第二十六話「海の異変」
本日は2話同日更新しています。こちらは1話目――二十六話です。
火車の“澱み”を祓った後。
まずは、夜もだいぶ遅い時間になってしまったので、唄ちゃんと祭ちゃんにはしっかりとお礼を言ってから送還した。
その次は、里の者への説明が必要だった。
こちらはニケちゃんとイッシキさんが、集まってきたみんなに何が起こっていたのか説明していた。
先程の大騒ぎは、妖狸族の神託巫女や神託にあった“人間”と共同で火車の“澱み”を祓うために起こしたことであると。
そして――無事に火車の“澱み”が祓われ、灯明堂が使用できるようになった、と。
これを聞いた里の者たちは大変喜び……そのまま宴会――酒盛りをはじめてしまった。
近場でしか漁ができず、じりじりと漁獲量が減っていっていたことで、精神的にも厳しい状態であったらしい。
そんな時にもたらされた朗報。
心配の種がなくなったことで気が緩んだのか、住民それぞれが食べ物やお酒を持ち寄り、思い思いに宴会を始めてしまった。
ニケちゃんやイッシキさんは捕まってしまったので、私たちだけで社に戻ることにする。
……にゃっぴーの“猫をかぶる”を使って、こっそりとね!
もう、私はへとへとなのだ。一刻も早くお布団に潜り込みたい!
*
がやがやとしている里の中を通り抜けて、社に戻ってきた。一直線に客間に向かおうとしたけど……
「まずは全員お風呂です。だいぶ汚れていますよ」
とヘレネに促され、全員でお風呂に向かった。
さすがに湯船の準備はされていなかったので、“水瓶座”で汚れを落とし、ある程度温まったところで終了。ようやく客間に向かう。
「あぁ〜……本当に疲れた……」
「僕もにゃ……」
「正直に言うと私も疲れました」
「きゅ〜……」
「そういう時はさっさと寝るに限るかべぇ!」
「うん、フウの言う通りだね!」
おやすみなさい!
私たちは泥のように眠った。
*
翌朝……というかほとんどお昼前くらいに目が覚めた。
あれこれと身支度をして、客間に戻る途中。
ヘレネから気遣わしげな指摘を受けた。
「ミコト。昨日、炎の壁を突っ切った影響だと思うのですが……髪の毛が焼けてしまっているところがあります。整えた方が良さそうです。
それと手の甲辺りの火傷ですが……痕が残るかもしれません」
あぁ……炎の壁に突っ込んだ時の……。
確かに、髪の毛が縮れて見える部分も結構あるし……それに、火傷痕……残っちゃうのかぁ……
ヒーニャーの祈祷は、自分自身には使えない。そういう制限があるみたい。
もし自分にも使えたのなら、痕も残らないくらいに回復できたのかな……?
あの時の行動に後悔はないけど……少し悲しくなっちゃうな……
「ミコト……」
私が悲しそうにしている気配を感じ取ったのか、にゃっぴーが肩に飛び乗ってきて、すりすりしてくれる。
「ありがとう。にゃっぴー」
毛並みに沿ってゆっくり撫でる。
……もう過ぎてしまったことだ!仕方ない。切り替えていこう!
そう、思い込むことにして、悲しみに蓋をする。
「鋏って存在してるのかな?ニケちゃんに……聞いてみようと思ったけど、絶対まだ寝てるよね……」
昨日宴会に巻き込まれてたし。
「うん……お腹も空いてるし世話役の方にご飯のお願いをして、ついでに鋏があるかも聞いてみようか」
そう思いつつ客間まで戻ってきた時、ちょうど世話役の女性がご飯を持ってきてくれた。
身支度してたから、起きたことに気付いてくれたのかな?
「すみません、ありがとうございます。あと、鋏をお借りしたいのですが……あります?」
「鋏ですかみゃ?ございますみゃ!すぐに持って参りますみゃ!」
世話役の女性がバタバタとどこかへ向かい……すぐに戻ってきた。
「救い主様、お持ちしましたみゃ!」
そこで差し出されたのは……糸切りばさみ?
「ありがとうございます。少しお借りしますね」
「ごゆっくりですみゃ」
世話役の女性が客間を出て行ったあと、ゆっくり朝食兼昼食をいただく。
「ねぇ、ヘレネちゃん。鋏はこれでも大丈夫だよね?糸切りばさみっぽいけど……」
「えぇ。問題ありません。それは“和鋏”ですので」
へぇー……和鋏っていうんだ。
じゃあ昔の日本だと、鋏といえばこういう形状なんだね。
*
ご飯が終わり食器類を片付けてもらった後、ヘレネちゃんに髪を整えてもらう。
「……そうですね、ミコトは今までロングでしたから……バランスも考えると、ミディアムくらいにした方が良さそうです」
「そっか〜……じゃあ、ヘレネちゃん。それでお願い!」
ヘレネ美容師さんにお任せで!
