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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1245 おじさんの作った階層にハマる蛮族たち


「にーははははは!」


 蛮族たちの高笑いがダンジョンに響く。

 二人は腰に手を当てて、上機嫌だ。

 

「ワクワクするじゃなーい!」


「するじゃなーい!」


 蛮族たちは学園迷宮の新しい階層にいた。

 いや、蛮族だけではない。

 おじさんのクラスメイトは全員だ。

 

 コンセプトから具体案がでてしまえば早い。

 おじさんの魔力によるごり押しが通用するからだ。

 

 デメテルを参謀に、おじさんはあっという間に作り上げてしまった。

 新しい階層を。

 

 今回はそのテストである。

 

「班分けはいつものようにしてくださいな」


 四人いる男子で一つの班だ。

 女子はおじさんが抜けても十五人いる。

 なので、四人・四人・五人で班分けだ。

 

「ただし、今回はエーリカとケルシーを同じ班にしてくださいな」


 はい、と返事が返ってくる。

 それに対して頷くおじさんだ。

 

「さて、今回の新しい階層は戦闘もありますが、それが主題ではないので十分に気をつけてくださいな」


『ましゅたー』


 ディーパから連絡が入る。

 おっと忘れていたという表情になるおじさんだ。

 

「あ、そうでしたわね。今回の階層は偶数のパーティーでないと挑戦できないのでした。さて、どうしましょうか」


「……お嬢様、私が入りましょうか?」


「ん~サイラカーヤだとダメですわね」


 侍女の実力が抽んでているということ。

 加えて、侍女が班のリーダーになってしまうことが問題だ。

 なにせ、新しい階層は揉めるのが前提だから。

 

「そうですわね、ルルエラ先輩かキルスティ先輩に入っていただきましょうか」


 ん~と目を閉じて集中するおじさんだ。

 それぞれの魔力を探っているのである。

 

 キルスティにしても、ルルエラにしても魔力量が多い。

 それにおじさんは個々人の魔力のちがいもわかるようになっている。

 特に親しくしている人間なら、百発百中だ。


「……見つけましたわ。さて、これはキルスティ先輩ですわね。近くには……学園長がいますわね。ん~少々面倒なことになりそうですが……」


 ぱちんと指を弾くおじさんだ。

 同時にキルスティが迷宮の新しい階層に出現する。

 引き寄せの魔法……いや、召喚魔法に近いかもしれない。

 

「あえええ!?」


 驚いたキルスティが周囲をキョロキョロと見ている。

 そして――犯人に目星をつけた。

 ニコニコと微笑むおじさんだ。

 

「キルスティ先輩、失礼いたしました。少々お付き合いいただきたいことがありまして……」


「……ええと、なんとなく状況は察したのだけれど」


 男子もいる。

 女子組も全員いる。

 

 石壁で組まれたエントランス。

 その中央には転移陣。

 なんだかキラキラと光る石柱が光源になっている場所。

 

 ここは迷宮と当たりを付けるのも難しくない。

 

「新しい階層が出現しまして。そのことでご協力願えないか、と。今回の階層は偶数のパーティーでしか挑戦できないようですから」


「……なるほど。協力してもいいのだけど、後で曾祖父(おじい)様に説明をしてもらえるかしら?」


「もちろんですわ」


 ニコリと微笑むおじさんだ。

 なぜ、おじさんが参加しないのか。

 その理由はわからない。

 

 ただ、キルスティは察したのである。

 

「なら、エーリカとケルシー。それにキルスティ先輩とパティでいいですか?」


 アルベルタ嬢が班分けを提案した。

 

「いいでしょう。エーリカ、ケルシー、パティ。よろしくね!」


「こちらこそなのです!」


「任せんしゃい!」


「にーははははは!」


 蛮族たちも了承したようである。

 再び、おじさんが指を鳴らす。

 

 キルスティが冒険者スタイルに変わっていた。

 皮革製の装備までついている仕様だ。

 さすがに制服のままでは迷宮にふさわしくない。

 

「では、キルスティ先輩の班からお願いしますわね!」


 おじさんの鶴の一声で決まりだ。

 四人が転移陣に移動して、姿を消す。

 同時に通信が入った。

 

『ましゅたー。予定どおりでしゅ』


『ご苦労様』


 ディーパを労うおじさんであった。

 

 一方でキルスティ班が転移した先は、石造りの部屋であった。

 だいたい教室と同じくらいの広さだろうか。

 

 聖女たちとは反対側の壁に扉がある。

 そこが出口になるのだろう。

 

 周囲をしっかり警戒する蛮族たちである。

 おふざけをしていても、そこはそれ。

 迷宮に入れば、自然と身体が動く。

 

「ん~この部屋はどういう仕掛けなのです?」


 パトリーシア嬢が周囲を確認した後で部屋の真ん中辺りに進む。

 そこに台座があったからだ。

 

「パティ、なんて書いてあるの?」


 聖女が好奇心から確認をとる。

 

「ええと……ここは淑女の部屋と書いてあるです」


「……淑女の部屋」


「奥の扉から進むには、指定された礼儀作法を行なう必要があるのです」


「……れ、礼儀作法」


 聖女が絶句した。

 ケルシーはぽかーんとなっている。

 

「リ、リリリ、リー!」


 聖女が叫ぶ。

 

