××先輩
ジェイド=メイヤーは大きな魔の者とその者にしがみつく小さな人間の存在がこの世界から消えたことを悟り、その可憐な両の目を濡らした。
彼女は役目を果たす為、戦場に顕在して降り立ち、倒れ伏す英雄達に告げた。
「我らの勝利です、英雄達!! 魔王は消え去りました!!」
倒れ伏す者達も力を振り絞り、地べたに座ったり、満身創痍ながらも立ち上がり、喜びの声を上げた。
意識を取りも出したミホをイサミが抱え、ミホは後方支援部隊のクミ達に動けず治療が必要な者がいることを風魔法で伝え、呼び寄せた。
クミやミイシャ、荒巻先生が治療に当たる。負傷が少ない者も治療する側にまわり、全員の処置が完了した。
ただ、ミイシャは何かそこで底知れない違和感を感じていた。
「あれ? 人数は33人だよね、クミ?」
「何、言ってんの? 32人じゃん?」
「なんで? 私、腕章を33個作ったよ。ホラ、荒巻先生が33番でしょ?」
荒巻が腕に巻く、33番の腕章を指さす。
「恐っ、何言ってんの? 4番は忌み数だから使わなかったじゃん?」
「えっ!? でも、私の大、大、だぁ~~い嫌いな先輩が付けたよね?」
「誰それ? 知ってますか? イサミ先輩?」
「ミイシャが嫌いな相手か……? というか、男子全般が嫌いだろ?」
「そうだ、そうですよ。男の××先輩ですよ? ミホ先輩?」
「誰? よく分かんない」
「えっ!! そんな、皆さん、覚えてないですか!?」
「知らないよ」と口々に他の女神研部員も答える。
騒ぎを聞きつけ、女神もミイシャの近くに来る。
「どうしました?」
「ああ、女神様。女神様のお気に入りの××先輩がいないけど、どこにいるんですか?」
ミイシャの言葉を聞き、女神は首を傾げ、答えた。
「誰ですか、それは?」
女神の言葉にやや動揺するが、ミイシャは言い放つ。
「だから、私が嫌いで心の中から消えて欲しいとさえ思っていた。××先輩はどこにいるんですか?」
クラス全員がミイシャの意味不明な言動に混乱し、寧ろ、怖いとさえ思う空気の中、女神はやや目に複雑な隠しきれない感情を蓄え、澄ました表情をしていた。
そんな中、暗闇を照らす目映い光が辺りに放たれ、その中心にジェイド=メイヤーと同じような格好をした銀髪で切れ長の目をした女が現れた。
「皆様、この度は魔王を討伐頂き、ありがとうございました。私はこの世界の統治者、ガイヤ=メイヤーです。まあ、平たく言うとそちらにいるジェイド=メイヤーと同じようにこの世界の女神です」
代表して、イサミが発言する。
「ガイヤ様、魔王はいなくなったんですね? 正直、記憶が定かではないのですが……」
「ええ、そうですよ。魔王は最後の力を振り絞り、自爆し、貴方達を巻き込み、この世を去りました。……そうですよね?」
ガイヤのやや怪しい証言に女神研の皆が催眠術に掛かったように目が虚ろになり、皆が同じタイミングで頷き、同意を示す。
「「「ええ、そうですね」」」
「それは良かった。では、皆さん、スキルなんて忘れて、嫌な思い出も忘れて、ふ・・・」
ガイヤの身勝手な発言を遮り、メイはガイヤに言う。
「ガイヤ、貴方の身勝手な言動に私は何も言えませんが、約束は守って頂きます」
面倒くさそうにガイヤはメイを見つめ、口を開く。
「何、約束って? そんなのした覚えはないわよ」
「神族は約束を違わないはずです。約束の通り、貴方の半身であるムーン=メイヤーを引き渡しなさい」
「……、それは出来ないわ、ジェイド。あなたは私の世界に明らかに干渉しているわ。これは神族間の盟約に反する行為でしょ?」
目に怒りを溜めながら、メイはガイヤに反論する。
「それは違います。自分のミスで半身を魔に落とし、この世界に混乱を巻き起こしたあげく、自分では始末が効かなくなって私に泣きついて助けを求めたのは貴方でしょう、ガイヤ? その際、約束を交わしていますよ」
