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逃亡377 ふぅ。よかった。水死体が浮いてたりはしなかった

 次のが向かってます。


◇ーーーー◇


「それで本当にハルマゲドンはないんだろうね!こっちはそれさえ聞ければよかったんだよ!」


 豚野郎神様は亀を追って海に入っていきました。部下の天使たちが謀反を起こすかもと思ったけど、みんな団結されていた。


「はい。どうしたらこうなるのかわからないですけども、亀を追っていきました。結果として亀違いではあったんですけど、無事に出発されました。その後、海は平穏です。特に問題はないと思います」


「その言葉が信用ならないんだよ。確かめたのかい?こっちはそっちがどういう状況かわからないんだ」


「はい。普通に魔法を唱えて海に向かって歩いていきました。大丈夫だと思いますよ?」


「確かめたのかい?亀違いってなんだ?亀違いって」


「聞いてたならわかると思いますけど、いじめられてた亀じゃない亀を追っていきました。でも亀ですから。いつかは竜宮城に着きますよ。亀が泳げる距離って大したことないです。狭い範囲なのでしらみつぶしに探せばいいだけです」


「いじめられてた亀ってなんだい?」


「あ、確かに。そこ曖昧ですよね。とにかく、案内役じゃない、天然の亀を追っていったんです。僕は亀の個体を識別できるほど、亀を見てきたわけじゃないんです。あるじゃないですか。外国人の顔が覚えられないって。あれですよ」


「それで遭難したらどうするんだい?それこそハルマゲドンじゃないのかい?」


「うーん。そこは丁寧に歩き回って見つけると思いますけどね。迷子になったらどうすんだと言われても、子供じゃないんだから大丈夫ですよ」


「それでハルマゲドンが起きたらどうするんだって聞いてんだよ。そもそもハルマゲドンなんて起きないんじゃないのかい?起きるんだったら何なんだ、その緊張感のなさは?女の話してる場合か!」


「それは…。ほっとして、将来のことも考えただけです」


「ほっとしたついでなのか?」


 アユさんも怒ってる。


「いえ!日々考えてます。常に考えてます。せっかく二人で話せる機会だったので…。」


「せっかくの機会になんの考えもなかったじゃないか!」


「ぉ、おっしゃる通りですぅ。でも大切なんです。大事にしたいんです。国王代理とか神のしもべとか、お役目が終わったらゆっくりのんびりみんなで幸せになる方法を探しますぅ」


「当たり前だろ!いま探せ!みんな困ってんだぞ?諦めてんだぞ!」


「ゆっくりのんびりなんてありえないよ。アユちゃん。ばばあの助言だが聞いておくれ。家に帰ったら旦那がのんびりしてる。人生で最悪の瞬間だよ。いつも家にいるような旦那は絶対もらっちゃいけないよ」


 この声は誰だろう?クードさんかな?


「家に帰らない旦那の方がいいってことか?」


「それは旦那じゃない。飼い犬でもない。野良犬だよ。旦那に限らず、男ってのは女のために一心不乱に働く者がいいんだ。キープさんはそれをやってる。十分じゃないか」


 あ、ビレトさんだ。元街娼の元締めで、いまは人買いのビレトさんだ。やっぱり言うことが違うな。貴族相手にイミテーションジュエリーを売りまくってるだけある。


「そんなの誰も求めてやしないよ!それよりハルマゲドンは大丈夫なのかって聞いてんだ。本当に避難を解除して大丈夫なのかい!」


「え?本当に避難してたんですか?避難訓練とはお伝えしましたけども…。」


「してんだよ!」


「申し訳ありません。誠に申し訳ないです。でも、本気の訓練になってよかったです。ありがとうございます」


「だから!もう本当に危険はないんだね?絶対に大丈夫なのかって聞いてんだよ!」


「絶対は存在しないとはいえ…。もう一回、見てきます。念のため見てきます!」


 ため息ついてるアユさんに謝ってもう一度、海岸に向かいます。


 すると静かな浜辺だった。亀がいる。


「異常なーし!モーノ!」


 ふぅ。よかった。豚野郎神様の水死体が浮いてたりはしなかった。


「あら、リリスさん。なにしてるんですか?」


 リリスさんが波に呑まれてた。


「ん~~。死ぬかと思った」


「海水浴ですか?焼きそば食べます?僕、超怒られてから焼きそばを広めようと心を入れ替えたんです」


「しょっぱい水たくさん飲んだから要らない」


「でしたら蒸留水がありますよ。塩分ゼロです。どうぞ」


「ん~~。ありがと」


「それでなにをされてたんです?豚野郎神様と関係あります?」


「ん~~。………黙秘」


 関係があるらしい。


「そうですか。なら聞きませんけど。僕たちに危害が及ぶ可能性はないですよね?」


「ん~~。…キーぷん以外はね。ダイジョブダイジョブ。そういう手はずだから」


 どういう手はず?


