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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1283/1287

1249 おじさんのライブはとんでもないことになる


 リー=アーリーチャー・カラセベド=クェワ。

 超絶美少女である。

 

 その人気は領都において、もはや限界突破。

 リー様と言えば、猫もにゃあと鳴く。

 と――もはや意味のわからない言葉まで流行る始末だ。

 

 そんなおじさんが宴を催すというお触れがでた。

 

 がたっと音を鳴らして席を立つ者が何人いただろうか。

 後のことだが、そのがたっと言う音だけで、地震いがしたとかいう噂もある。

 

 そのくらい人気なのだ。

 おじさんは。

 

 だから――領都に住まう民は仕事もほっぽりだした。

 おじさんの元へ駆けつけるために。

 

 リー様のために!

 

 その熱量は大したものであった。

 老いも若きも男も女も。

 

 皆がはせ参じたのだ。

 次代を担うカラセベド公爵家の長女のもとに。

 

「どんどとっと! いくぞー」


 どんどとっと、どんどとっと!

 単調ではあるが、心地よいリズムの中でケルシーが踊る。

 

 エルフの伝統的な踊りだということは説明があった。

 でっかい映像装置に映るケルシーは実に楽しそうだ。

 

 単調なリズムだからこそ、わかりやすい。

 踊るほどのスペースはない。

 

 だが、その場で跳ねることはできる。

 誰が始めたものかわからない。

 

 ただ、いつの間にか多くの民衆がその場で飛び跳ねていた。

 

「アロロロロロ!」


 ケルシーが叫ぶ。

 一回目は訳がわからなかった。

 だが――二回目からはわかる。

 

 なにせシンプルなリズムだから。

 タイミングをはかって、皆が声を合わせる。

 

「アロロロロロ!」


 ――そう。

 領都の住民は大層ノリがいいのである。

 

 客席は十分に温まった。

 実にいい前座である。

 

 適当なところで切り上げる聖女だ。

 このドラムは彼女が叩いていたのである。

 

 ケルシーが時間を稼いだからか。

 既に競馬場は満員御礼の状態だ。

 

 いや、入りきらない民衆は競馬場の外にまでいる。

 結果として騎士までも駆り出されて、警備員をする有様だ。

 

「で、リー。どうするの?」


「ここからが本番ですわね! エーリカは演奏しますか?」


「ん~やめとく。今回は賑やかしでいいや。ってか目立ってやるもんに!」


「もんに!」


 ケルシーも元気いっぱいのようだ。

 というか目立ちたがりだから。

 

「お嬢様、ここは四天貴族からがよろしいかと」


 あれは盛り上がる。

 異論はないおじさんだ。

 

「では、そうしましょう。皆も準備はよろしいですか?」


 はい、と元気のいい返事があった。

 このような大観衆の前で演奏ができるのだ。

 それは初めての経験である。

 

 が――実にやりがいがあると全員が思っていた。

 

 ちなみに薔薇乙女十字団(ローゼンクロイツ)が演奏できるものは、すべて使用人たちも演奏できる。

 おじさんが楽譜を共有していたからだ。

 

「よろしい。心を掴みにいきますわよ! 総員、奮励努力せよ、ですわ!」


 おじさんがバイオリンの魔楽器を持つ。

 最初はゆったりとしたワルツのようなイメージ。

 

「ぎぃいいいいやああああああ!」


 おじさんの登場に競馬場全体が揺れる。

 少し離れた場所にある領都にまでその声は轟いたという。

 

「リー様ああああああ!」


 にこりと微笑むおじさん。

 その表情に思わず、昇天しそうなものがでるくらいだ。

 

 おじさんのソロから入る。

 前奏の部分が終わると、各楽器が入ってきた。

 一気にテンポもアップして、切なくて哀愁のあるメロディーが響く。

 

「み・な・ぎ・っ・て・きたー!」


 聖女とケルシーが叫んだ。

 二人が舞台の前に踊りでる。

 なんだかよくわからない踊りをしている二人だ。

 

 どんどこ曲は進んで、競馬場は大賑わいである。

 

「リー、そろそろ歌ものいこうよ」


 聖女が提案する。

 

