第15話 戦闘終了
しかし『聖魔法』の死霊への威力は半端ないな。
今も、俺がいる南門の塀の下で戦い続けている皆に魔法で『聖』属性を
付与しているけど、戦えているからな。
一般に『聖』属性魔法といえば、『聖王魔法』が有名だが
あれは天使を召喚魔法で呼び出し、天使の試練を乗り越えて初めて使える魔法。
今俺が使っている『聖魔法』は、光魔法の上位魔法でしかない。
教会関係者が修行の末、使えるようになるのもこの『聖魔法』だしな。
これは蛇足だが、闇魔法にも上位魔法がある。
『影魔法』というものらしい。残念ながら、図書館で探しそびれた。
まあ1日では、そんなものだな。
しかし、クロードとかいう全身真っ黒な人は強いのかな?
ギルド長と互角に戦っているが、ネクロマンサーが言うほど強いようには見えないな。
後、ネクロマンサー自身も押されているように見える。
ん~、とりあえず援護しておくか。
【ホーリー・フィールド】
南門を中心に広範囲が浄化された、これでかなり戦い易くなっただろう。
『グオオオ、どういうことだ、急に、体が、重くなるとは!』
動きが鈍る『ネクロマンサー』に、一気に畳みかけるギルド職員や冒険者たち。
「今です、一気に行きますよ!」
「「「おお!」」」
「…クロードの動きが鈍くなった?」
ギルド長は、一気に剣を振るいクロードに切りかかる。
それでも何とか防いでいたクロードだが、剣を持つ腕を切り飛ばされ
形勢は逆転し、ギルド長の一撃を心臓に受けそのまま霧散した。
「……クロード、安らかに眠れ」
クロードが霧散した場所には、魔石と思える赤い宝石が落ちていた。
『そんなバカな! クロードを倒せるものがいるわけがない!
あれにどれだけの時間と労力を注いだと思っている!
あれは! クロードは! 私の最高傑作だぞ!!』
「メルジナ、私の友、クロードは貴様の玩具ではないわ!」
ネクロマンサーは、詠唱をはじめ最後の攻撃に移るようだ。
『黙れ! これから絶望を貴様らに見せてやる! 後悔するがいい!!』
ネクロマンサーの後ろに魔法陣が現れる。
「……召喚魔法?」
「ユウナ、現れるわよ!」
召喚魔法陣から現れたのは、悪魔の姿をかたどった石像。
しかも、それが動き出しネクロマンサーに手を伸ばす。
『グフフフ、わが魂をその身に宿しこの国に滅びを!!』
…なんかやばそうだから、今のうちに何とかするか。
【ガイア・チェーン】
悪魔像が召喚された魔法陣の周りから、たくさんの鎖が飛び出し
次々に拘束していく。
ギルド長をはじめ、その場にいる全員が驚いている中
悪魔像は動けなくなっていた。
『何だと!』
では、止め~
【ホーリー・クロノス・スピア】
『聖』属性の槍が悪魔像の頭上から落とされる。
悪魔像の頭を貫き、心臓を貫いて地面に突き刺さると悪魔像は動きを止め
バラバラと崩れ落ちていく。
『あ、ああ、な、なぜだ…私の…』
いち早く、この状況から立ち直ったギルド長は剣を構えなおし
「滅びろ!」
一気に駆け寄り、ネクロマンサーを一刀両断した。
『こ、こんな……』
ボロボロと崩れ落ちるネクロマンサーを、黙って見守るギルド長。
ネクロマンサーが完全に消滅し、魔石と思われる赤い宝石を残した。
ギルド長はその宝石を拾い上げ、みんなの方に振り向くと
「終わったぞ! 緊急依頼の完了だ!」
「「「おおおお!!」」」
その場にいた全員が喜び合った。
抱きしめ合い、泣き出す受付嬢たち。
自分の戦果を自慢し合う冒険者たち。
安堵の表情を浮かべて、これからのことを考えるギルド職員。
早速、避難した住民たちに知らせに走る副ギルド長。
クロードの残した宝石を握りしめ、クロードを思い涙するギルド長。
その場にいた全員が様々な思いを巡らせ、戦いは幕を閉じた。
うん、空気読んだ方がよかったかな……
でもあの悪魔像、やばそうな感じだったんだよな~
…野生の勘ってやつかな?
さて、すぐにこの場を離れよう。
ネコが魔法を使っていたなんてバレたら、どんなことになるか分からないからな~
俺は、戦闘終了の余韻を感じることなくその場を後にした。
町が元に戻るまで、5日ほどかかったがこの戦いの後
冒険者ギルドには、住民がお礼に来るなどしばらく騒ぎが収まらなかった。
また、教会には非難の声があがる。
そのため教会上層部は、今回この町へ来ていた教会関係者全員を降格。
見習いからのやり直しを命じた。
また、魔術師ギルドにも非難の声があがり対応に苦慮していた。
さらに、領主他この町にいた貴族は全員、王様から厳罰が下される。
そのため、領主他、この町の貴族全員が隠居させられ世代交代が行われた。
そんな騒ぎも1か月も過ぎれば、落ち着きを取り戻していった。
図書館の一角で、本を無断で借り拠点に潜り込み読みまくっていた俺は
現在職人の本にはまっていた。
俺の部屋には家具が1つもない。せめてベッドだけでも何とかしたいんだが
すでにお金は尽きていた。
となれば、お金を稼ぐか自分で作るしかなく
せっかくの機会だからと、自分で作ることを選択したのだ。
魔力操作をうまく使って、魔法でベッドを作る。
今の目標はこれだな!
さて、材料を手に入れに森へ行くかな。
ついでに薬学の本もあるし、薬草を手に入れてもいいな~
ここまで読んでくれてありがとう。




