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【連載再開】どうも、当て馬令嬢です。過保護な従者が邪魔するせいで、お見合いの相手だけが幸せになっていくのですが。  作者: 紫嶋桜花
【第三部】新天地で、学園生活の始まりです!

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帝国の青春事情

 午前の授業が終わった。昼休みだそうだ。

 コンスタンスがクラリスと一緒に廊下に出ると、ビアンカが待っていた。片手を上げて聞かれる。

「お疲れ。どうだった?」


「何とか授業にはついていけそうで、ほっとしました」

 午前の内容は語学と周辺の地理だった。留学生に配慮してか、アルベリアと帝国の関係に触れる内容を講義してくれたりもした。

「そっか、よかったね」

「ええ。でも、クラリスさんにはちょっと物足りなかったかもしれませんね?」

 コンスタンスがにやりとすると、クラリスもふふふと笑った。

「それについては、これからに期待していますわ」



 そのまま、三人で食堂を利用しようということになった。

 他の留学生たちもそれぞれ昼食にするようだ。

 オリヴァーも今頃、大学で休憩に入っているのだろうか?

 ……というか、あれ、びっくりしたなあ。


「ん? コンスタンス、どうかした?」

 遠い目をしていたら、ビアンカに目ざとく尋ねられる。

「あ、ええと、授業の前に……」


 囲まれて騒ぎになったことを話すと、ビアンカは愉快そうに笑った。

「だろうねえ。私も質問攻めにされたもの。コンスタンスならそれ以上でしょう」

「自分のことだけなら、多少は覚悟してたのですけど……」

「うん?」

 ああ、とクラリスが補足した。

「オリヴァーさんのことが話題になったんですよ」

「あー、なるほどね」


「まあ、当然でしょうね。あの方、客観的に見て、顔立ちや所作は整っていますし」

「…………そうなの!?」

 クラリスから意外な評価をされ、つい令嬢らしからぬ声を上げてしまった。

 二人からは逆に怪訝な目を向けられる。なんでだ。

「そうですよ。そもそも従者なのですから、見た目がよくなければできない職でしょう?」

 クラリスに指摘される。まぁ一般的にはそうだろうけど……。

 フルーセルでは『使用人』が他家とはちょっと違った意味合いになるので、見た目については気にしていなかったというのが正直なところだ。


「それに彼は、腕も立つしね」

 ビアンカまでウインクして寄越した。

 ちなみに、オリヴァーとの対戦はさすがに実現しなかったが、コンスタンスとはちゃっかり出発前に手合わせしている彼女である。

 結果はもちろん剣ならビアンカが圧倒的。暗器、不意打ち(なんでも)ありなら互角に持ち込めるかも? といったところだった。

 しかも、何度か手合わせしているうちに、コンスタンスの癖を読み切って対応される回数も増えた。さすが、武術の天才である。

 その彼女に従者の腕前が認められているのは素直に喜ばしいが、この流れで言われると……。


「…………そ、そっか……?」

 うっかり素で戸惑ってしまう。クラリスが肩をすくめた。

「アルベリアでは、あまり表立ってそんな話をしませんからね」

「確かにね」

 うんうんとビアンカもうなずく。

 あ。コンスタンスは母の帝国学園ガイドを思い出した。

「それ、お母様が言ってました。帝国では学園内で培った交友関係を元に婚約が結ばれることが多いので、みなさん積極的なんだと」

「なるほど、そういうことですか」

 二人に共有したところで、庭園に出た。



「コンスタンス! 一緒にお昼にしない? お友達もぜひ、ご一緒に」

 建物の出口でイレーヌが待ち構えていた。横にはヴィクトールも控えている。


「はい、ぜひ」

 返事をしたその時、違和感を覚えた。


 すぐそばにたむろっている女子グループ。その中に、昨日見かけた少女がいる。

 うつむいて、思いつめたような暗い表情だ。


 くす。と誰かの笑い声。

 胸騒ぎがした。


 とっさに、皇女たちと彼女らの間を遮るような立ち位置に入る。


「ほら!」

 ひそめた声だが確かに聞こえた。

 次の瞬間、例の少女がよろけてこちらに二、三歩。

 倒れる。後ろから突き飛ばされたのだ。


 そう判断した瞬間、コンスタンスは踏み出して彼女の腕を引いた。

「!?」

 引っ張った勢いを生かして、くるりと相手を振り回し、ダンスの要領で互いの位置を入れ替える。

「え……?」


 さっきまで自分が立っていた位置に少女を立たせ、コンスタンスは女子グループに向き直った。

 何が起こったのか理解できず、唖然とした顔が並んでいる。

 なので、ことさらににっこり笑ってやった。


「ごきげんよう。何かご用でしょうか?」

「……えっ!? い、いえ、別に……」

「……行きましょ!」

 たいした捨て台詞も吐けずに逃げていった。小物だなあ。


「これで逃げるくらいならやらなきゃいいのに」

 ふんす、と腰に手を当てて鼻息を荒くしていると、くふふっとこらえるような笑い声が上がった。

 イレーヌである。

「ふふふ、ごめんなさいね、お見事」

 軽く拍手の真似までされる。横のヴィクトールは苦笑顔だ。


「……あっ!? あのっ!! 申し訳ありません!」

 ようやく我に返ったらしい少女がその場で平伏しようとする。

「えっ!? いえ、立ってください、あなたのせいじゃないでしょう?」

 コンスタンスには、彼女は被害者のように見えたのだし。


「でも……っ!」

「……まあ、話を聞くにしても、場所を変えようか? ここだと往来の邪魔だしね」

 一部始終を見守っていたビアンカが、絶妙な助け舟を出してくれた。

「ええ、そうしましょう? イレーヌ様、ほどよい場所はございますか?」

「そうね、わたくしたちがよく使っているガゼボがあるの。そちらに案内するわね」

 そう言うとイレーヌは、少女に有無を言わせぬ調子で微笑んだ。

「あなたも、招待を受けてくれるわよね?」


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