「エーリカが歌いますか?」


「うんにゃ! ダメ! 今日は歌わない! 月下のノクターンいこう!」


 聖女のリクエストに頷くおじさんだ。

 ものすごくゴシックな曲である。

 

 ボーカルは当然だがおじさんだ。

 

 聖女とケルシーが手を取り合って踊る。

 くるくる回りながら。

 

「次、火の鳥!」


 聖女からリクエストがでる。

 即座に対応できるカラセベド公爵家の使用人たちも大したものだ。

 いくら楽譜が頭に入っているとしても。

 

 なんだかんだで全十五曲。

 

 すべてが終わって、おじさんが言う。

 

「皆、楽しめましたか?」


「は~い! 最高でしたー!」


 観客席から声が返ってきた。

 なんだかそのノリの良さに笑ってしまうおじさんだ。

 

「では、今日はもうおしまいですわ。ありがとう!」


 深くお辞儀をするおじさんだ。

 そして――蛮族たちを呼ぶ。

 使用人たちもだ。

 

 おじさんを中心に右にケルシー、左に聖女。

 さらにその先には使用人たちが手を繋いで、横一列に。

 

「いいですかー! 皆も隣の人と手を繋いで」


 せーの、で跳びますわよ。

 その声で観客が隣の人と手を繋いでいく。


「せーの!」


 高く、高く跳ねるおじさんだ。

 ちょっとテンションが上がっていたのである。

 その高さにちょっとついていけない蛮族たちだ。

 

「ちょっと、リー。跳びすぎ!」


「跳びすぎ!」


「あら、ごめんあそばせ」


 おほほほ、と笑うおじさんだ。

 そして――ぱちんと指を鳴らす。

 

 舞台が暗幕に包まれたようになる。

 その上で転移した。

 

「リー様ああああああ! 最高に楽しかったあああああ!」


 ぱちぱちと拍手が鳴る。

 地鳴りのような声が何度も響いた。

 

 それは歓喜の声だ。

 おじさんに対する感謝の声でもある。


 公爵家の私的スペースだ。

 転移してきたおじさんたちを出迎えた祖父母が笑っていた。

 

「いい演奏じゃったな」


「これまでの王国にはない新しいものだったけど……それが良かったね」


 祖父母はおじさんを褒める。

 そして――使用人たちにも言う。

 

「皆、ご苦労じゃった。素晴らしい演奏であった。後ほど褒賞をとらせよう」


「ありがたき幸せ」


 というより他はない。

 本音では褒賞など要らないと思っていた使用人たちだ。

 だって、自分たちもすごく楽しめたのだから。

 

 あんな大観衆の前で演奏ができただけではない。

 自分たちの演奏に聴き入ってくれた。

 そして――ものすごい歓声が届いたのだから。


 充実感というか、達成感というか。

 中には楽団への所属を考えていた者もいるのだ。

 それは諦めていた夢を達成できたことにある。

 

 少し形はちがったとしても。

 心に満ちる感情は嘘ではなかった。


「いやーえがったなあ」


 なぜか訛る聖女だ。

 ソファにどすんと座る。

 汗だくだ。

 

 ケルシーも汗だくになっていた。

 ソファに座って、くぴくぴと水を飲んでいる。

 

「大満足!」


 聖女も納得できたようである。


「それは良かったですわね」


「うん。リーのお陰、ありがと」


「どういたしまして。わたくしも楽しめましたから」


 うんうん、と頷く祖母である。

 そして――言った。

 

「リー、次の演奏会はどうするんだい?」


「え?」


「え?」


 おじさん予想外のことを言われてしまった。

 祖母もそんな返答になるとも思っていなかったのだ。

 なにせここまで巻きこんだイベントになったのだから。

 

「第二回もあるのですか?」


「そりゃあそうだよ。もうやらないなんて言えるかい?」


 ……。

 今もまだ観客は残っている。

 そして――リー様、リー様と声は続いているのだ。

 

「それに……その服とか売りにだしたら大儲けじゃないか」


「がっぽがっぽ!」


 聖女がケタケタと笑う。

 ケルシーも続く。

 

「がっぽがっぽ!」


「よくわかってるじゃないか、二人とも!」


「いえええぇええええい」


 久しぶりに褒められて、ムダにテンションが上がる蛮族たちであった。


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