第57話「新しいエース」
姉妹対決の翌日。
放課後のカードゲーム部。
部室にはいつものメンバーが集まっていた。
レンジが椅子に座りながら言う。
「昨日の試合、マジでレベル高すぎだろ」
カエデも頷く。
「うん……ちょっと別のゲーム見てるみたいだった」
マックス先輩は机に肘をついて笑う。
「姉妹であれは反則だな」
リリ先輩は静かに言う。
「プレイスタイルが真逆だから、見てて面白いのよ」
その時、扉が開く。
「おつかれー」
東雲希美だった。
いつも通りの軽い雰囲気で部室に入ってくる。
樹里はちらっとだけ見る。
「遅い」
「HR長かったんだって」
希美はそう言いながら席に座る。
リア先輩が机の上のカードを指でトントンと叩く。
「新弾、だいぶ研究進んだか?」
樹里が頷く。
「ええ」
「今回の新弾、種族間サポートがかなり強い」
リリ先輩も続ける。
「今までバラバラの種族で組んでたデッキも、混ぜた方が強くなるかもね」
レンジがカードを見ながら言う。
「犬とか戦士とか、ネコとか魔法使いとか、そんな感じか?」
「そんな感じ」
樹里が答える。
そして、カードを一枚取り出す。
「それに――」
少しだけ間を置く。
「だいぶ増えたね」
「複合属性カード」
ハルトの手が止まる。
「複合属性……」
カエデがカードを覗き込む。
「二つ属性持ってるカードってこと?」
リリ先輩が頷く。
「そう」
「今までは単属性ばかりだったけど、これからは混合デッキも強くなるかもしれない」
レンジが笑う。
「ハルトのデッキじゃん」
その言葉で、全員の視線がハルトに集まる。
風と光の混合デッキ。
まだ完成していないデッキ。
希美が言う。
「ちょっと見せて」
ハルトは少し迷ったが、デッキを差し出す。
希美はカードを一枚ずつ確認していく。
無言。
だが、目が速い。
全部を見終わるまで、ほとんど時間はかからなかった。
「悪くないね」
軽く言う。
「でも、エース弱い」
ハルトは少し驚く。
「やっぱり、そうですか」
希美は頷く。
「混合デッキってさ」
「エースが繋ぐカードじゃないと回らないんだよね」
机の上のカードを見ながら続ける。
「風なら速い」
「光なら再誕」
「でも混ぜるなら――」
そこで、鞄からカードを一枚取り出した。
白いカード。
光を反射するようなイラスト。
ドラゴン。
「これとかどう?」
カードを机に置く。
ハルトがカードを見る。
そこに書かれていた名前。
――エアロフォトン・ドラゴン。
「風と光の複合」
「条件はちょっと重いけど、エースにするならこれでしょ」
ハルトはカードを見つめる。
風と光。
まさに、自分のデッキのためのカードだった。
樹里がカードを見て言う。
「……悪くない」
リリ先輩も頷く。
「というより、混合デッキならほぼそれ一択かもね」
レンジが笑う。
「主人公カードじゃん」
ハルトはカードを手に取る。
(これが……)
(俺のエース……)
その時だった。
リア先輩が手を叩く。
「よし」
全員を見る。
「次の大会の話だ」
空気が変わる。
「次は――」
「タッグバトル大会だ」
レンジが立ち上がる。
「マジか!」
カエデも驚く。
「タッグ!?」
リア先輩は続ける。
「ペアはある程度決めてある」
指を折りながら言う。
「ハルトとカエデ」
「希美とレンジ」
「樹里とマックス」
「リリと俺」
全員が顔を見合わせる。
レンジが笑う。
「面白くなってきたな」
カエデも頷く。
「うん、楽しそう」
ハルトは手の中のカードを見る。
エアロフォトン・ドラゴン。
新しいエース。
そして、新しい大会。
風が少しだけ強く吹いた気がした。
物語は、次の戦いへ進んでいく。




