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【連載再開】どうも、当て馬令嬢です。過保護な従者が邪魔するせいで、お見合いの相手だけが幸せになっていくのですが。  作者: 紫嶋桜花
【第三部】新天地で、学園生活の始まりです!

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ところ変われば

 帝国での邸宅は、すべて密偵の扮した使用人で固められていた。

 確かに半分くらいは身のこなしや視線の定め方でそうじゃないかなあと思っていたが、全員とは。

 しかもその半分も、オリヴァーに言わせれば「お嬢様に見破られるようでは、まだまだですね」とのことだ。

 ……いや、それはこちらの眼力を褒めてくれてもいいところではないだろうか?


 ともあれ、もともと密偵に囲まれて育っているコンスタンスである。

 指揮系統こそ違うが、自分を害する存在ではないことはわかっている。特に緊張することなく、流されるまま気付けば至れり尽くせりの世話を受けていた。

「帝国の密偵って、お世話も超一流なのね……」

 そう漏らすと、なぜかアンナが奮い立った。

「わたくしも滞在中に、盗める技はすべて盗んでまいりませんと」

 ……よくわからないが、仕事熱心なのはよいことだと思う。



 そうこうしているうちに、週明けである。

 コンスタンスは、オリヴァーと同じ馬車で登校した。


「それでは、お励みなさいませ」

「うん、オリヴァーもね」

 扉を開けて下車をエスコートしてもらいながら、そんな会話をする。

 オリヴァーはこの後、大学へ向かう予定だ。


「次は、週末?」

「そうなりますか」

 そっかあ。


 ……いや、今までだって、オリヴァーの任務や訓練で数日会わなかったことは普通にあったんだけれども……。

 でもそのときは家で、みんなもいたし……。


 一瞬にしてそんなことを考えてしまっていると、オリヴァーが声を落とした。

「お嬢様」

「……ん?」

「調整します」

 えっ。


「えっ、そんな……そんなに私、情けない顔してた?」

 頬が熱くなる。

「情けないと申しますか、それは、まあ」

 ううう。恥じ入ったが、オリヴァーは続ける。


「ここは素直に甘えればよろしいんですよ」

 それもそうか。せっかくだし。

「……はい」

 頷くと、オリヴァーは笑った。珍しい、含みのない笑顔にどきりとする。


 オリヴァーは何事もなかったかのように馬車の中に戻った。

「それでは、また」

「……うん、ありがとう!」

 感謝の気持ちを込めて、手を振った。



 馬車を見送って、あたりを見回す。

「……?」

 ふと、数名の女子生徒がこちらを気にしているのに気付いた。

 特に嫌な感じではないのだが、ひそひそと言葉を交わし合いながらちらちら見られている。

「……ごきげんよう?」

 少し距離があったが、話しかけたいのかなと思って会釈してみたら、彼女たちはぴゃっと飛び上がって驚いた。

 あわあわと会釈を返しながら、玄関に吸い込まれていく。


「なんだったの……?」

 首をかしげながら、気を取り直して自分も車寄せから玄関に足を向けると、ビアンカとクラリスが待っていた。

「おはよう」

「おはようございます」

 気を取り直す。

 よし。

「二人とも、おはようございます。楽しみね!」

 学園生活の始まりだ。



     *



 学園は、十二歳から十七歳までの六年制だ。

 学力によって飛び級や留年もあるそうだが、留学生たちはとりあえず年齢通りに振り分けられた。

「つまり、私とクラリスさんが同じクラス」

 と、ある教室の前でコンスタンスが立ち止まると、ビアンカが続いて言った。

「私が一つ上のクラスだね。じゃあ、お昼にまた会おう」

「ええ!」



 授業が始まる前に、留学生たちは一人ずつ自己紹介をした。

 教師がいったん退室すると、わっとクラスメイトたちに取り囲まれる。


「いらっしゃい!!」

「はるばる大変だったでしょう?」

「ねえ、部活は入るの?」

「ぶかつ……?」

 耳慣れない言葉である。


「えーと、運動とか趣味とかの集まりのことです」

「ああ……」

「剣術が得意な留学生がいるって聞いたんだけど」

「あら、それは一つ上のクラスのビアンカさんですね」

 クラリスはこんなときも冷静に質問を捌いている。


「あの、陛下の姪御さまがいらっしゃるって本当?」

「えっとそれは、(わたくし)です」

「!!!!!!」

 コンスタンスが答えると、ざっと人が割れた。

 視線が集まって、じっと観察されているのを感じる。


 ……ふむ。

「どうぞ、よろしく」

 とりあえず軽く挨拶してみる。と、ぼそりと女子学生から声が上がった。

「え、かわいい……」

 すかさず隣の男子に小突かれている。

「こら! あ、今の、不敬じゃないですよね?」

 心配そうに聞かれるので、くすっと笑ってしまった。

「たぶん、大丈夫ですわ」

「よかったぁ……」


 ふと、別の女子グループに気が付いた。

「あら、あなたたちはさっきの?」

 玄関先でこちらを見ていた数人組だ。同じ教室だったのか。

「わっ、覚えてたんですか」

「ええ」

 それはまあ。さっきの今だし。


「えっと、留学生かなって話してたんです」

 ああ、なるほど。

「あと、一緒にいらした男性の方が……」

「ええ、親類の者に送ってもらっていましたの」

「親類?」

「はい、父方の。共に留学してまいりましたわ」



 途端に、彼女たちは沸き立った。

「えっ、ちょっと、ほんとに?」

「やだぁ!」

「噓でしょ……そんなことあるんですの?」

 なにごと。



「え、ええと……?」

「なんてことでしょう、皇族のお血筋だけでなく……」

「あんな素敵なご親戚もいるだなんて!」

「す、すてき……??」

 コンスタンスは疑問符を飛ばしているが、彼女たちは止まらない。


「あの涼やかな立ち振る舞い!」

「黒髪も流れるよう!」

「さすが、姫君の縁者の方ですわね!!」

「?????」

 さらには周囲のクラスメイトたちまで、そんなにおっしゃるなら私も見てみたいわ、などと授業開始まで盛り上がってしまったのである。



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