にゃっぴーに“収納”から布を出してもらって、ポンチョみたいに羽織る。そして、床にも敷く。
静かな部屋に、ちょき、ちょき、と髪を切る音だけが響く。ヘレネは元がAIだからなのか、正確に鋏を入れることができるみたいだ。
しばらくすると……背中まで伸ばしていた髪が徐々に短くなり……肩の辺りまでの長さになった。
現代のように、はっきりと写る鏡がないから分かりづらいけど……何か良い感じな気がする!
「……終わりました。どうですか?問題はありませんか?」
「うん。良い感じだよ、ヘレネちゃん!ありがとうね!」
おかげで少し気分も明るくなった。
そして……頭も軽くなった!今まで何となくでロングにしてたけど……多少短くするのは有りだったのかもしれないね!
*
髪の毛を切ってさっぱりし、後片付けを終えて、世話役の女性に鋏を返した後、奥の間に向かう。
ニケちゃんとイッシキさんに、現在の状況について聞きたかったのだ。
お昼も過ぎたし、ニケちゃんも起きてるだろう。多分。
「ニケちゃーん!今大丈夫かな?入って良い?」
「ミコト様か。入って良いぞ」
イッシキさんから返事があったので、そのまま入る。中には、寝ぼけ眼で膝に乗ったミケちゃんを撫でているニケとそれを傍で見守っているイッシキさん。
良かった。ミケちゃんとの関係も、元通りになったみたいだね!
「ミコト様、ゆっくり休めたか?」
「うん、十分休めたと思う!それで、現状を聞きに来たんだけど……」
「そうだな……昨日の宴会の影響で、なんだが……里の男たちのほとんどが二日酔い状態だ。それに灯明堂の点検、そして、油の確保も必要でな。少し遠くへ漁に出るのは、明日以降になりそうだ」
言われてみれば……長い間使えてなかったのなら、点検も必要か。それに二日酔い……。
まぁ仕方ないか。それだけ嬉しい出来事だったのだろうし。
「分かった。じゃあ今日はこのままゆったり過ごすことにするよ」
そう言ってその場を辞そうとすると……いつの間にか、フウの頭の上にミケちゃんが乗っかっていた。
「このでっかい猫はフウって名前だったみゅう?あちしの子分にしてやるから、一緒に外に遊びに行くみゅう!」
うーん、女王様気質。
まぁ、でもフウは今まで寂しい思いをしてきたから、こういう引っ張って行ってくれる存在はありがたいかもしれないね。
「ミコト、遊びに行ってきても良いかべぇ?」
「もちろんだよ。仲良くね!」
「それじゃあ早速行くみゅう!他の子分も紹介するから一緒に遊ぶみゅう」
「行ってらっしゃーい!」
そう言って、元気に外に遊びに行くフウとミケを見送る。
そして私たちもゆったりするため、客間へと戻った――
*
翌日のお昼頃、改めて現状確認のため奥の間へ向かうと……難しい顔をしたイッシキさんの姿。それと、今日はちゃんと起きているニケちゃんがいた。
「ミコト様、昨日はご挨拶もせず申し訳なかったみゃ……それと火車様――ミケ様の“澱み”を祓っていただき誠にありがとうございましたみゃ!」
ニケはそう言って嬉しそうにミケを櫛でブラッシングしている。
「いえいえ。上手くいって良かった!……それで……イッシキさん、何か問題がありましたか?難しい顔をしてるみたいですけど」
「……そうだな。新たな問題が起こっている。昨日、俺が灯明堂の点検を完了させたんだ。それで早速、今日から灯明堂を使用した漁に行ってみようとなったんだが……何故か、船が湾外に進むことができなくなっている」
「……それは、海流が変わったんじゃなくて?」
「この世界は箱庭世界だ。急に海流が変わるということはないはず……という予想なんだが……」
言われてみればそうか。気候もそれぞれの地域で一定みたいだし、急激な気候変動も起こりようがないもんね。あとは……
「海にも妖怪がいて、その妖怪が“澱み”に侵されてしまっているってことはない?」
「それは……ありそうだが、心当たりはないな。今まで漁に出て、海で妖怪に出会ったことがないんだ」
うーん……さすがに分からないね。
「水に属する妖怪さんに尋ねてみるから、少し待っててもらって良い?」
(キヨちゃん、カク、少し聞きたいことがあるんだ。海のことなんだけど……)
(うみのことは、わからない。ぼくたちは、たんすいにすむ、ようかいだから)
(そうっすね……自分たちには海のことは分からないっす)
(そうなんだ。ごめんね。ありがとう!)