「そうですか。なら聞きませんけど。悪いことしてませんよね?」


「おしっこしただろって言いたいの?」


「いえ。言ってません。海でするのは問題ないと思います。海は多様な生き物の排泄物と死骸で生態系を支えてますから。それより豚野郎神様にちょっかい出してないですよね?無事、竜宮城へと旅立ったとこなんですけども」


「ん~~。おしっこしてただけ。これ以上聞かないで」


 絶対してない。わざわざ海におしっこしにくるはずがない。


「すいません。勘ぐりました。でもリリスさんの身体から出た水分なら、栄養豊富で水産資源が増えるかもしれませんね。…なんて関係ないこと言ってみたり」


「ん~~。まぁね。魔力豊富で魔物が荒ぶるだろうね。これ、秘密ね」


「へー。……荒ぶる。いま豚野郎神様が迷子になってるんですけども」


「そうなの?初めて知ったよ」


 んなわけないでしょ。嫌がらせだ。サキュバスさんたちの仕返しだ。


「うん、まぁ。必要なことだと思います。手続き的な意味もありますよね。…はい。帰りましょう。なんかフラグが立った気がします。こういうときはさっさと離れましょう」


「ん~~?フラグ?」


「ちゃんと安全を確かめろって言ってんだろ!」


「タニアさーん。ご理解ください。なにか起きたら巻き込まれます。安全第一です。すぐ離れないとまずいです」


「ハルマゲドンが起きたらどうすんだって言ってんだよ!」


「逃げるんですよ!ハルマゲドンが起きたら逃げる。起きなくても逃げる。安全なところで命をつなぐ。これしかないです。避難訓練で学んだんじゃないですか」


「バカ言ってんじゃないよ!いつまでこもってればいいんだい!どこに逃げろって言うんだい!」


「どこって…。うーん。大丈夫です。そういうのも含めて別の大陸でやってることですから。実は僕もここがどこかよくわかってないんです」


「さっき歩いてたのは?」


「マイマイとの合流地点も離してあるんです。安全対策は二重三重にしてますから」


「だったら迎えにきてもらおうよ。無駄に歩いちゃったよ」


「アユさん。二重三重に安全対策してるんです。それより走りましょう!」


「やだっ!もう歩かない。私は人魚なんだぞ」


「だったらおんぶします。早く離れましょう」


 しゃがんで背中を差し出す。


「ありがと〜。…よいしょ」


 背中に乗ったのはリリスさん。


「あなたは自分で歩けるでしょ。むしろ荒ぶる魔物に対処してください!」


「ん~~。……差別するの?…私が邪神だから?」


「そうは言ってません。そうじゃなくて。荒ぶる魔物の責任をとってください」


「ちょっとちびったらそれ?恥ずかしいのに正直に言ったらそれ?」


「いや、すいません。申し訳ないです。不適切でした。でも魔物が襲ってくるならリリスさんが撃退してくれませんか。少なくとも、これもトレーニングだとか言わないでください!」


「…最低だな」


『最低ね。本人の希望通りトレーニングにしましょう』


「ルーさん!いたんですか。てか口を開いたらそれですか。逃げますよ。豚野郎神様が揚がってきたら大変です」


『揚がってきたらここで終わらせます。永眠してもらうわよ』


 どうやって?そんなことしていいはずがない。


「ちょっと〜ぉ。とにかく!この場を離れますよ。二人分おんぶします。アユさんがおんぶ。リリスさんが肩車。いいですね?」


『きたわよ!』


 ルーデンスの声と同時にわらわら湧いてきた。小さいカニが海から上がってくる。数押しの魔物だ。


「早くしないからじゃないですか!」


「早くおんぶしてよ」


「そんなこと言ったって、…あ!カニ飯の材料が切れてたんでした。せっかくだからいただいて帰りますか。ちょうどよかったです」


『ハルマゲドンは?』


「冷静になってください。大丈夫ですよ。カニですもん。豚野郎神様が怒ってなければ大丈夫です。すぐ準備します!」


 湧いてくるカニを誘導するように石材で壁を建てていく。穴を掘って海水を張って…。


「そうそう。この加熱プレート。こんな便利な道具があったことも忘れてましたよ。ボイボイボイル。コンベアも設置してと…。」


 湧いてくるカニが湯だった海水に進入すると茹だって堆積する。これをコンベアで引き上げます。全自動茹でガニ製造ラインが完成したらアイテムボックスに回収していく。


「うほ〜ぃ。大漁です!これで食糧難が解決です!クードさんに怒られずに済ます!」


「前言撤回、早すぎるだろ。逃げるぞ逃げるぞ言ってたじゃないか」


 アユさんはため息ついて眺めててくれた。


「すいません。切り替えです。状況が変わったんです。豚野郎神様じゃなくてカニ嵐です。スタンピードです。大漁ですよ」


 予想通りカニは徐々に大きくなっていく。最初はワタリガニくらいだったのが枕サイズになり、ソファサイズになり、ダブルベッドサイズになって、みんな茹で上がって手元に届く。こんなチャンスは三度とない。


「大漁です!大漁ですよ!」


「興奮すると、全部忘れて夢中になるんだよなぁ。なんなんだ?うちのキープくんは?」


『逃げてるのよ。諦めなさい。あれはああいう男。アユやみんなに詰め寄られて応えられなくて単純作業に逃げてるだけ』


「ルーデンスはそれでいいのか?」


『いいわけないじゃない。だけど慣れました。…そろそろ本体がくるわよ。リリス様!自分で呼んだなら自分で対処してください」


「ん~~。せっかく呼び寄せたのにキーぷんが湯がいちゃってんだけど?」


『仕方ありません。どうせ小型の魔物は戦力になりません。カニ飯としていただきましょう』


「ん~~。保護者もおかしいんだよなぁ。これ見てカニ飯ってなるかな?」


「なります!大漁です!」


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