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逃亡376 本当にうんこだな

 愛ゆえに。


◇ーーーー◇


「あの亀を追えばよいのだな?」


「はい。しっぽは掴まないでください」


 海岸に豚野郎神様の見送りにきています。


「無論だ。しっぽを掴ませるようなら、それは罠だ」


「はい。そうだと思います」


「無論だ。…思えば、お前も乙姫を救いたいと志願していなかったか?」


「はい。見間違えだと思います。僕はあくまでも誘導係です。子供たちにいじめられてる亀を探すのが役割です」


「そうか。その顔、見覚えがあったのだが。あの海の家にいなかったか?」


「えっとぉ。僕は海の家で働いたことはありません。平均的な顔なので、この世の顔を足して割るとこんな感じになるとは言われます」


「確かにな。合点がいった。それでは、ゆくぞ!乙姫を救えばすべて解決する。空と海、長きにわたる対立を超えて、いまこそ手を結ぶときなのだ!」


「「「うぉおおー!」」」


「ぁ、あぁ…」


 豚野郎神様たちが大きな声を出すので亀が驚いて逃げた。


「いざ、竜宮城を解放するぞ!」


「「うぉおおー!」」


「に、逃げちゃいます。亀が逃げてます」


「ふん。問題ない。もうしっぽは掴んだのだ」


 結局、掴んだの?掴んでないの?


 よくわからんけど亀は逃げていく。それを追って豚野郎神様たちも出発する。部下の天使がむにゃむにゃ唱えて、なんたらバブルを身にまとう。これで水中でも呼吸ができるし水圧も大丈夫なんだと思う。


 ぞろぞろと歩いて亀を追いかけます。


 こんなんでいいんだ。立派な神様の最後がこんなんでいいのか。


 まぁ、まだまだ最後じゃないし。竜宮城まで亀を追跡して、そこで一悶着あるはずだ。


「おい、あれ亀間違いだぞ」


「え?…亀間違い?」


「案内役はあっち。手を振ってるだろ」


 隠れてたアユさんが教えてくれる。


「あれ、産卵のために砂を掘ってるんじゃないんですか?」


「それはあっち」


「あ、ヒレの動きが違いますね」


「どうすんだ?追いかけるか?」


「いやぁ〜。無理でしょう。しっぽは掴んだとか言ってましたし。しっぽを掴ませる亀は罠だとも言ってました。どっちにせよ、案内役は成り立ちません」


「そうか。…かいさーん!失敗。解散!お疲れ!」


 亀が手を振って海に帰ってく。亀の個体を見分けろということに無理があるのだ。これは仕方ないことなのだ。


「うん。でもなんとかなりますよ。そもそも子供にいじめられてる亀がみな竜宮城に連れてってくれるとは限りません。神様なんだからそのくらいわかりますよ。魔法も使えるし、自分で竜宮城くらい見つけますよ」


「んー。それで見つかったことないけどな」


「そんなに巧妙に隠されてるんですか?」


「まあね。でも秘密だぞ。実は隠されてないんだ」


「へぇ〜。そうなんですか?実は地上で人間の国として運営されてるとか?」


「秘密秘密。そんな簡単だったらとっくに制圧されてるよ。もっと複雑だぞ。巧妙に隠されてるんだ」


「やっぱり。神様にわからないってことは巧妙に隠されてるってことですよ。すべてひっくるめて巧妙なんです」


「そういうこと。でも無駄になっちゃったな迎撃体制。まあいいのか。天使どもが海底を歩いてる。それだけで十分だからな」


「そういえば、先に竜宮城に移住された方々は幸せにやってるんですかね?ファンクラブの方々です」


「もちろん。最高のもてなしを受けてるぞ」


「よかったですぅ。みんな幸せを見つけてるんですね」


 我々もてくてく帰ります。


「まぁ浮気したら即処刑だけどな」


「それは地上も一緒ですよ。個人情報も保有資産も開示されてあらゆる角度からむしられます。世の中ってそういうものです」


「キーぷんだってそうだぞ?」


「僕はキープくんですから。すでに個人情報も保有資産も開示されていて、あらゆる角度からむしられてます。世の中って厳しいですよ。でも、ようやくミッションの一つをクリアできそうなんです。お祈り百万回から始まって、神殺しまで要求されて、僕は結局大したことしてませんけど、神様選考会は達成できそうです。アユさんはどうです?」


「地上の男どもはだいたい魅了しちゃったからな。残りはキーぷんだけど、キープ主にはルールがある。これがな〜」


「紳士協定ですか。なんか僕には第808夫人までいるらしいですよ」


「とっくに1000人超えてんだろ。いま2000人目が幼女になるか人妻になるかで賭けられてるんだぞ?」


「どっちも結婚できませんよ。なにやってるんですか?どうせ胴元はウォラクさんですよね?口からでまかせで、面白ければ何でもありなんだよな~」


「あ、幼女が勝ってるな。10才以下だって」


 アユさんがオッズ表を見てくれる。払戻率がいいらしく買われてるらしい。


「そんな機能ありましたっけ?公営ギャンブルは諦めたはずなんですけど」


「やってるけどな。これ竜宮城にも持って帰ろうと思うんだ。便利だろ?」


 プリント機能でオッズ表が配られて、世間の噂一覧も日々更新されていく。家計簿や決済機能もあるので当たれば払い戻しがある。


「うーん。まぁ、お役に立つのであれば。確かに、地上と海底をつなぐ架け橋になれたらいいですよね。お互い情報が入ってきたら、いつの間にか仲良くなれそうです。海の底も大変ねえ。とか言われそうです」