(ごめんね)
(申し訳ないっす!)
そっか。妖怪さんにもそれぞれ事情があるもんね。じゃあ……
(リュウ、海のことで聞きたいことがあるんだけど、大丈夫?)
(ミコトか!大丈夫だぞ!)
(うん、ありがとう。昨日火車の“澱み”を祓えてね。それで、猫又族の人が遠くに漁に出ようとしたら、湾内から先に船が進まなくなるんだって。何か分かるかな?)
(ふーむ……実際にその場を見てみないと何とも言いづらいが……海は“海坊主”が管轄しているな)
(海坊主?)
(うむ。だが……よし、俺様を呼べ。解決してやろうではないか!)
(本当!?ありがとう!リュウ!少し待っててね!)
(準備ができたら呼ぶが良い!)
「イッシキさん!リュウ……蛟がどうにかしてくれるって!すぐに港に向かおう」
「蛟様が!?大事になってきたな……だけど、ありがたい」
*
港に着いたら、蛟を召喚する。
周りの人たちにはイッシキさんが説明してくれたので、問題ないはず!
「では……リュウ、召喚!」
「俺様、参上〜!」
例のごとく、とぐろを巻いたかっこいいポーズで出現する。
……毎回やるのかな?
「リュウ、来てくれてありがとう!」
そしてこちらもいつもの儀式、いぇーい!とハイタッチをしようとすると……リュウは嬉しそうに合わせてくれた。
「じゃあ、早速で悪いんだけど、確認お願いして良いかな?」
「任せろ!」
リュウはそう言って、宙を泳ぎ海を見に行った。
そこからしばらく海に潜ったり、さらに遠くまで確認に向かったりして……こちらに戻ってきた。
「海流が操作されているな。湾外に出る辺りを境に、陸側へ向かう強い流れが発生していたぞ」
「操作されてるってことは……さっき言ってた海坊主の仕業?」
「おそらくな。だが、普段のアイツは穏やかなヤツで、意味もなくこういうことをするとは思えん。“澱み”に侵されている可能性が高い」
それなら、私たちの出番か。だけど、船に乗る必要があるよね……
「“澱み”が原因なら“水瓶座”が必要になるよね。イッシキさん、私とにゃっぴー、ヘレネちゃんを船に乗せてもらって大丈夫ですか?」
シロとフウは、さすがにお留守番だ。ごめんよ。
「今朝、漁に出ようとした者たちなら準備も整ってるはずだ。聞いてこよう」
「動力の心配はいらんぞ!俺様が水流を操作して、怪しいところまで連れていってやる」
言われてみれば……私たちが余分に乗るから、人手のやりくりも大変だよね。そもそもエンジンなんて搭載されているはずもないし。
しばらく待つと、イッシキさんが同年代らしき男の人たちを連れて戻ってきた。
「蛟様がいるのなら問題ないそうだ。念の為、俺も一緒に行こう」
「皆さん、ありがとうございます!」
そう言って深々と頭を下げてお礼を言った。
「救い主様、頭を下げないと駄目なのは俺たちの方みゃ!」
「火車様を助けてくれてありがとうございますみゃ!」
「それに……蛟様まで!ありがとうございますみゃ!」
船員の人たちが次々にお礼を言ってくれる。
この人たちも助かってるのなら良かった。
「それでは……早速お願いしますね」
「俺様もいるんだ。大船に乗ったつもりでいろ!」
水に関することで、リュウ以上に信頼できる子はいないだろうからね!
