表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/23

# 第十二話 ## 「パパって呼ばれるのが、当たり前になった日」

# 第十二話


## 「パパって呼ばれるのが、当たり前になった日」


あの日の「パパ」は、たぶん偶然だった。


そう思っていた。


---


雨宮悠人は、まだ少しだけ疑っていた。


「たまたまだろ、あれ」


朝の歯磨き中に、ぼそっと言う。


---


白石雫は鏡越しに答える。


「たまたまでも呼ばれたんですよ」


「それはそうだけどさ」


---


隣の部屋から声がする。


「パパー!」


---


悠人、固まる。


---


「……おい」


「今日も呼ばれてますね」


白石は普通に言う。


---


## ― 朝の現実 ―


もう一度。


「パパ!」


今度ははっきりしている。


---


悠人はため息をつく。


「これ、固定された?」


---


白石が笑う。


「固定ですね」


---


悠人は少し考える。


「俺の名前どこいったんだよ」


---


白石は即答。


「それは私もです」


---


「え?」


---


「ママで固定されてます」


---


沈黙。


---


悠人は笑う。


「社会システムじゃん」


---


## ― 保育園 ―


送迎。


いつもの道。


---


陽翔は元気。


「パパ!いく!」


---


周囲の親が一瞬見る。


---


悠人は少し恥ずかしい。


「やめろってそういうの……」


---


白石が小声で言う。


「もう遅いです」


---


先生が笑う。


「仲良しですね〜」


---


悠人は小さく会釈する。


「どうも……」


---


(俺、なんかキャラ付いてない?)


---


## ― 昼 ―


現場。


坂本が言う。


「お前さ」


「うん」


---


「最近、なんか雰囲気変わったな」


---


悠人は工具を持ちながら言う。


「そうか?」


---


「前より柔らかい」


---


悠人は少し黙る。


---


「……そうかもな」


---


坂本がニヤニヤする。


「家庭パワーか」


---


悠人は即答。


「うるせぇ」


---


でも否定はしない。


---


## ― 夜 ―


帰宅。


ドアを開ける。


---


「パパ!」


---


即。


秒速。


---


悠人は苦笑する。


「玄関入って一秒かよ」


---


陽翔が走ってくる。


抱きつく。


---


白石がキッチンから言う。


「おかえりなさい」


---


悠人は少しだけ止まる。


---


(あ、これだ)


---


昔は「ただいま」だった。


今は「帰る場所」になっている。


---


## ― 夕飯 ―


三人で食べる。


騒がしい。


こぼす。


笑う。


怒る。


全部混ざっている。


---


白石が言う。


「ねぇ、悠人さん」


「うん」


---


「パパって呼ばれるの、慣れました?」


---


悠人は少し考える。


---


「いや」


---


「まだちょっと変な感じする」


---


白石は笑う。


「でも嬉しそうですよ」


---


悠人は少し黙る。


---


「……まあな」


---


## ― 夜の静けさ ―


寝かしつけ後。


リビング。


---


白石が言う。


「最初のパパって、覚えてます?」


---


悠人はすぐ答える。


「覚えてる」


---


「びっくりした」


---


白石は笑う。


「私もびっくりしました」


---


少し間。


---


悠人は天井を見て言う。


「でもさ」


「うん」


---


「今の方が、ちゃんと“パパ”って感じする」


---


白石は少しだけ黙る。


---


そして言う。


「じゃあ、育ってますね」


---


悠人は笑う。


「俺が?」


「はい」


---


## ― ラスト ―


夜。


静か。


---


遠くで小さな寝息。


---


白石が言う。


「ねぇ、悠人さん」


「うん」


---


「この子ってさ」


「うん」


---


少し間。


---


「ちゃんと“家族”にしてくれますね」


---


悠人は少し笑う。


---


「違うだろ」


---


「え?」


---


「もうとっくに家族だろ」


---


白石は黙る。


---


そして小さく笑う。


---


「ですね」


---


外では風が吹いていた。


でもこの部屋だけは、


ちゃんと“帰る場所”だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