「それはよく言われるよ。知らないのか?竜宮ラジオは人気なんだぞ?」


 へぇ〜。そうなんだ。


「ヒイラギさんが配信してるんですか?」


「ヒイラギが乙姫様の悪口を配信してる」


「へぇ〜。そっか、その手があったか」


「いや先輩たちはまずいだろって言ってる」


「でもでもいいですよ。歌もありますし。人魚だからってどうにかなるわけじゃないですし。むしろラミアさんとかドライアドさんとか、どんどん配信したらいいですよ」


「大丈夫かな?強烈なのもくるぞ?人魚の名乗ってる時点で人類の敵だって」


「人類に敵を作った人こそ、人類の敵ですよ。敵と認定するから敵になるんです」


「おぉ。オプティもそれ言ってた。バカだね~。って」


「さすが守護神様。発想が似ちゃいますよね。でも、そういう批判する人がいると味方も増えますよ。よくないですけど」


「敵の敵は味方ってやつだな!」


「いや、うまく言えないですけど。不条理にたたかれてると同情されて味方ができるんです。大概の人は同情しますなんて言ってくれないですけど、いざというとき助けてくれるかもしれないです。いざというときがくるのを防ぐべきなんですけど」


「また頭いいこと言うつもりか?」


「いや。頭よかったらもう少しうまく味方を増やせるはずで…。」


「俺が守ってやるぜ!って言えよ。言ってくれないのか?」


 うーん。言うは易し行うは難しなんだけど。


「はぁ。そこで考えるなよ。すぐ言えないようじゃダメだぞ。何人嫁がいると思ってんだ?私が何番目か言ってみろ」


 うーん。数なんてわからない。名前も顔も知らない人が大半なのだ。


「僕は女性に番号なんて付けません。アユさんはアユさんです」


「それで誤魔化せると思ってるのか?」


「守ってやるとは言えないです。だって僕がリスク要因ですから。でもできることはあるんです。例えば…。」


「例えば?」


「うーん。それがわかれば実践してるんです。プレゼントを贈るにもお小遣いすらないです。誠心誠意キープしてくださいとお願いするくらいしか」


「本当にうんこだな。キーぷんってクソだぞ」


「うーん。まったくもっておっしゃる通りですぅ。改めて誰かを幸せにできる気がしないです。でもそれじゃダメなんです。そもそも普通の女性さえ幸せにできないのに人魚のアユさんになにをしてあげられるのか。王子様の献上は可能ですけども」


「そうだな。キーぷんも国王になったし、そろそろ竜宮城いくか。凱旋しなきゃな」


 それだといまさっき見送った豚野郎神様を追いかけることになる。


「そうですね。一応、結婚してるんだからアユさんのご両親に挨拶すべきですよね。……僕、まだ誰にも挨拶してないです。まずいよなぁ」


「アンヌの親にはしただろ」


「あ。そうでした。お義父さんに会いました。めっちゃ怒られました」


「本当にクソだな。竜宮城いくぞ。こないならここが潮時だぞ」


「はい。ちゃんと挨拶に参ります。豚野郎神様も押し付けましたし、それも謝らないといけないですから」


「ついでみたいに言うなぁ?」


「逆です。ご両親に挨拶して帰りに乙姫様に謝罪しに寄るんです」


「そっちの方が怒られるだろ!」


「うーん。二回いきますか。別日で。亀に悪いかもしれないですけど」


「二度目はないぞ。一度竜宮城に入ったら一生出られないからな」


「それ、挨拶にいけないですよ。困ったなぁ」


「だったら潮時だぞ?キーぷん殺して帰るからな」


「嫌です。それは嫌なんです。最近、欲が出てきたのか、アユさんたちと離れるのが嫌なんです。考えないようにしてるんですけど、誰かといちゃいちゃしてるシーンが過るだけで極めて不快なんです。許容できないんです」


「なんだ。いちゃいちゃしたいのか?私はいつでもいいんだぞ?」


「それが、想像すると気持ち悪くなるんです。ルーさんになんかされてるとかじゃなくて、戦場で本当に酷い男女の営みを見てきて、その頭を吹き飛ばしたりもしてきて、もうダメなんです。だから、いちゃいちゃ以外の幸せを模索します。もっと本質的なところで貢献させてください」


「本質的ってなんだよ?」


「それが、わからんのですぅ。人生経験の少なさが裏目に出ていてですね。日常は神殺しや紛争処理、財政再建に追われていてですね。なんかもう。……潮時だなぁ」


「だろ?だったら竜宮城いこうよ」


「うーん。もう少し時間をください。豚野郎神様が無事に竜宮城に着いてからでも遅くないですし、神様選考会も、すっと通るかわからないですし。もうちょっと責任を果たしてから、いくならみんなでお伺いしたいです。ハルマゲドンで地上から追われる可能性もありますし…。」


 あ。やべぇ。ハルマゲドン対応でみんなに避難してもらってたんだった。


「すいません!忘れてました。もしもーし。ハルマゲドンのリスクは回避されました。無事、乙姫様のもとに旅立っていかれました」


「とっくに聞こえてるよ!それだけ不甲斐ないなら、お前さんこそ竜宮城で根性をたたき直してもらいな!こっちはいてもいなくてもいいんだからね!」


「タニアさ〜ん。厳しいですよぉ。泣いちゃいますよ?緊張の連続だったんですよ?しかも盗み聞きって趣味悪すぎですよ」


「お前さんにプライバシーがあると思うんじゃないよ!まったく恥ずかしいよ。なんでこんなことで怒らなきゃならないんだい?ふざけるんじゃないよ!」


「すいません。がんばりますぅ」


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