7話 わたしを……
「そのとおりだよ。メイくん........やっぱり君は名探偵だね。いやぁ、まいったまいった」
国王、ギリアンがパチパチと拍手する。
「このくそやろう。わたしが名探偵なことを利用するなんて」
メイははぁ、とため息をついたあと言った。
「なんのことかな?」
リリアナとよく似た笑みを、ギリアンは見せる。
「親子、ほんとにそっくりね。さぁ、早くオドーの居場所を言いなさい」
「........リリアナの肖像画の裏に隠し部屋がある。そこに彼はいるよ」
「そう」
メイはそう相槌をうったあと、ギリアンになにか耳打ちした。
「レビー、ミア。行くわよ。『精霊の世界への入口』を拝むのはあとよ」
メイはスタスタと肖像画の方へ速歩きで歩いていく。
ギリアンは放置でいいのかとレビーが問うが、メイは「いいのよ」と言った。ミアが後ろを見れば、ギリアンは心ここにあらずといった感じでほうけている。
「なにを言ったの?」
「秘密よ」
――メイはいつもそうやってはぐらかすなぁ。『くそやろう』の意味もわからないし。
ミアはメイを追いかけながら思う。
肖像画の前につくとメイは「オドーはこんなところにいたのね」と寂しそうに言う。その姿は目の前の肖像画並に絵になった。―――メイの身だしなみさえ良ければ。
「オダルディさんに会うのにその格好でいいんですか..........?」
レビーが引きつった顔でメイに訊くが、メイは「もうオドーをこんなところにいさせられないわ。わたしの身だしなみなんてどうでもいいでしょう?」と首を傾げる。
「そ、そうなんですけど......」
レビーは困った顔をしたが、メイは構わず肖像画を壁から外す。隠し部屋の入口があらわになる。メイは体を乗り出し、声をかけた。
「オドー、オドー、いるわよね?」
「―――リリー?」
「違うわ。メイよ」
「メイ?」
枝毛だらけの髪と、病的に痩せた体。
彼こそトリリアン王国きっての神童と呼ばれたオダルディ・フィリトレーン・ロード。意外と広いが、手狭な部屋。その部屋で彼は机に向かっていた。
「そうか........」
「早くきがえなさいね。そんな姿見せたくないでしょうからリリーは連れてきてないわ」
優しい笑みで言うメイにオダルディは――
「君の言えたことじゃないだろ」
そう言って、二人は互いに笑い合う。
「メイ!」
ミアの声が聞こえ、オダルディはいるかと尋ねられる。メイは顔を外へ出し、居たわ、と言う。メイはオドーの手を引いて隠し部屋から体を出させる。
「ありがとう……メイ」
◇◇◇
メイが突然リリアナの部屋へ来て、「オドーを助け出せたわ。少しそこで待っていて!」と言ってドタドタと部屋を出て行って一時間近く経っていた。
「メイは本当に『少し』の意味知ってんのかなぁ?」
口からでた言葉が取り繕っていないことからも焦っているのだと改めて思う。
「くそ。本当に遅いな……」
「リリアナ様、お言葉遣い」
どうやら入ってきたリリアナの専属侍女に聞かれてしまったらしい。
「人の部屋に入るときにはノックをしなければならないと言ったのは貴方でしょう?」
「ノックはいたしましたよ。ノックを聞くことも大事です。リリアナ様」
「うっ……はい」
「まぁ、オダルディ様が生きていることがわかったのですから当然かもしれませんが……」
え?という呟きがリリアナの口から漏れる。
「わたしそれ知らない……」
「ガチですか?」
侍女が彼は今体を洗っていると言うと、リリアナはお風呂へと走る。侍女の静止も聞かずに。
オダルディが生きていることはリリアナは知ってはいた。だが、それを知るのは国王親子だけだろう。
おそらく彼を隠したことを知るものはリリアナを除き処分されている。
つまり侍女かそれを知っているということは……
「メイ!」
お風呂場の前、端末をいじっているメイにリリアナは問いかけた。
「オドーが生きていたのね」
10年前と変わらない、優しい碧眼がリリアナを見つめる。
終わったんだ、やっと。
大変だった。
オダルディを生かすことも。
オダルディが生きていると知っていることを知られないことも。
メイを呼ぶことも。
「メイ、オダルディはなんて?」
さあ早く。わたしを断罪して。




