第27話 村へ旅立つ
ネコ襲撃事件から半年が経過した。
まずは、いろいろお知らせしておこう。
最初は、アンナの学園への入学試験のことだが無事合格できた。
俺が夜遅く帰ってしまい、アンナが心配して眠れなかったそうだが
次の日の入学試験は、何とか頑張ったようだ。
「ケロちゃんが心配で、眠れなかったんだから!」
と怒られた時は、心の底から反省したな~
でも、合格が分かった時は俺を抱きしめて喜んでいたから良しとしよう。
次に襲撃事件の後、王都のネコが怖がられるという現象が発生した。
主に、奴隷商会が恐れていたな…
でもそれも、のど元過ぎれば何とかですぐに恐れなくなっていった。
それと、使い魔の流行は使い魔を扱う商会が消えたためすぐに廃れた。
また、使い魔にされていたネコも何匹かは解放されていた。
勿論、今も使い魔として活躍しているネコもいるぞ。
後、赤いネコの親子はシャーロットが5匹全部引き取った。
赤いネコの父のレガルドは、シャーロットとの契約で
使い魔兼召喚獣をしているが仲は悪くないようだ。
俺の仮契約は、レガルド復帰とともに解放された。
後は、あの襲撃のあった商会はつぶれたし商会の人間は何人か捕まったな。
そう言えば、あとで聞けた話だが貴族がいたそうで
その貴族も犯罪奴隷にされ、鉱山送りになったそうだ。
悪いことをすると、罰を受けることになるんだな~
ああ、それとアンナが学園の寮に入ることになった。
メイドのジニーを連れていくそうだ。
俺も連れていきたいとお願いしていたようだが、使い魔でもないのに
学園に連れていくことはできなかった。
学園の寮へ引っ越すとき、思いっきり泣かれたんだよね。
休みには家に帰ってこれるし、俺は学園に何度も遊びに行っているから会えるのに。
まあ、そのこと知らないならしょうがないか…
学園に行ったときは、会って驚かせてやろう。
後、お知らせすることは俺の拠点に魔道具が増えたことかな。
この半年の間に、学園の図書館で本を借りて学び自力で作った時はうれしかった。
まず作ったのは『魔道コンロ』
それから『トースター』や『冷蔵庫』は苦労したな。
コンロは、屋台によく付いていたので分かったが
トースターや冷蔵庫は、一から組み立てないといけなかった。
2つの開発にそれぞれ2ヶ月とられたよ。
でも、今では作って大正解だったな。
何せ、食の幅が広がったのだ。
1か月をかけて、料理を勉強し地球の料理を再現していたな~
以上が、この半年間の俺からのお知らせかな。
で、今どこにいるのかというと馬車の幌の上で寝ている。
ここは日の光が直接当たって暖かいのだ。
言い忘れていたが、今は冬。
月にして12月といったところだろう。
この異世界の時間は地球と同じだが、月が違う。
1か月は30日、1年は360日と年変わりの日というのが5日存在する。
そして、4年に1度だけ年変わりの日が6日になる。
俺もこれを図書館の本で知った時は驚いたね。
でも、この制度を作ったのが勇者神話というお話に出ていた勇者だそうだ。
どうやら、勇者召喚というのがこの世界には存在するみたいだ。
いつかどこかで会うこともあるかもね。
さて、この冬の寒い時期になぜ馬車に乗って出かけているかというと
王都から少し離れた村を目指していた。
『ホムラ村』というのだが、何とそこには米が栽培されているらしい。
図書館で読んだ『村をめぐって』という本に、食べ物のことが載っていた。
それも挿絵付きでね。
それを見た時、飛び上がるくらい喜んだよ。
異世界に米は採取しにくい、これはいろんな小説で書かれていたが
現実でもそうとは思わなかった。
だから、ぜひ米を入手しておきたくこうして村へ向かっている。
後、アンナは20日ほどで学園から家に戻ってくるので
それまでには入手して、家に帰らなくてはならない。
もうアンナの泣き顔や怒った顔は、見たくないのでね。
2日かけて、王都から村への道中盗賊やら山賊やらは出なかった。
そしてすんなり『ホムラ村』の到着。
馬車を降りて、村に侵入。
今日はこのまま、ネコの姿で村を見回り何がどこにあるかを探る。
そして、明日『人化』して村で米を買うのだ。
米の存在が分かってから、お金を調達して銀貨100枚用意した。
米以外に何かあれば、購入も考えている。
さて、村を見て回るか~
ざっと回ってみたが、この『ホムラ村』は村の入り口に兵舎と村長の家がある。
入り口から村の中心へ進むと、雑貨屋と米や調味料と野菜を売っている店。
さらに進み、村人たちの家が点在していて入り口から一番奥に田んぼがあった。
野菜などの畑は、村人が住んでいる家のすぐそばにある。
う~ん、これだと米中心の村という印象だ。
ネコもあまりいないし、この村、いまいち活気がないんだよな~
お、少年が1人村長の家に駆け込んでいったぞ…
何かトラブルの予感だな!
早速、俺も行ってみよう~
「村長、大変だ! 田んぼにゴブリンが現れた!」
「何だと! すぐに追い払う準備だ!」
「はい、僕はすぐに村の男たちに知らせてくる!」
追い払う? 討伐はしないのか?
何か村長が困った顔で、ブツブツ言っているけど…
「まずいまずい、今は収穫の終わった田んぼだがゴブリンに死なれると困るぞ!
ゴブリンの死体が田んぼに横たわったりしたら、
もうその田んぼじゃあ、コメが収穫できない…
まったく、ゴブリンは肥料にもならんからな…」
なるほど、おそらく死んだゴブリンの体液が田んぼに悪影響を与えるんだろう。
だからあんなに恐れているのか…
それで、追い払うなのか。
でも、ゴブリンってどこから来たんだ?
…俺も行ってみるか。
ここまで読んでくれてありがとう。
ちなみに、アンナが学園に入学したのは9月です。
入寮は、8月の下旬でした。




