48 伝説の冒険者様?
「タツミさん! 俺、あなたに憧れて、冒険者になったんス!」
「ガキの頃から、アンタの話を聞かされて育ったんだ。あれって、全部本当なのか?」
「俺にも訓練付けてくれよ!」
やいやいと、タツミの周りには冒険者たちが集まる。
だが、それは伝説として語り継がれる存在に対してというよりも、むしろ女に群がるように見えるのは……。
うん、視線の問題だな。みんな顔よりも、若干視線が下がっているように見える。
それに気づいているのかどうかは知らないが、営業スマイルでタツミは質問に答えるのだった。
「まず、誤解を解かなければなりませんね。
あなた方の思うタツミと、我は別人ですよ」
「なんだって!? タツミ様の名を騙った別人かよ!
いやしかし、十分強いよなアンタも」
「ええ。本物……、と言うのも変ですが、あなた方の思うタツミから、指南をうけましたの。
考えてもみて下さい。たとえどんなに強くとも、ただの人間が文献にあるように、何千年も生きるはずがありません」
「ん? タツミ様は、仙人かなにかで不老不死だと聞いたぞ?」
「百年に一度程度の頻度で現れる冒険者を、同一人物だと判定できる人間がいるでしょうか?
そのような者が居れば、長き時を生きるその者こそ仙人ですよ。
タツミという名は、指南を受けた者が代々受けつぐものなのです」
「なっ、なんだって!? ってことは、アンタは実質タツミ様じゃないか!!」
「ええと……。そういうことになりますね」
誤魔化すつもりが、誤魔化せてないぞそれ!
まぁ、それでも問題ないか。実際本人だし。本人? 本龍?
しかし、世襲制にするとは考えたな。
これで、伝説の人物との同一人物説を消せるし、何を聞かれても「聞かされてない」で通したって問題ない。
だが、人間の寿命を知らなかったからこそ、そんなめちゃくちゃをしてたんだけどな。
たまに人間にちょっかいをかけるの「たまに」が、ドラゴンとしては百年周期だったなんてな……。
おかげで、不死身の冒険者タツミ様の話ができあがっちまってたわけだ。
やいやいと盛り上がるタツミたちの輪から少し離れ、俺とルーヴは椅子に腰掛け、その様子を見ていた。
「旦那様、このままあの女をあいつらにあげちゃったらどうです?」
「おいおい、適当なこと言うなぁ……」
「え? まさか、旦那様はあの女のこと……」
「まー、本人がそうしたいって言うのなら、別にいいけどな。
ただ、俺たちが決めるようなことじゃないだろ?」
「そういうのを『しゅたいせいがない』って言うんですよっ!!」
「他人のことを勝手に決めるのは、主体性とは言わんだろ」
ルーヴは、隙あらばタツミを追い出すつもりだ。
だいたい、逆に主体性を持って「タツミはやらん!!」なんて、頑固親父みたいなこと言い出したらどうするつもりだったんだろう。
そんな俺たちの元へ、お茶を三つお盆に乗せた受付嬢がやってくる。
そして俺たちの座るテーブルセットへと配膳し、一礼して去っていった。
「気が利くよな。タツミの分まで……」
「これはワシの分じゃ」
「ふぁっ!? 出たな、長老!」
かんぜんに気配なく、いつの間にか長老が俺の隣へと座っていた。
だから受付嬢は、わざわざお茶を持ってきたのか……。
「して、ルーヴちゃんや。おぬし、最近ちゃんと仕事はしておるか?」
「へっ!?」
「その様子では、こやつにかまけてばかりじゃろう」
「なななっ! なんのことですかっ!?」
「そうだぞ。ルーヴは、家のことをきっちりこなし……。
あれ? 長老、今なんて呼んだ!? それに、タツミのことも……」
「ふぉふぉふぉ……。長く生きとるでの、色々わかるもんなんじゃ。そういうことにしておくが良い」
「ってことは、全部バレてんのか?」
「大抵のことはのう」
「マジか。それじゃ、村長も?」
「あやつは知らんぞ。ワシは、秘密は守る主義じゃ」
「そうか……」
ズズズとお茶をすする、ボケ老人にしか見えないコイツは、どうやら相当の食えないやつらしい。
「でじゃ、問題はそんなことではない。
おぬしら、まさか異変に……」
その言葉を遮るように、バンっとギルドのドアが叩きつけられた。
一人の冒険者が、大慌てで入ってきたのだ。
「ブラッドムーンだ!!」
やーっと繋がりましたよ。長かった。
軽く書く程度にしようと思ってたのに、
第一部終える頃には10万字行ってそうや……。




