作戦開始
土日を挟んだ数日後の放課後、タケの説得&告白作戦が開始した。
本日は多目的教室ではなく、部室棟の一室を借りていた。
女神研究会部員の胸には真新しい、花で縁取られた女神ジェイド・メイヤーの缶バッチがあり、統一感はバッチリだった。
だがその中で、約2名がその場の空気を乱していた。
「モザイ先輩マジでこれで上手くいくと思ってるんっすか?」
「ああ、そうだ不動!! 抜かりねえ!!」
「なんっすかその根拠のない自信は!!」
「大丈夫だ。僕の中では根拠はあるから」
「それが一番心配なんっすよ!!」
「まあ取り敢えず、声のチューニングよろしく」
「はあ……、まあイサミ先輩とミホ先輩に言われたんでやりますけど」
「ほれ、台本」
「(台)本はだいたい覚えてます演劇部並みに練習もしたつもりっす。あぁ~、あぁ~、こんな感じですか?」
「……、ああ、完璧だ、じゃあ、電話掛けるぞ?」
「あ、ちょっと待って、すぅ~、はぁ~、(咳払い)うんっ!?……どうぞ」
「じゃあ、いくぞ」
作戦とはズバリッ【不動久美にジェイド・メイヤーの物真似をさせてタケを電話で説得する作戦】だ。そのまんまです。
この為に、みっちり、クミにボイストレーニングをさせ、台本をミホに書いて貰い、その全てをショウがチェックした。
上手くいくことを願う。
何コール目かの後、タケが電話に出た。ちなみに携帯端末の設定をスピーカーモードにしている。なお、事前にタケには夕方電話する事は伝えている。
「もしもし、話ってなんだよモザイ?」
「お久しぶりです。竹下大地」
「誰だ!?モザイじゃないのか!?」
「ええ、違いますよ、竹下大地。私が分かりますか?」
「……、ウソだろ? もしかして、女神様なのか!?」
「そうですよ、竹下大地」
「ウソだろ、証拠あんのかよ」
「…」
クミが後ろめたさから、ショウを見る。
ショウは無言で台本の一部を指さす。
そこにはトラブル発生時の重要キーワード、行動が書いていた。
ショウはその中のある単語を指でさす。
『無視』
クミは頷き、続ける。
「今はそんなことはどうでも良いのですよ。竹下大地。私は限られた時間の中でこの会話をしています。聞いて頂けないでしょうか?」
「…」
「実は私にはどうしても解決したい事があります。それは月野ヒカリの事です」
「ヒカリの事?」
「彼女は私の世界で心に傷を負い、まだ完治していないと聞いています」
「…」
「無理なお願いかもしれませんが竹下大地。あなたが彼女の心の傷を癒す支えになっては頂けないでしょうか」
「なんで俺に」
「私には分かります。あなたが彼女を大事な存在だと思っていることが」
「それは……」
「我が儘なお願いだということは重々承知してます。でも、私には竹下大地。あなたにしか頼めない事だと考えています」
「…」
「そうですか、では茂在翔に再度、お願いしてみます」
「……、一度モザイに言ったんですか?」
「ええ、ですが、茂在翔にはあなたが適任だと断られました。一度、あなたを説得すると言っていましたが、何もなかったのですか?」
「あっ!?ありました」
「そうですか、ですが、その感じだとあなたから提案を断られたんですね。やはり、茂在翔にお願いします」
「待って下さい、女神様」
「はい?」
「出来るかどうかは分かりませんが俺が……、俺が彼女を支えます」
「そうですか、それは非常に助かります。では竹下大地、再度あなたにお願いします。月野ヒカリを支えてあげて下さい」
「分かりました」
「早速ですが、月野ヒカリを多目的教室に呼んでいますので、宜しくお願いします」
「えっ!?」
「私の祈りに力が有るかは分かりませんが、あなた達に祝福を……」
「……、分かりました」
「竹下大地、月野ヒカリを救ってあげて……」
その言葉を最後に電話が切れる。
「? もしもし、女神様、もしもし?」
しばしの沈黙の後、誰かの息を吐く音が部活棟の一室でした。
「モザイ先輩、なんか知らないけど、上手くいきましたね」
「そうだな……、でも正直こっからはタケ次第だよ」
「そうっすね。結局私たちは背中を押すしか出来ないですからね」
「まあな」
面白いと思って頂けたら、嬉しいです。
道 バターを宜しくお願いします。
他にも作品をアップしています。
作者ページを見て頂くと、なんと!?すぐに見つかります(笑




