)

───────


私は、思わず笑ってしまった。


「……やっぱり、毎回でてくるんだ」


サツマが、胸を張った。


「……おれ……“サツマ”。おまえ……ミコト。まもる」


……なんか、片言ですごく頼もしいことを言ってるね。

ヘレネが小さく息を吐いた。


「よかったです。ここまで戻せたなら、次は――生活を戻せます」


そして、私は手を伸ばして、サツマの肩に触れる。


「これからよろしくね、サツマ。みんなで一緒に、戻ろっか。清水宿に」


帰り道。

森の空気が、少しだけ違って見えた。

怖さが完全に消えたわけじゃない。

でも――“どうにかできる”って実感が、確かに残った。


“倒す”じゃない。“戻す”。

その第一歩が、今日だったんだ――

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