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魔王と勇者と杉

 部活が終わり、部室を閉め、帰路につく電車の中でショウは携帯端末を取り出し、数度、SNSを眺め、ポケットに仕舞った。


 帰宅し、風呂に入り、夕飯を食べ、部活を始めてから習慣化しているランニングをしに近くの公園に行く、ランニングのお供は彼女・・・の声に似ている歌声だ。


 ……思考を真っ白にしたい。

 

 今日の不動茂呂の出現は正直に言って参った。


 改めて、自分が主役ではなくモブであったのが再認識させられた。


 ただSNSでミホに心情を吐露するのが今更ながら格好悪いと思ってしまった。


 とりあえず、身体を疲れさせて、嫌なことを一時的に忘れ、眠りたかった。



 翌朝、眠たい目を擦り、身支度を済ませ、朝食のトーストをかじり何気なく眺めていたテレビ画面には天気予報が流れていた。


 スタジオにいる番組のメインキャスターが屋外のレポーターに呼びかけをしている。だいたい名所で撮影しているが、今日は都心の有名な芝タワーであった。


 ショウは最初、空が暗く、曇り空であった為、映像が乱れていたのかなと思ってはいたが、再度テレビに近づき、見てみるとタワーに【なにか】が写っていた。ちなみに、近くにいた母にも何か見えるかを聞いてみたが何もないとあっさりと答えられた。


 女神研の皆に放課後、相談したい内容がある旨、連絡し、登校時に周辺地図の衛星写真を確認し、ショウは身震いしていた。


 今までに見たことのない巨大な認識阻害モザイクが画面を覆っていた。


 放課後になり、部室にはいつもの4人にモロを含めた部員全員が集まっていた。


「来たか、モザイ君。流石に昨日の今日なので全員が揃っているが……、やはり昨日の【あれ】の件で良いんだな」


「ああ、恐らく、場所は都内の有名な芝タワーだ。僕が写真でみた感じだとかなり大きな認識阻害モザイクが掛かっている……、これだけど、何か見えるかな?」


 ショウはイサミに自分の携帯端末で表示した衛星写真を見せた。


「う~ん、何も見えないな」


 隣のミホ、次はその隣と端末をまわしていき、皆で衛星写真を見ていく。


「見えない」


「見えないっす」


「何も見えん」


「見えないです」


 端末を回収し、ショウが言う。


「そうか、皆にも見えるように認識阻害モザイクを消そうとしているんだけど、消せないだよな」


「そうか……、一度の現地で調査するのもいいかと思うが、皆、どう思う? 出来れば週末に調査を出来たらと思う」


 その後、希望者で現地調査をすることになった。


 メンバーは、ショウ、イサミ、ミホ、不動兄妹になった。ミイシャは先約があり、今回は欠席した。

 タワーに関して、ショウにはやはり何かやや灰色っぽい靄のようなものが漂っているように見えたが、規模感の確認の為にも、一周り調査をした。


「どうだ、モザイ君。何か見えるか?」


「ああ、くそ、ぜんぜん見えない。まだ靄が掛かっている感じだし、触れもしない。でも巨大な何かがある。しかも……」


 ショウの表情がやや暗い。


「しかも何? モザモザ?」


「うっすらと靄が見える。灰色の……」


「おいおい、マジかよモザイ、それはヤバいぞ!?」


「何、兄貴? 灰色が問題なの?」


「クミ、私達が倒した異世界の魔王は同じように灰色の靄を出していた、つまり……」


「……つまり?」


「あのタワーにこの世界の魔王がいる可能性がある」


「えっ!? それヤバくないですか?」


「ヤバい」


「ヤバいな……、モザイ、魔王は活動しているのか?」


「すまん、見えないんだ、……クソッ!! もう一度見回って来る!!」


 ショウは憤りから、思わず地面に当たる。


「モザモザ、あまり気に病んじゃダメ。……落ち着いて」


「ああ、……ああ、そうだな」


 息を一息吸い、一息吐き、心を幾分落ち着かせ、状況を確認する。


「動きはないと思う。すぐに活動する感じではないのかな? ……たぶん」


「そうか、取りあえず今の所は危険はないのか……、一度情報の整理と今後の話もしたい。休憩がてら場所を変えないか?」


 その後、近くのファミレスで話し合い、芝タワーの監視と女神の意見を聞くための女神研の活動の継続、ショウのスキルを強化する方針が決まった。


「モザイ君、見えないものとは戦えないんだ。この世界の平和のためにもすまないが、スキルの強化を頼む」


「モザモザ、良くないことが起きる可能性がある。私からもお願い」


「モザイ、女神様からの指令だろ? 頑張れ!!」


「モザイ先輩、この世界は先輩に掛かってる気がします」


「……ああ、分かった」


 今まで、期待されたことがなくモブとして過ごしていたショウが浴びた期待の声は勇者として活躍していた3人のプレッシャーと焦りの感情の一部を感じ取れるものであった。


 世界の命運を背負うというのは憧れと共に面倒なものだ。


 ショウにはそう思えた。


 週明けに部活動の更なる促進の案が欲しいと言われ解散した。


 帰宅の際、イサミ達と分かれ、一人になった時に、携帯端末が振動した。通知を確認するとグチ用のSNSにダイレクトメッセージが届いていた。


『モザモザ、悩みがあるなら言え』


 杉だった。


 ……なんて良い奴なんだろう、彼女ミホは。


『自分が勇者で世界の命運を背負わされていたとして、背負っている重荷が重すぎたと感じだ時、どうしたらいいんだろうな?』


 少し間をおいてから、杉から返事が来た。


『勇者の使命なんて建前の言葉は使わない。自分のための理由で考えればいいんじゃないか? 自分にとって大切な人が傷つくのが嫌だとか、自分にとって大切な場所や時間を邪魔されるのが嫌だとか、自分のための理由もあるもんだろ?』


『あるな』


『じゃあ、自分のためにやって、結果的には世界を救うと思えば良い』


『……身勝手な勇者だな』


『そうだな。……幻滅したか?』


『いや、身近に感じるよ』


『そうか』


『ありがとな』


『こんな話なら幾らでもしてやるよ』


 杉とのやりとりを終えて、携帯から顔を話すと幾分、表情が和らいだ気がする。

面白いと思って頂けたら、嬉しいです。


道 バターを宜しくお願いします。


他にも作品をアップしています。


作者ページを見て頂くと、なんと!?すぐに見つかります(笑

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