*
船に乗り、異常が発生している場所まで向かう。
船は弁才船というらしく、大きな帆を一枚だけ備えた船だった。今回はリュウが水流を操作してくれるので、帆は畳まれたままのようだ。
潮の匂いが強くなり、風も少し強い。
そして……
「ヤバい。にゃっぴー、ヘレネちゃん……こんな船に乗ったことがなかったから、めちゃくちゃ怖い……」
よく考えたら、私が乗ったことがある船はフェリーくらいだった。
こんな……人がむき出しで乗ってる船は初めてだ。
リュウがいるから大丈夫なのは理屈の上では分かってるんだけど……霧も濃いし怖過ぎる。
船員の人たちは平気で立っているけど、私には無理だ。このまま座ったまま指示をださせてもらおう。
傍にいたにゃっぴーを捕まえて抱っこする。そしてヘレネちゃんには後ろから肩に手を置いてもらって支えてもらう。
「ビビり過ぎにゃ……」
「ミコトは現代っ子ですから。仕方ありません」
そう、仕方ないのだ。
私が自己弁護している間に、着いたようだ。
「ミコト、着いたぞ!ここだ。ここに強い水流が発生しているから、船が先に進めないんだ」
リュウに言われて海面に目を向けると……確かに流れが変な気がする。人為的というか……妖為的?
「先程確認した時は、ここには何もいなかったが……多分もう少し先だな。“何か”があるとすれば。ここは俺様の力で流れを変える。このまま先に進むぞ」
リュウはそう言うと……特に何をしたわけでもないのに、流れが目に見えて変わった。すごい!
私が驚いている間にも船は進む。
*
そして――
そいつは現れた。
真っ黒な見た目の……鯨だ。大きい。本当に鯨なら、数十メートルはあるはず。海面から顔を出しているだけなのに……すごい威圧感だった。
「オォォォォオオオォォォォ!!」
そいつは凄まじい咆哮をあげ――こちらに突進して来ようとした。
しかし……体格差がある筈のリュウに、尻尾でペチっと弾き返されていた。
いや、すごくない?倍どころじゃ済まないくらいに鯨の方が大きいんだよ?
「リュウ、すごい!かっこいい!」
「ガハハ!だろう?もっと褒めても良いぞ!そして……オマエは落ち着け。海坊主よ」
リュウはそう言って、周囲の水を操作し、海坊主を縛り上げた。
すっげー……リュウさん、めちゃくちゃすごいじゃん!あんなどうでも良い場面で夜の警護させて、本当に申し訳ありませんでした!
「ありがとう、リュウ!よし、ヘレネちゃん、“水瓶座”をお願い。私の肩は支えたままでね!」
「……はぁ……“水瓶座”よ、来なさい」
私が座ったまま指示を出すと……何故かヘレネちゃんは溜息をつきながら、“水瓶座”を使ってくれる。
どうしたんだろうね?
その直前ににゃっぴーが海坊主の方を見て、“海流乱し”って見えるにゃ、と呟いていた。
やっぱり、“澱み”が原因で凶暴化してるっぽい?
“海流乱し”の上に水瓶の幻影が現れ、ばちゃばちゃと清い水を降らせる。
思いのほか纏っている“澱み”の量が多いのか、なかなか名前が変わらないみたいだ。それに、立ち昇っている“黒いもや”の量も、あんまり減っているように見えない。
「……ヘレネちゃん、“双子座”も併用してもらって良いかな?この子、思ったより大変なことになってるのかも……」
私がそう言うと、ヘレネも真剣な顔になって“双子座”も使ってくれた。
“海流乱し”に降り注ぐ清い水の量が倍になる。
そして――ようやく、立ち昇っていた“黒いもや”の量が少なくなってきた。
「“海坊主”って視えるようになったにゃ」
「良かった……私の言葉は伝わるかな?」
「ボォォォ」
あ、喋ることができないタイプの妖怪さんか。
どうしよう……
「うむ。ようやく正気にもどったか。それで、オマエに何があったんだ?」
リュウは言ってることが分かるみたいだ。このままリュウにお願いしよう。
それから、リュウと海坊主はぽつぽつと話し合った。
「ふむふむ……要約すると、大半は俺様の所為でこうなった、と……オマエ中々強気だな!俺様を前にしてそこまで言うか!気に入ったぞ!」
ガハハ、とリュウは笑う。それに対して抗議をするかのように海坊主は「ボォォォ!!」と叫んでいる。
さっぱり分からん!
「それで、リュウ。海坊主は何て言ってるの?」
「おぉ、そうだな。ミコトたちは言葉が分からないか。では海坊主の役割からだが……」
まず海坊主は、猫又族のみんなが世界の壁に当たらないよう、海流を操作していたらしい。
この世界は箱庭世界だから当然、どこかに行き止まりがある。それがこの海の先ってことだ。
それにぶつからないように、日々海流操作をしてたって……めちゃくちゃ優しい妖怪さんじゃん!
