閑話2 ギルド長と副ギルド長
冒険者ギルド、ビュルズ支部ギルド長室。
大きな机を前に、大きな椅子に座って書類を見ていたギルド長が
同じ部屋にいる副ギルド長に話しかける。
「やっぱり、気になる!」
副ギルド長は、ため息を吐き何度目かのギルド長の言葉にうんざりしていた。
「ギルド長、仕事をしてください」
「グラーは、気にならないのか?」
「そのことは何度も話し合ったではありませんか」
「しかしだな…」
副ギルド長は、手に持っていた書類をテーブルの上に置くと
「何度探しても、あの時『聖』属性の魔法を使ったものは見つからなかったでしょう?」
「うう…」
「さかのぼれば、あの赤い狼の時からだから2ヶ月ほど前でしたか?」
「ああ、特にこの間の死霊たちとの戦闘はあの魔法がなければ負けていた」
「感謝のあかしとして、金貨1000枚をと発表しても来るのは金の亡者ばかりです」
「まったく、魔法すら使えん奴までいたのには呆れたぞ!」
「ギルド長が、金貨100枚を1000枚と間違えるからでしょ!」
「…それは、すまん。
そう言えば、名乗り出た奴の中には教会関係者がいたと報告にあったが?」
「事実ですね、名乗り出た時言ったそうです。
『私どもの力を示せてよかったです、今後も寄付をよろしく』と…」
「…呆れた奴らだ」
「そんな教会も、上層部が動いてかなりの粛清があったそうですよ」
「それは、貴族連中も同じだ。
今回の失態は王様にまで知れ渡ったからな、領主交代は当然だな」
「しかし、なぜ名乗り出ないのか…」
再び書類を手にし、確認作業に戻る副ギルド長。
「それは相手に聞いてください、それよりも仕事をしてください」
ギルド長は、そんな副ギルド長の態度にため息を吐く。
今回使われた『聖』属性魔法は、かなりの物だった。
しかも付与魔法まで、使って私たちの武器に『聖』属性をもたらしたのだ。
そのおかげで、死霊たちに遅れをとることなく倒しきることができた。
お礼を言っても言い足りないぐらい感謝をしている。
さらに、死霊たちの後続を足止めした鎖魔法。
あれにも『聖』属性が付与されていた。
そして最も助かったのは、ネクロマンサーに召喚された『悪魔像』の時だ。
あれが動き出していたら、この町は滅んでいただろう。
それを動き出す前に、一撃で倒しきった。
あれには、その場にいた敵味方全員が驚いていた。
だが、それをやってのける力を持った魔法使い…
どうにかして、私たちの味方につけたいものだ……
「ギルド長、まだ考えているんですか?」
副ギルド長がこちらを見ている。
「どうにかして、味方になってほしいなとな…」
「そいつのことは横に置いておきましょう。今は、こっちの話の方が大切です」
「ということは、分かったのか? ネクロマンサーに力を貸した馬鹿が」
副ギルド長は1枚の書類をギルド長に出すと、説明を始める。
「名前は『カーテグ・オブリード』51歳。
出身地はわかりませんでしたが、今は『ベルーテ商会』の会頭です」
「『ベルーテ商会』といえば、王都でもかなり有名な商会だな」
「そこの会頭と、前魔術師ギルド長は旧知の間柄とか」
「それで、力を貸したか?」
「そのようですね。あと、教会にも顔が効くそうです」
「教会関係者に手を回して……か?」
「ええ、それも調べていて分かったことです」
「しかし、ネクロマンサーに手を貸して奴にどんな得があるんだ?」
「…それは、奴隷ですよ」
「その話、詳しく聞こうか?」
「ネクロマンサーにこの町を襲わせ、全滅させる。
しかし、全滅といっても完全にではない。必ずどこかに生き残っているものがいる。
そいつらを魔物に襲われた町の生還者として、奴隷として売り出す。
生還者の奴隷は高値が付きますから……」
「それが奴の出した未来か…」
「ええ、普通の奴隷より生還者の奴隷で売り出せば自分の懐が潤う。
そのようなことを、飲み仲間に漏らしていたそうです」
ギルド長は、ため息を吐くと
「そいつの商会は今も健在なのか?」
「いえ、今回の騒動と粛清の後、急激に規模を縮小して娘に代替わりしたそうです」
「娘に?」
「はい、娘に代替わりだそうです」
分からんな、何があって規模を縮小などと…
「なぜか、ますます謎が増えたような……」
「そんなことよりギルド長、仕事をしてください。今日中に終わりませんよ?」
「それは困る!」
ここまで読んでくれてありがとう。




