49 リビィの結末【1】
赤き月の加護を背に、魔物たちは今まで貯まったツケを払わせるかのごとく、人間の住む地を襲う。
それはどのような村でも、町でも関係ない。
たとえ強力な軍を持っていたとしても、逆に守り切れるだけの戦力がなくとも、魔物には関係ないのだ。
ただただ、溢れ出す魔力を発散するためだけに暴れ、そして破壊と殺戮の宴を開く。
私たちにできることなど、雪崩のように押し寄せる魔物を堰き止め、守りに徹するだけ。
攻めたところで、何をもってしても終わりを迎えさせることなど不可能なのだ。
この宴を終わらせられるのはただひとつ、日の出だけだ。
「リビィ! このままじゃ、残り時間と消耗を考えればギリギリよ!」
言葉の通り、防衛のために駆り出された冒険者たちは、ひとりまたひとりと戦線から減り、いまや数えられるほどしか居ない。
このままでは、ただ防衛線の崩壊を待つようなものだ。
しかし、これといって対策などありはしなかった。
「わかっている……。だが、耐えるしかない」
「くっ……。なぜ今回は、ここまで魔物が多いのだ!?
前のブラッドムーンの、5倍はいるだろう!?」
「あぁ、けれど言っても仕方ない。耐えるしかないんだ……」
迫り来る魔物を薙ぎ払いながらも、すでにアンバの声にはいつもの力強さを感じられなかった。
気力だけで剣を振り、よろめきながら避ける、そのような状態だ。
それは私も変わらず、そしてミランダもまた、魔力を使いすぎたため、もはや高威力の魔法は放てそうにない。
ジリ貧ではない、すでに敗北の二文字が、目の前まで迫っていた。
だが、それでも私たちは引くわけにはいかない。
相手は、負けを認めれば見逃す者ではない。
敗北、それはすなわち、死。町ごと全滅を意味するのだ。
「もう、逃げた方が……」
「馬鹿を言うな!!」
弱りきり、息を吐くのと変わらぬほどの小さな声で、ミランダはつぶやく。
だが、私の声に怯えた顔を見せた。
それはきっと、私がおぞましい表情をしてしまったせいだろう。私もまた、余裕がなかったのだ。
下がりきった士気を持ち直すだけの言葉も、配慮も持ち合わせてはいないのだ。
「でも……、でも……」
「私たちに逃げることは許されない!
否! 私が許さない!!」
「村の者たちは、専用の避難所に避難しているはずだ。
我らが逃げたとて、被害は最小限だろう」
怯えるミランダに同調するアンバ。
だが、たとえそれが最も被害を少なくする方法であったとして、私にその選択肢などありはしない。
たとえここで果てようとも、私は、私の掲げる理想に背くことなく、この生を終えたいのだ。
「ならば好きにしろ! 私は一人でも、最後まで戦いぬく!
貴様らとは、ここで道を分とう!!」
「そんなっ……! なんでそこまでっ……!」
「考え直せ! 一人でなど、万に一つも勝ち目はないぞ!?」
『あぁ、そういや俺がテイマーやってる理由だったな。
一言でいえば生きがいだ。俺にとっては、これをやめちゃあ、死んでんのと変わらねえのさ』
遠くで、彼の声が聞こえた気がした。
死が近い証か、走馬灯というものか……。
どちらでもいい。彼が道を示してくれたんだと私は思おう。
「ここで逃げたなら、それは死んだのと変わらない。
アンバ、ミランダ……。ビリィを頼んだ!」
「待って! 待ってリビィ!!」
止めるミランダの声を振り切るよう、魔物の群れへと走り出す。
それは、一瞬のはずなのに、とても長く感じた。
これが最期。それを理解するために、神が時間を引き延ばしたかのように。
その長き一瞬は、後悔をさせるのに十分だった。
彼と今も道を共にしていたならば、私はもっと理想に近づけたのではないか。
周囲の顔色も、評判も……。全てを彼のように投げ捨てられたなら、苦悩することもなかったのではないか。
そんな「もし」を並べても、いまさらもう遅い。
きっとこれが、彼を邪険にした私への報いなのだ。
ならば、甘んじて受け入れよう。この結末を……。
そういや「同じ目的だから一緒にいるだけ」って明言してたし
追放が成立してないんじゃね?
「同じ学校だから仕方なく同じ方向に歩いてるだけなんだからね!
一緒に登校してるとか、勘違いしないでよね!!」
みたいなツンデレ幼馴染ヒロインみたいなもんやん。




