第三十四章:限界の先の連携
激しい金属音と、魔物の絶叫が黒岩の渓谷に木霊する。
「黒厳の暗殺蜘蛛」の包囲網は、確実に薄くなっていた。
足元には、レイの大剣によって甲殻を粉砕された蜘蛛の残骸がいくつも転がっている。
しかし、連戦による疲労は、確実に彼らの身体を蝕んでいた。
特に、前線で敵の猛攻をすべて受け止めていたボルグの大盾には、無数の亀裂が走り、その太い腕は小刻みに震えている。
「はぁ、はぁ……っ! クソ、まだ奥から湧き出てきやがる!」
ボルグが息を荒らげながら叫ぶ。
岩の裂け目から、さらに大きな個体が二匹、音もなく姿を現した。
これまでの個体よりも一回り大きく、その前足はまるで黒鉄の槍のように鋭く研ぎ澄まされている。
蜘蛛たちは、ボルグの疲弊を敏感に察知したように、一斉に彼をめがけて突進した。
「ボルグ、下がれっ!」
アレンが叫び、双剣を閃かせて一匹の目を眩ませる。
しかし、もう一匹の槍のような前足が、盾を構え直すのが遅れたボルグの胸元へと真っ直ぐに突き出された。
(間に合え――!)
レイは大地を強く蹴った。
両腕の筋肉が悲鳴を上げている。大剣を握る手のひらのマメが潰れ、じわりと血が滲む。
だが、その痛みが逆に、レイの集中力を極限まで研ぎ澄ませた。
一歩の踏み込み。
頭のてっぺんから爪先まで、一本の強固な芯が通る。
レイは走る勢いのまま、大剣の腹をボルグの前に「滑り込ませた」。
――キィィィィンッ!!!
火花が散り、鼓膜を突き刺すような金属音が響く。
蜘蛛の必殺の突きは、レイが完璧な角度で配置した大剣の重厚な壁によって、完全に軌道を逸らされた。
「レイ……!」
「ボルグさん、アレンさん、今です!」
レイは大剣で敵の攻撃を受け流した反動をそのまま利用し、身体を鋭く反転させた。
質量を殺さず、遠心力のすべてを乗せた横一文字の薙ぎ払い。
――ドガァァンッ!!!
大剣の凶悪な一撃が、蜘蛛の側面を捉え、その巨体を真横の岩壁へと叩きつける。
そこへ、体勢を立て直したアレンの双剣が、目にも留まらぬ速さで追撃を叩き込み、完全に息の根を止めた。
「……やったか?」
アレンが双剣を構えたまま、周囲の岩肌を見渡す。
カサカサという不快な這いずる音は、いつの間にか完全に途絶えていた。
残されたのは、静まり返った黒い渓谷と、激しく肩で息をする三人の冒険者だけだった。
レイは大剣をゆっくりと引き戻し、地面に突き立てて身体を支えた。
全身の筋肉が熱を持ち、激しく脈打っている。
しかし、その表情には、ギルムの廃鉱山で一人で戦い抜いた時とは違う、深い充実感が満ちていた。
仲間を信じ、自らの大剣を盾とし、矛とする。
新天地ルミナスの過酷な地で、レイは冒険者としての真の強さを、また一つその身に刻み込んだのだった。
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レイの大剣使いとしての旅、そして成長を
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