5話 オダルディは生きている
11歳になり、トリリアン王国を離れて数ヶ月後、メイはオダルディの訃報を聞いた。階段から転落して大怪我をし、そのまま……と。
オダルディを失って、リリアナは大丈夫かと思ったが、メイは忙しさからリリアナには手紙を書かなかった。つまり、リリアナとは10年ぶりに会うことになる。
メイはどこか気まずい気持ちと、久しぶりに会えて嬉しいという2つの気持ちを抱えながらトリリアン王国の王都へと向かっていた。
王都に着いた時、メイは驚く。
結界には他の人が穴を修繕した形跡がなかったのだ。穴は開かないはずがない。だって王都の結界は、メイがいた半年間だけでも何十回と穴が開いていたオンボロ結界なのだから。
それでよく、「こんなの結界じゃないわ、ただのザルよ!」とリリアナに言われていたくらいなのに。
しかも、何十回と修繕されて、改良が重ねられていた。––––オダルディの魔力で。
それだけではない。
カイのこともある。カイはまず結界を通り抜ける魔法を使おうとして、通り抜けられなかったと言った。メイはこう思った。
––––オダルディが結界を操作し、カイの侵入を防いだのではないか
あまり知られていないが、結界を通り抜ける魔法はリアルタイムで結界を操作すると防ぐことができる。王都の結界に結界を通り抜ける魔法を防ぐ細工はされていなかった。
メイはオダルディが生きていることを確信した。
「リリアナ、オダルディは生きているわね」
メイがそう言っても、リリアナは淑女の笑みを崩さない。
「メイ様。メイ様が何をおっしゃっているのかわかりませんが、王家の秘宝探し、よろしくお願いしますね」
リリアナはそう言って、背を向けて去っていく。3人の従者がリリアナを心配そうに見つめながら後に続いた。
メイはリリアナが去った後、静かに呟く。
「父親がくそやろうなら、娘もそうと言うわけ?」
それはどう言うことか、とミアが尋ねる。
「そのままの意味よ……あの馬鹿ども」
◇◇◇
「メイ、この本の意味わかりますか?」
あのあと、応接室にもどった。そして国王と王女にもらった本を広げて、ミアが尋ねる。
「なにこの三日坊主どころか数分坊主でやめたような日記は……」
「秘宝探しの手がかりとして陛下と殿下にわたされたじゃないですか、メイ……」
「ギリアンがむかつきすぎて覚えてないわ……」
「ひとの話はちゃんと聞きなさいって言ったのメイじゃなかったっけ?」
あと国王のことは呼び捨てにしちゃダメです、とミアが言えば、メイは何も言えなくなる。メイは縮こまり、本をペラペラと捲っていく。
「どうです。わかりましたか?」
レビーが尋ねると、あっさりとした声が聞こえる。
「まぁ、なんとなく」
「「へ?」」
レビーとミアの気の抜けた声が重なる。
「本当なの?メイ」
「まぁ」
メイは口角を上げた。
「2人とも、これはフィリトレーンにしか解けないようになっているのよ」
メイが解いてみろ、と言って本を差し出す。
「フィリトレーンにしか解けないっていいませんでしたか?」
レビーが呆れた声を出す。
「簡単には、ってことよ」
「難しいほど解きたくなるでしょ!ルーディ」
「それもそうか」
レビーはそう言って本に目を落とした。
「まずフィリトレーンについて考えてみなさい」
ミアは「ふむ」と言うとフィリトレーンについての授業を思い出す。
フィリトーンについて語ろうとすると、トリリアン王国を建国した王家、ムーナ王家について語らなければならない。
あるとき、トリリアン王国をムーナ王家が統治していた頃の話だ。王国の領地にある魔物がよく生まれる森に一際強力な魔物が生まれた。その魔物は「魔王」と呼ばれた。
そのときムーナ王家は少々複雑な事情を抱えていた。
国王は王妃と側妃の2人の妃を娶る。そして生まれたのがブレイブという王子、そして王女。王子は王妃の子。王女は側妃の子だった。
王妃はブレイブを産んで亡くなり、側妃はブレイブの命を狙っていた。そんなときだ。
――神がブレイブを勇者と認めたのは。
側妃はそれに便乗し、ブレイブに魔王討伐を命じた。
魔王討伐時に死亡、ということにすればブレイブの死をいくらでも誤魔化せると考えたのだ。
しかし、ブレイブは帰って来た。
メイとミアの関係は歳の少し離れた友だちという感じです。ミアがメイに敬語を使う描写がどんどん減っていきますよ〜。
レビーはメイに少し遠慮がある感じですね。
今回から行間を広げました。5話より前の話も行間を広げる予定です。
5話まで読んでいただき、本当にありがとうございます。