だけど……火車が“澱み”に侵されてからは、猫又族が漁で遠出することがなくなり、海流操作をする必要がなくなってしまった。
そこまでは良かったのだけど……さらに蛟まで“澱み”に侵されてしまい、陸で発生した“澱み”が海に流れ込むようになってしまった、と。
本来であれば、陸側で発生した大半の“澱み”は、ダイダラボッチや五行妖怪がどうにかしていた。
それが全員“澱み”に侵されてしまったことで、受け止める者がいなくなり、その受け皿となってしまったのが海坊主らしい。
さらに、海流操作を止めていたのも原因になったようだ。海流操作をやっていれば、もう少し“澱み”を散らすことも可能だったみたいだけど……色々とタイミングが悪かったようだ。
結果論になってしまうけど……海流操作を止めてしまったことを後悔してるんだって。
「そっか……それは大変だったね。頑張ってくれてありがとう!」
私はそう言って、這いつくばって船から手を伸ばし、海坊主を撫でる。つるつるして、ひんやりしてる。
海坊主も頭を擦りつけてくる。可愛いかも。
「それじゃあ、一旦俺様が海全体を掻き回してやろう。それで、多少なりとも海に籠った“澱み”を散らすことができるはずだ」
リュウはそう言って目を瞑り、集中し始めた。
すると……少なくとも目に見える範囲では、海全体が回っているように見えた。
まさか……海全体の水を操作してるの?
規模が違い過ぎる……これが五行妖怪の本当の力……
「……よし。ひとまずこれで大丈夫だろう。それに……これからは五行妖怪も徐々に復帰してくるから、問題はなくなるだろう。ミコトがどうにかしてくれるはずだ!」
リュウの力を垣間見てしまったから、自信がなくなってしまったんだけど……
でも、できる範囲で頑張ろう。リュウだってどうにかなったんだ。相手を倒すわけじゃない。元に戻すだけなんだ。
私が改めて決意していると――海坊主の“澱み”が完全に消えた。
リュウが、海全体を掻き回したら“澱み”が消えたってことは……多分、海坊主の“苦悩”は、結果的に海流操作を怠ってしまったことで、海の管理ができなくなってしまった不甲斐なさ、ってところかな?
自分に厳しい妖怪さんってことなのかもね。
まぁ、上司でもある蛟にも厳しいみたいだけど!
「ミコト、ミコト。海坊主に“名付け”るにゃ」
「あ……そうだね。あまりの出来事に忘れてたよ……。ねぇ、海坊主さん。キミに“名付け”を行いたいんだけど、良いかな?一緒に他の妖怪を助けよう!」
「おぉ、それは良いな!海坊主よ、ミコトが“名付け”たヤツはミコトが召喚できるようになるんだ。俺様と一緒にミコトを手伝ってやろうではないか!」
海坊主は、サモニャーの能力については上手く理解できなかったみたいだけど……他の妖怪を助けるって言葉に惹かれたみたいで、頷いてくれた。
「ありがとう!じゃあキミは……えっと、クジラさんだから……“クゥ”。クゥちゃんって呼ぶね!」
「ボォ!」
クゥちゃんに柔らかい光が降り注ぎ、同意が刻まれる。
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サモニャー
スロット1:にゃっぴー LV.3(※送還不可)
スロット2:ヘレネ LV.3(※送還不可)
スロット3:リュウ(送還可能)
スロット4:空き
スロット5:空き
控え(“名付け”済み):キヨ(水妖“清水”)、サツマ(小鬼)、カク(河童)、シロ(すねこすり)、祭(山姫)、唄(妖狸)、フウ(ぬりかべ)、ミケ(火車)、クゥ(海坊主)
───────
「……また、見た目だけで“名付け”てるにゃ」
「その単純なところがミコトという存在の証明です」
「馬鹿にしてるでしょ」
もう、間違いなく馬鹿にされてるね!
「クゥちゃん、これからまた猫又族の漁が始まるから、海流操作をお願いね!」
「ボォ!」
「ガハハ!良かったな!これにて一件落着だ!」
「リュウもありがとう!それじゃあ陸に戻ろっか!」
「……俺たちが何もすることなく解決してしまったが……ありがとうございました」
イッシキさんや船員の皆さんから頭を下げられる。
……それを言い始めたら、私は座ってただけになるから……いや!ちゃんとリュウを召喚した!
私も頑張ってた筈だ!
そう思い直して、陸地に向かって流れを操作してもらう。立て続けに大変な事態になったし、今度こそゆっくりして……そうだ、砂糖を仕入れなければ!
にゃっぴーの収納が許す限り!
私は思い出した目標を胸に、陸地に着くのを楽しみに待った――




