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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1241 おじさんは学園長とお話するも……


 明けて翌日のことである。

 おじさんたちは颯爽と学園を歩いていた。

 

 背にはためくは薔薇乙女十字団(ローゼンクロイツ)のマントだ。

 鮮やかな赤で刺繍されたバラが美しい。

 なかなかに格好いいのだ。

 

 それと同時に威厳があった。

 廊下ですれちがう学生たちは、スッと脇に退いて頭を軽く下げる。

 自然とそうしてしまうのだ。

 

 同級生だろうが、先輩だろうが関係ない。

 なんだったら講師や助講師までもがそうする。

 

 おじさんはニコニコと愛想を振りまいていた。

 どうにも慣れないのだ。

 この扱いが。

 

 だって、中の人は小市民だから。

 もっとふつうにして欲しいのだ。

 

 ただまぁ今はうるさいのがおじさんの後ろに控えている。

 蛮族たちばかりではない。

 狂信者の会もいるのだ。

 

 だから、皆が伏し目がちになり、目を合わせない。

 うざ絡みされるのがわかっているから。

 

「でごでごでごでごでんでんでーん」


 聖女がなにか口ずさむ。

 

「エーリカ、それはあの知能指数が下がる歌なのです」


「ちがわい! なんで知能指数が下げるのよ? デバフの効果でもあるっての?! イドブレイクか!」


 さすがにデバフとか言われてもわからないパトリーシア嬢だ。

 イドブレイクとか、さっぱりである。

 

「まったく。エーリカは偶に訳の分からないことを言うのです」


 そんなこんなで教室に到着する一行だ。

 教室に入ると、男子組からお礼を言われるおじさんである。

 昨日は世話になった、と。

 

 ちなみに男子組は帰宅したが、女子組は宿泊していった。

 聖女はもはやおじさんちに泊まることが多いくらいだ。

 そのくらい入り浸っている。

 

「お気になさらず。あなたたちもなにかあれば仰ってくださいな。できるだけのことはしますので」


 おじさんは鬼の子ではない。

 男子だって分け隔てなく接する。

 だが、そんなおじさんの優しさが裏目にでることだってあるのだ。

 

 現に狂信者の会がおじさんの後ろで鋭い視線を向けているのだから。

 もちろんその意味を十二分に把握した上で、男子組は首肯するのであった。

 

「おー今日も全員揃ってるなー」


 男性講師が入ってくるなり言う。

 

「リー=アーリーチャー・カラセベド=クェワは学園長のところに行ってくれるかー」


「昨日の件ですわね」


「まぁそんなに話すことはないと思うがなー。いちおうってことでー」


「承知いたしました。では、本日はバーマン先生が講義をするということでよろしいのですか?」


「残念なことにそうだなー」


 もはや職場放棄するレベルのことをしれっという男性講師だ。

 あれこれと忙しいのはわかる。

 が、そこはこうもうちょっと言い方というものがあるだろう。

 

「あーしも学園長のところに行く!」


 がたん、と椅子を鳴らしてケルシーが立ち上がった。

 

「ダメに決まってるだろー」


「なんでさー」


「いや、これから講義あるしー」


「つまんないじゃん!」


 身も蓋もないことを口走るケルシーだ。

 さすがにちょっと顔を引き攣らせる男性講師である。

 なにもそこまで言わなくても、という話だ。

 

「いーから、あんたは座ってなさいな」


 聖女がケルシーの腕を掴んで引っ張る。

 

「ん~絶対あっちの方が面白そうなのに!」


「師匠にまた特訓させられるわよ?」


「はい! 座ります!」


 恐ろしく素早い掌返しであった。

 やはり侍女の恐ろしさは蛮族にも通じているのだ。

 

「ということで、わたくしはちょっと行ってまいりますわ」


「行ってらっしゃいませ」


 と蛮族たち以外が声を合わせた。

 その声を背におじさんは教室を後にする。

 

「それじゃあ今日は算数の授業なー」


「さんすうきらーい!」


 聖女とケルシーの声が廊下にまで響くのであった。

 

「で、どういうことですの?」


 学園長室に腰を落ち着けたおじさんだ。

 テーブルに用意されたお茶をのむ。

 

「まぁいちおう聞き取りということじゃな」


 ほっほっほ、と学園長は笑っていた。

 おじさんも知っている情報はすべて報告する。

 

 と言っても、大したことはないのだ。

 なにせ動こうとしたら冒険者組合から釘を刺されたのだから。

 

