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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1253 おじさんなんだかんだで勲章を作ってしまう


「にーははははは! おっはよーございまーす!」


 ――上機嫌。

 ケルシーはいつも以上にニコニコとしていた。

 その胸には、おじさんが贈った勲章が黒い輝きを放っている。

 妹に贈ったのと同じく、リボンで首にかけられるようにしたのだ。


 漆をベースに螺鈿細工で飾られた勲章である。

 大聖樹のデザインがとても良い感じになっていた。

 

「おっはよー!」


 妹もニコニコだ。

 ケルシーと同じく、首から勲章をかけている。

 ミスリルを地に使い、パヴェで装飾した勲章だ。

 

「おー! そーちゃんのもいいな!」


「けるちゃんのもかっこいいね!」


 でしょーとケルシーと妹がニコニコする。

 よほど気に入ったようだ。

 

 二人の様子を無言で見ていた弟は、そっと息を吐く。

 目ざといおじさんは見逃さない。

 

「メルテジオも勲章が欲しいですか?」


 おじさんの問いに、弟はゆっくりと首を横に振った。

 

「姉さま、ボクはいいや」


「遠慮しなくてもいいのですよ?」


「ん~でもなぁ」


 あんまり欲しくなさそうである。

 それが理解できたから、おじさんも追求はしない。

 

「欲しくなったらいつでも言ってくださいな」


「うん。姉さま、ありがとう」


 ニコッと微笑む弟だ。

 首からかけるスタイルは、ちょっと恥ずかしいのかもしれない。


「リーちゃん」


 今度は母親が声をかける。

 

「あれってミスリルを使っているの?」


「ソニアのものはミスリル製ですわね。ケルシーのは大聖樹を使っています」


「ほ……ほおん」


 母親は驚いていた。

 ミスリルはともかくとして大聖樹のことだ。

 

 あれは聖樹国を象徴する神聖な大樹である。

 それを素材として持ち出せるという事実だ。

 

 エルフであっても、なかなかそうはいかないだろう。

 なにせ国の象徴でもあり、信仰の対象でもあるのだから。

 

 確かにおじさんは御子という立場だ。

 エルフたちが信仰する風の大精霊の関係者だと言えるだろう。

 だからと言って――大聖樹を素材として扱えるかという話だ。

 

 母親と同じことを父親も考えていた。

 二人はちょっとだけ視線を交錯させる。

 そして――互いに頷いた。

 

 ――なにも言うまい、と。

 

「リー。本命の勲章はまだ時間がかかりそうかい?」


「ん~そうですわね。本日中には作ってしまう予定ですわ」


「あんまり、やりすぎないようにね」


「いやですわ、お父様ったら。わたくしのことをなんだと思っていますの?」


 おほほほ、と笑うおじさんだ。

 だが、同時にとても嫌な予感がする父親であった。

 

「ソニアとケルシーに作ったものは習作ですから。心配なさらずとも問題ありませんわ」


「う、うん……。リーちゃんのこと信じていいんだね?」


「もちろんですわ!」


 ふんすと鼻を鳴らすおじさんだ。

 こういうときが最も怖い。

 それは父親の経験則である。

 

「よろしければお父様にお母様も勲章をお作りしましょうか?」


「いや……勲章というのは、そうむやみに渡すものではないからね。あの二人の分は習作として扱っておくけど」


「……なるほど。本命の物を作る以上は、あまり勝手なことはできませんか」


 そういうところは素直なおじさんだ。

 ちょっと胸をなでおろす両親であった。

 

「ケルシー。わたくし、今日は学園をお休みしますので伝えておいてくださいな」


「むい! わかったー! 見せびらかしてくる!」


 にははは! と高笑いをする蛮族である。

 ただ、クロリンダが代わりに頷いていたから大丈夫だろう。

 

 朝食を終え、ケルシーを見送り、おじさんは地下の実験室に。

 

「さて、と」


 ここで少し勲章についておさらいしておこう。

 王国では基礎勲章、特別功労勲章、名誉勲章、戦時勲章、大勲章の五つがある。

 

 かんたんに言えば、大勲章以外はどの分野で功績をあげたのか、だ。

 で、大勲章だけはちょっとちがう。

 

 ふつうの功績ではなく、もっと大きな功績をあげたものがもらえるものだ。

 一般的には長年の功績に対して贈られることが多い。

 

 ちなみに今回、おじさんがもらう予定の功績は三つある。

 文化大勲章、戦時大勲章、魔法大勲章だ。

 

