第百話
「大分、険しそうだな」
早く目覚めて早速、秘湯の場所へと向かったが辿り着いた先は一切整備されていない山道で自然そのものと言った感じである。探索者として一般人とはかけ離れた身体能力を持つ命だからこそ軽々と歩いているが普通の人間では歩くのすらままならないだろう。
山中を随分と歩いて汗を掻くようになって漸く、それらしき物を見つける。
「年季が入ってる……」
そこは昔ながらの温泉と言った感じで最低限のものしか置かれておらず脱衣所のようなものは無い。周囲に誰も居ないことを確認して服を脱いでかけ湯をして温泉に入る。
「ふぅー……いい湯だ」
全身に染み渡る熱めの温泉で大人ならば一杯やりたくなるだろうなと思いながら大自然の中に佇む温泉を満喫する。すると山リスや猿と言った動物達が温泉に浸かりに来る。
動物たちが温泉に浸かりに来ている様であるが温泉は全く汚れておらず怪我をしている動物も入ってきてみるみる傷が癒えていく。傷を癒す効能があるとは聞いていたが目の前で見せられると驚かされる。
「魔素が籠ってるな」
温泉の源泉とも言える湯をよくよく観察すると魔素が籠っているのが分かる。魔素は良くも悪くも色々な影響を及ぼすものであるが見たところ悪い影響は見られない。
傷を癒している所からポーションの効果に似ているなと思いながら湯を見つめるが魔素が籠っているという事しか分からず命は兎も角、多くの傷を抱えているであろう宍戸なんかは喜びそうだ。
しかし、わざわざ姫路まで呼び寄せるのは酷なので乾燥だけ伝えておこう。
「いい湯だった」
じっくりと温泉を堪能し風呂上りに購入していた冷えたコーヒー牛乳を飲む。キンキンに冷えたコーヒー牛乳が喉を伝って火照った体が内から冷えていく。
「良い所を紹介してもらったな。お礼をしないと」
ダンジョン探索で疲労していた体が活力に漲っておりこんな状態は初めてでありグラスディアの肉を食べた時でもこんなに元気になったことはなったのでこの温泉の効能が凄まじいのが分かる。
この調子ならばダンジョンに挑んでも問題ないだろう。少し、日は経っているが山道を降りて姫路ダンジョンに挑むことにしよう。
「温泉に浸かった後にあの道を下るのか……」
憂鬱な気分になりながらも地図を頼りに山を下っていく。来た道を帰るので割とスムーズに山を下りることが出来てアスファルトの大地に戻ることが出来た。
しかし、ここから近くのバス停に向かうには結構、面倒でタクシーでも拾おうかな。




