ショウの決意
ショウは何が起きたか理解できずに固まっていたが、高速で何かが付近に吹き飛ばされてきた。
そして、その何かを確認したショウは愕然とした。
それはクラスの中で一番頑丈とされている不動茂呂がボロボロで見るからに虫の息で気絶していた。身体の欠損はなさそうだが、しばらく動けそうにないように見える。
爆発した地点にショウが目をやると土煙が辺りを包んでいたが、突然の突風と共に当初からかなり小さくなったとはいえまだ大きい、魔王が3メートルの人型の巨体となり立っていた。
「なんてしつこい奴なんだ」
ショウは思わずつぶやき、他のクラスメイト達を見る。
モロより幾分魔王から離れいたため、防御体勢を取れたのか全員倒れてはいるが息をしていなさそうな生徒はいない。
その時、魔王が奇声を上げた。心なしか笑っているように思えた。そして、倒れた生徒の中から自身に致命傷を与えた女勇者のイサミを見つけ、倒れ伏す彼女にトドメをさすために跳躍し、仕返しとばかりに彼女の首を踏みつぶそうしているように見えた。
ショウはマズイと思いナイフを投擲し、注意を逸らそうとするが魔王は意に介さない様子でそのまま、イサミを狙った。魔王の脅威がイサミに降りかかろうとした瞬間、突風が吹き、魔王はその風に吹っ飛ばされた。
ミホが魔法を放ち、イサミから注意を反らすことに成功した。だが、次に自分が狙われることも十分予測出来ていたようで、防御用の魔法を張り、自身に迫ってくる魔王の打撃を一度は防ぐが攻撃の余波の衝撃には耐えきれず、吹き飛ばされた。
魔王は今度はミホをターゲットにし、倒れた彼女に近づく。その時、誰かが叫んだ。
「やめろ、やめてくれ!!」
先程まで狙われていたボロボロのイサミが悲壮な顔で叫び続けている。
その表情を見た魔王は再び、奇声を上げ、笑い出し、反応が薄いミホの頭を片手で掴み持ち上げる。するとイサミが身体を這わせながら、魔王に近付き、再度叫び静止を呼びかける。その態度を見、魔王は更に笑い、ミホの首にもう片方の手を掛け、頭と身体を引きちぎるような動作のふりをし、イサミを更に絶望させるような態度を見せている。
そのような光景を目にし、ショウは心底、この世界に戻ってきたことを後悔している。
もっと僕に力が合れば、もっと僕が強ければ……
寧ろ、イサミやミホと親しくならなければこんな不快な感情を抱くこともなかったのかな?
メイ、僕にはやっぱり、力なんてない、終わらせる存在じゃないんじゃないか?
本当にそんな存在であれば、こんな胸くそ悪い光景も見ずに済んだんじゃないか?
ちから、チカラ、力……
触れたものを完全に見えなくする力……
……そうなのか、メイ?
君が望んでいる僕の力は○○を消す力なのか?
目の前の悪趣味な光景を終わらせるべく、ショウが魔王に近づこうとした時、後方でうめき声が聞こえた。
「痛てぇ~、全身が痛てぇ」
意識を取り戻した不動茂呂であった。
ショウはモロを助け起こし、端的に状況を説明する。
「不動、ミホが人質に取られている。足音をたてて近づくだけでも、直ぐにミホがやられかねない、僕に秘策があるけど、認識阻害を使っても用意に近づけない。不動、頼む、魔王のところまで僕を投げ飛ばしてくれ」
「……本当にこの状況をなんとか出来るんだな?」
「ああ、出来る」
「……モザイ、お前の秘策を信じていいんだな」
「ああ」
「必ず、ミホを救えよ」
「分かってる」
最後に視線をぶつけ、モロは納得したように頷き、ショウの身体を掴む。それと同時にショウは自身の身体に認識阻害を掛ける。
「行くぞ」というかけ声と共にモロはショウを掴んだ利き手を大きく振りかぶり、ショウを投げ飛ばした。
ショウは投げ飛ばされ、目の前を流れる景色を見ながら、家族や女神研の皆、ナコのことを考えていた。その心には不思議と感謝の言葉が浮かぶ。
ありがとう、そして、……さようなら
ショウは両腕を広げ、魔王の胴体にぶつかる。
魔王はショウの存在に気づき、ミホの首に力を入れようとしたが、時すでに遅く、自分の身体が薄ぼんやりと消えていくとに気づいた。ミホから手を離し、ショウを引き剥がそうとしたが・・・
二度目の自身が消えるという恐怖に怯え、悲壮な叫びをあげたが、その叫びに応える者も無く、再び、魔王は消えた。
そして、この日、世界から魔王と共に茂在翔という【存在】が消えた。