 王国にとって便利なものを開発してくれましたねで賞。

 百鬼横行(パレード)で大活躍しましたねで賞。

 とってもすごい魔法を開発してくれましたねで賞。

 

 かんたんに言えば、こんな感じになる。

 

 さて、とおじさんが声をだしたのはデザインをどうするか、だ。

 

 あれこれとデザインを考える。

 ん~と頭をひねりながらようやく決めた。

 

 文化大勲章については大聖樹を使う。

 円形の中に透かし彫りにして、五芒星を描く。

 

 この五芒星の中央に開いた本をデザインのベースとする。

 モデルはトリスメギストスだ。

 

 装飾にかけては磨き抜かれた漆と象嵌(ぞうがん)を使う。

 象嵌は異なる素材をはめこんで装飾性をだす技法のことだ。


 これはケルシーに贈ったものを元にしている。

 螺鈿というのも象嵌のひとつだから。

 

 五芒星の五つの先端には真珠を配置する。

 本の中央部分にはサファイアを埋め込む。

 陶器のような艶がでるベースに、配置された象嵌がとても映える。

 

 リボンには若草色を採用した。

 それに金の縁取りを使う。

  

「はいやー」


 デザインが決まれば、あとは錬成魔法で一発だ。

 おじさんのイメージどおりのものができあがった。

 とても立派な勲章である。

 

 次に戦時大勲章だ。

 こちらは名前のとおり、ちょっと無骨な感じをだしたい。

 なので、あえてマルタ十字を選択する。

 

 (やじり)のようなV字の先端が中央に集まった形の十字だ。

 中央にはメダイヨンを配置する。

 そこには高浮き彫りにした立体的なグリフォンを置く。

 

 グリフォンは王家の象徴ともされる幻獣である。

 このグリフォンについてはオリハルコン製にしておく。

 見栄えがいいから。

 

 敢えてマルタ十字の部分は黒金に赤銅で縁取りをいれる。

 ただ、なんとなく寂しいのでVの開いた部分に剣の先端を付け加えた。

 

「ん~なかなかこれは格好良いですわね」


「ですわね! 素晴らしいです!」


 リボンは深紅をベースにして、黒の双線を入れる。

 なかなか良い感じである。

 ちょっとあれだ、ドイツ軍ぽいと思うおじさんだ。

 

「次にいきましょう」


 最後は魔法大勲章である。

 ベースとするのは八芒星――オクタグラム。

 その中央に幾何学模様の魔法陣だ。


 魔力を流せば、本当に魔法が発動するようにも作れる。

 が、わざわざ物騒なものを作る意味もないだろう。

 

 なので、おじさんは敢えて魔法が発動しないように弄って作る。

 ミスリルを贅沢に使いつつ、中央には宝珠を配置した。

 月を思わせるような宝珠である。

 

 リボンにはロイヤルパープルをベースに銀を散らす。

 

 こちらも良い感じだ。

 なんだかんだで勲章を作り終える。

 さらに、この勲章を納める化粧箱も作っておく。

 

「むふふ。我ながらいいものができたと思います」


「ですわね!」


 侍女もちょっと興奮していた。

 勲章などというものに興味はなかったが、これならちょっと欲しい。

 

「ん~サイラカーヤにはこちらを渡しておきましょう」


 勲章というほど大きなものではない。

 ピンバッジのようなものだ。

 

 戦時大勲章のようにハデではない。

 が、同じくマルタ十字をベースとしたものである。

 

「よろしいのですか?」


「かまいません。サイラカーヤにもご褒美ですわ」


「ありがとうございます! お嬢様!」


 大喜びの侍女である。

 さっそく、自分で胸の部分にバッジをつけた。

 むふふ、と悪い笑みをうかべている。

 

「さ、ちょっとお母様に確認をしてもらいましょう」


「それがいいですわね! 奥様の審美眼なら問題ありませんもの」


 サロンでのんびりとしていた母親である。

 おじさんがニコニコとしながら、確認して欲しいと勲章をだしてきた。

 

 それを一目見て思う。

 ……こんな国宝になるようなものをかんたんに作ってくるなんて。

 

「リーちゃん、とってもいいわ。特にこのオリハルコンのグリフォンがステキね」


「お母様もそう思いますか!」


 褒められてにっこりのおじさんだ。

 

「そうね、これは当日まで内緒にしておきましょう。きっと驚くわよ」


 なるほど、とおじさんは納得した。

 要は国王たちにはサプライズというわけだ。

 

 だが――そのとき母親がとっても悪い表情をしていたことには気づかなかった。


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