見るからにイライラしながら、ガイヤは落ち着きはらったメイに言い放つ。
「えらく強気ね、ジェイド。忘れているかもしれないけど、あなたは私の世界では脆弱な存在なのよ。あなたはただの物語のキャラクターにすぎないのよ、あなたの存在はこの娘が書いた小説を消せば消えてしまうのよ、分かってるの?」
メイはガイヤの言葉を聞き、やや言葉を詰まらせたが淡々と自身の主張を続ける。
「そうですか、ガイヤ。ですが、それならせめて、彼を救ってあげなさい!! 彼があまりにも不憫です」
メイの発言に少なからず動揺し、ガイヤがメイを脅す。
「ジェイド、口を慎みなさいよ!! 何のためにここまで手の込んだことをしてきたのか、あなた、分かっているの?」
「そう思っているのであれば、せめて封印を解き、ムーンを討ちなさい。自分の失態は自分で拭いなさい、ガイヤ!! まだ、ムーンを自身の配下に置こうなんて甘い考えはやめない。今の貴方にその力はありません」
メイの言葉を黙って聞き、顔を伏せていたガイヤが赤い顔をしながら、メイを睨みつけ、自身の中にある何かの線が切れたように叫ぶ。
「うるさいんだよ!! ガキがっっっっっっっっ!! ちょっと上手くいったからって調子扱いてんじゃねえょ!! あぁ!?」
メイは冷静にガイヤを見下し、言う。
「そうですか、では……。がはぁ!? 何をしているのガイヤ?」
「あぁ!? そんなもん決まってんだろ!! てめえをこの世界から消すんだよ……、ほら、見ろよ、消えてんだろ?」
ガイヤは笑いながら、ミホが書いた小説の存在を消し、携帯端末に掲載されていたミホ達の小説が消去されたという表示を見せた。
「ば、馬鹿なの? あなたのちっぽけなプライドでまたこの世界に混乱をもたらすの? ……ごめんなさい」
「あっははは、いいきみね、ジェイド♡ あんたって無機質過ぎて嫌いなのよね。謝るのも遅いし、じゃあね♡♡♡」
「……モザイ君、助けてあげられなくて、ごめん」
メイは最後に涙を流し、悔しげにそう言い残し、消えた。
彼女の流した涙は地面にある誰かが落とした制服のボタンに掛かった。
メイが完全に消え去ったのを確認したガイヤは手を大げさに叩き、服の埃を払い、深呼吸を一つして、完全なる作り笑いをし、女神研の皆に告げた。
「さあ皆、嫌なことは全部忘れて、嫌な女から貰ったスキルもギフトも全部忘れて、ごく一般的な普通の高校生に戻りましょうね。ああ、でも女神研の活動は続けましょうかね♡ 私のためにもキリキリ働きましょうね。じゃあ、今からお家に帰って嫌な夢から覚めて、淡々と日々を過ごしてねぇ。私は南国のビーチでここ何年か分のストレスをエステでデトックスしなきゃいけなから、じゃ!!」
情感たっぷりそう言い放った後、ガイヤはパチンと指を鳴らし、姿を消した。
その後、女神研の皆は意識を取り戻し、同時に戦場は何もなかったように元の景色に戻り、彼ら彼女らはゾンビのように生気を失い、団体行動でもって歩いてこの場を去っていった。
そんな女神研の面々を横目で見ながら、メイが涙を流した付近に落ちていたボタンを拾い上げ、しばらくボタンを握り締め、誰かが言った。
「あいつ、最悪」
そう言い放ったのはショウが異世界で幸せに暮らしていると聞かされていたナコ=クラインであった。
面白いと思って頂けたら、嬉しいです。
取り敢えず、3章は終わりです。
なお、このお話は4章でお終いです(◡ ω ◡)
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引き続き、道 バターを宜しくお願いします。
他にも作品をアップしています。
作者ページを見て頂くと、なんと!?すぐに見つかります(笑