「やってくれるじゃなあい!? まさかダンジョンで礼儀作法だなんて!」


「ムリに決まってるじゃなあい!」


 聖女の言葉を継ぐようにケルシーが大声をあげた。

 蛮族たちが大の苦手とする分野である。

 

「礼儀作法ですか」


 さすがにキルスティは余裕だ。

 聖女の身代わりを務めただけはある。

 

「どの程度を求められるかはわからないのです。ただまぁ学園の生徒なら攻略できて当然なのです!」


 パトリーシア嬢も自信満々だ。

 不安そうに目を忙しなく動かす蛮族たち。

 

「ん~ここに魔力を流すようなのです」


 台座に刻まれた文面の端に宝珠があったのだ。

 それに手を置いて、魔力を流すパトリーシア嬢である。

 

 ぶぅんという音とともに、中空に画面が表示された。

 

『指定された礼儀作法を行え。四人連続で正解できれば扉の鍵が開く。ただし指定された課題に挑戦できるのは一人だけ。全員が挑戦して合格する必要がある。課題に合格した者は、他の課題に挑むことはできない。失敗すれば……』


 という文面が表示された。

 

『理解したら、課題開始と記された部分に魔力を流すこと』


「ちょ! どれだけ高難易度なのよ!」


 キルスティが叫ぶ。

 

「にーははははは! これだから先輩蛮族は!」


 聖女が言う。

 

「礼儀作法がなっとらんなー」


 ケルシーも追従する。

 

「あんたたち用の課題でしょうが! 誰が先輩蛮族ですか!」


「あんだとー! 一発で合格してやるもんに!」


「もんに!」


 聖女とケルシーの蛮族コンビがハイタッチをかわす。

 なぜそんなにも自信があるのか、訳が分からないキルスティだ。

 

「魔力を流すのですよ」


 付き合っていられないとばかりに魔力を流す。

 すると画面が変わって、課題が提示された。

 

『入室時の作法を示せ』


 同時に地面から扉がにょきとはえてくる。

 この扉でやれということだろう。


「……なるほど。このくらいの難易度ならかんたんなのです。エーリカかケルシーが挑戦するといいのです」


「な!? あ、アタシたちにはかんたん過ぎるわよね、ケルシー?」


「そうそう。あーしたちにはかんたん。だからパティがやるといい」


 どうにかこうにかなすりつけようとする蛮族たちだ。

 しかし、だ。

 

 ルールにある。

 課題に合格した者は他の課題にチャレンジできないのだ。

 

「かんたんだと言うのなら、実力を見せて欲しいのです!」


 パトリーシア嬢のカウンターが見事に決まった。

 

「や、やったらああ! そこまで言うなら、黙って見てなさいな!」


 聖女が扉の前に進む。

 ごんごんと二回扉を叩く。

 

「おるかー! リーはおるかー!」


 と、扉の取っ手を握って開く。

 

「にーははははは! 完璧!」


 何も起こらないので聖女が勝ち誇った。

 だが、パトリーシア嬢とキルスティは二人してため息をつく。

 そして――頭を抱えてしまう。

 

 同時に、ぶっぶーと音が流れる。

 ぶぅんと音がして、映像が出現した。

 

「げええええ! し、ししし、師匠!」


 そう。

 おじさんちの侍女である。

 だが、見えているのは聖女だけのようだ。

 

『無礼!』


 ごちーんと聖女の頭に鉄拳が落ちた。

 みぎゃあああとのたうち回る聖女だ。

 

 幻影の侍女が姿を消した。

 聖女は頭を押さえて、のたうち回っている。

 

「い、いったい何が?」


 意味がわからないキルスティだ。

 

「……たぶん、作法に失敗すると幻影で攻撃されるです」


 正確に見抜いていたパトリーシア嬢である。

 それを聞いて、顔を青くするケルシーだ。

 

「ケルシー、かんたんだと言ったのです!」


「い、言ってないもんに! あーしは難しいって言った!」


 エルフ嘘つかない。

 と、思い切り嘘をつくケルシーだ。

 

「……まぁそれでいいのです? 誇り高いエルフは?」


 パトリーシア嬢の煽りにぐぬぬとなるケルシーだ。

 だが、蛮族は蛮勇の持ち主なのである。

 

「いったらあああ! あーしの生き様、見ておくんだぞう」


 扉の前に立つ。

 そして――ごんと一回叩く。

 

「リー! 入るねー!」


 がちゃんこと扉を開けるケルシーだ。

 またもや御令嬢二人がため息を吐く。

 

「げええええ! 師匠! ちがう、ちがうって!」


 なにもない空中にむかって、ジタバタするケルシーだ。

 そして――逃げだそうとするが、その足がとまった。


「な、なにをするだー!」


 その数瞬後、ケルシーも叫び声をあげ、ばたりと地面に倒れてしまう。


「……なんだかとっても恐ろしい迷宮なのかしら」


「う~ん。それはあの二人にとってなのです」


「だよねえ……今回はここで足止めみたいだけど」


「攻略できる希望がまったくないのです」


 まともな御令嬢二人は思う。

 入室時の礼儀くらいは覚えておいて欲しい、と。

 

 正解は三回のノックの後に、しばし待つ、入室の許可が出てから扉を開く。

 

 このくらいは基礎中の基礎なのだから。


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