「……ということですわね」


「ふむぅ……まぁそうなるわな」


 学園長としては当然の帰結だったのだろう。

 なにせ冒険者たちの間で、流行っている違法煙草のことなのだから。

 そりゃあ、あちらにだって面子はあるのだ。

 

「既に東門の売人は捕縛したという話もでていますわね」


「それも当然じゃろうな。ま、リーよ。今回は我慢じゃな」


「今から横槍を入れようとは思いません。ですが、わたくしの身内に手を出されたら黙っていられませんわね」


「気持ちはわかるぞい」


 のはははと学園長が高笑いをする。

 

「ま、その件は今のところ手出しする気はありませんので、ご安心を。さて、ビブリオバトルの方はどうですの?」


「うむ。まぁそれが好評を博しておってな。貴族の間でもかなり乗り気になっておるな」


「皆さん、お好きですこと」


 おほほほ、と笑うおじさんだ。

 なんだかんだ言っても、自分の修めた知識を披露するのは楽しい。

 

 王国貴族はどちらかと言えば、武に偏っている部分がある。

 こうした知的なバトルみたいなものは少なかったのだ。

 つまり――こうした機会に飢えていたとも言えるだろう。

 

「最近は学園の図書棟を利用したいという貴族も多くてな」


「ならば――いっそのこと学園内のビブリオバトルは闘技場で大々的に行いますか?」


「うむ。その方向で考えておる。実際に見た方が早い部分もあるじゃろうし」


「わたくしとしてはどちらでも構いませんわ」


「あまり今回の話は乗り気ではないのかな?」


 ちょっといつもと違うおじさんの返答に戸惑う学園長だ。


「いえ、そういうことではありません。今回はアリィたちに任せていますので」


「……経験を積ませようということか」


 こくんと頷くおじさんだ。

 なにせ三学期最後の大きなイベントになる。

 これが終われば、相談役の三人も卒業だ。

 

 となると――学年が上がれば頼る者がいなくなる。

 現状ではおじさんたちが学生会を仕切るのだから。

 

 もちろん、それを見越してキルスティたちも色々と教えてはいる。

 幸いなのは講師としてだが、彼女が学園に残ることだろう。

 今よりは関わりが薄れるだろうが、それでも相談できる者がいるのは心強い。

 

 あと、ちょっととんちんかんなところもあるが、ルルエラだっている。

 

「ですので、わたくしはなるべく手出しをしないようにしますので」


「ふむ。それがいいじゃろう」


 ずずずとほうじ茶を啜る学園長だ。

 以前、おじさんが贈った備前焼の湯飲みが気に入ったようである。


「ところで、リーよ。少し聞いておきたいんじゃがな」


「なんでしょう」


「学年が上がる前の休暇はなにか予定が入っておるのか?」


「今のところはなにも。恐らくですがお祖母様のところで、わたくしも経験を積んでおくことになるかと思いますが」


「ハリエット様か……まぁそちらは問題なさそうじゃな」


「なにか御用がありますの?」


「うむ。ちと、うちの領地にある迷宮に行ってみんかの?」


「面白そうな話ですわね」


「話は聞いておるのだ。ラケーリヌの図書迷宮にも行ったのであろう?」


「ええ……まだ攻略の途中ですけど」


「うちの領地にも色々と迷宮はあるからの。どのみち、リーには迷宮許可証が出ておるから、王国内ならどこでも入れるじゃろうし」


「そうでしたわね。……ああ、迷宮と言えばですよ」


 おじさんが言う。

 

「しばらくはミグノ小湖付近は使えませんでしょう? そこで代わりとなる場所をわたくしが用意しておきますわ」


 ん? となる学園長だ。

 

「どういうことかの?」


「学園迷宮があるでしょう? あそこの転移先に別の場所を追加するということですわね」


 ああ――と思う学園長だ。

 そうだ、すっかり忘れていた。

 学園迷宮はおじさんが作ったことを。

 

「はうあ! 閃いたぞい!」


「……なんですの、急に」


 ぬっふっふっふと怪しげな顔で笑う学園長だ。

 

「これで色々と解決できるやもしれん。リー! ワシはちと王城に行ってくる!」


「いったいどうしたのですか?」


「いや、リーの昇進の件でな、ずっと頭を悩ませておったのじゃよ」


「わたくし、昇進とかしたくないのですけど」


「いいや、してもらわねば困る! リーや、すまんがちと行ってくる!」


 どたばたと退室していく学園長だ。

 おじさんはぽつんと残される。

 

「……やれやれですわね」


 のんびりとお茶を飲む。

 なんのことかわからない。

 しかし、あれが蛮族の親玉といわれる所以なのだ、と思うおじさんであった。


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