表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/23

第二話 ## 「保育園デビューと社会の洗礼」

# 『また会いましたね、雨宮さん ― 子育て編 ―』


## 第二話


## 「保育園デビューと社会の洗礼」


朝。


戦場。


それが、雨宮家の新しい日常だった。


---


「オムツよし! 着替えよし! ミルクよし!」


白石雫の声は、もはや軍隊だった。


雨宮悠人はパジャマのまま立っている。


「俺、何もしてない気がする」


「してます。そこにいるだけで邪魔じゃないです」


「それ褒めてる?」


「褒めてます」


---


今日は保育園の初日。


人生の新ステージ。


だが悠人の心境は——


「婚活初回より緊張してる」


だった。


---


子どもを抱く。


小さい。


軽い。


でも暴れる。


「お、おい落ち着け……!」


完全に現場作業より難しい。


---


白石が冷静に言う。


「雨宮さん、力入りすぎです」


「これどうやって力抜くんだよ!」


---


なんとか保育園到着。


---


そこは“社会の縮図”だった。


* 余裕のあるママ

* 完璧なパパ

* ブランド服の子ども

* 明るい先生


悠人は思う。


「ここ、婚活会場より怖い」


---


先生が笑顔で言う。


「初日ですね〜」


白石が丁寧に挨拶。


「よろしくお願いします」


完璧。


一方悠人。


「ど、どうも……雨宮です……」


声小さい。


---


隣のパパが話しかけてくる。


「初めてですか?」


「はい」


「うちもですよ〜」


優しい。


でもなぜか比較されている気がする。


---


その時。


子どもが泣く。


突然。


全力で。


---


悠人、固まる。


「え、今の何スイッチ?」


白石が即座に抱く。


「眠いだけです」


「万能すぎない?」


---


先生が言う。


「ではお預かりしますね」


その瞬間。


---


離れる。


子どもが。


---


悠人の胸が、

少しだけぎゅっとなる。


---


白石が横で小さく言う。


「大丈夫ですよ」


「いや分かってるけどさ」


---


保育園を出る。


---


外は静かだった。


さっきまでの騒音が嘘みたいに。


---


悠人が言う。


「なんかさ」


「うん」


「婚活の時も思ったけど」


「うん」


---


「“社会”ってずっと評価される場所だな」


白石が少し笑う。


「今さら気づきました?」


---


悠人は苦笑する。


「遅い?」


「遅いです」


---


でも白石は続ける。


「でも、今はちょっと違います」


「何が?」


---


白石は空を見る。


「評価されなくても、

一緒に帰る人いますから」


---


悠人は少し黙る。


---


そして言う。


「それ、結構でかいな」


---


## ― 夜 ―


保育園から電話。


「今日はよく泣いてました」


---


白石と悠人、同時にため息。


「ですよね」


---


帰宅。


静かな部屋。


---


白石が言う。


「疲れましたね」


「疲れた」


---


ソファに座る。


---


白石がぽつりと言う。


「ねぇ、悠人さん」


「うん」


---


「私たちってさ」


「うん」


---


白石は少し笑う。


「ちゃんと親やってますかね」


---


悠人は少し考えて言う。


「分かんない」


---


「でもさ」


「うん」


---


「ちゃんとじゃなくても、

今日も終わったな」


---


白石は小さく笑う。


「それで十分ですかね」


---


悠人は頷く。


「たぶん」


---


遠くで、

小さく泣き声がする。


また始まる気配。


---


でも二人は立ち上がる。


---


白石が言う。


「いきますか」


悠人が答える。


「いくか」


---


そしてまた、


“また会いましたね”が、


泣き声の向こう側で続いていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