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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1273/1279

1239 おじさん不在の冒険者組合から嵐が去っていく


 とんとん、と組合長の腰を叩く受付嬢。

 当の組合長は四つん這いになっている。

 

 ああ、とか、うう……とか言いながら。

 

「……ということです。なので、シャルワールという若手の冒険者は私が見ますので手出し無用ですわ」


「おま……そりゃあねえだろう? あいつは……有望株だぞ?」


 途中途中で息切れが入る。

 まだ、股間を蹴られたダメージから回復できていないのだ。


 ちなみに組合長も侍女の現役時代を知っている人物である。

 侍女の格好をしていたので、うっかり近づいてしまったのだ。

 それが運の尽きであった。


「知りませんね。なら、今からもう一戦といきますか?」


「……わかった。そっちで責任もって面倒見てくれよ?」


「言われるまでもありませんわね」


 ガイーアは思った。

 あれ? 話がちがってきてないか、と。

 

 確かお嬢様は先に本人に了解を取れって仰ってたような。

 それがもはや既成事実になってしまっている。

 

 が――ガイーアはできる男だ。

 ウドゥナチャとはちがう。

 余計なことを言えば、自分もまた床をのたうつことになる。

 それが理解できているから、なにも言わなかった。

 

 ただ――シャルワールという若手の冒険者が哀れだ、と。

 

「ほおん……サイラカーヤ、お前、カラセベド公爵家の紐付きになってんの?」


 黙って事の成り行きを見守っていたマッデンが口を開いた。


「いいえ。私はリーお嬢様個人にお仕えしていますので」


「よくわからねえな」


「わからなくてけっこうです」


 ぎゃはははと笑うマッデンだ。

 で、今度は自分の番と言わんばかりに口を開く。

 

「組合長。ちょうどさっきの話に出てた件なんだけどよ」


 とんとんと腰を叩く受付嬢。

 それに合わせて息を吐く組合長。

 

「オレも春からそっちの学校の講師になんねえかって誘われてんだわ」


「なぬうう!」


 思わず、顔をあげる組合長だ。

 

「で、今日はその挨拶にきたってこった」


「マッデン! お前も行くってのか!」


「いや、面白そうだしよ」


 ちらりと侍女を見るマッデンだ。

 

「あのサイラカーヤが心酔するリーお嬢様ってのが絡んでるんだぜ? 是非とも一度は顔を合わせてみてえじゃねえかよ」


「お嬢様に会わせるわけないでしょうが」


 吐き捨てる侍女だ。

 

「いやよ、お前らちょっと自由過ぎんだろ? 王都の組合がすっかすかになっちまうだろうがよ」


「しらん」


 マッデンが言う。

 それはそのとおりだと頷く侍女である。

 

「後輩の育成が足りてませんわね」


「うるせえよ。オレだって頭悩ませんてんだよ」


 組合長が悪態をつく。

 四つん這いのまま、腰をとんとんされながら。

 まるで格好がつかない。

 

「なぁなぁ……オレもちょっと聞いていいか?」


 軽い調子で言うウドゥナチャだ。

 

「ああん? 誰だよ、お前は」


 組合長が聞く。


「ああ――オレはウッド。そこの侍女さんにお世話になってる冒険者なんだけどさ」


 余計なことは言うなと視線を向ける侍女だ。

 

「なあ――あいつらこんなもん持ってたけどよ。これって空落ちじゃねえの?」


 ガイーアに絡んできた酔っ払いの冒険者たちだ。

 ぶちのめした後に、ごそごそと持ち物検査をしていたのである。

 

 ウドゥナチャの手には焦げ茶色をした葉巻のようなものがあった。

 それも五本程度。

 

 だいたい十センチくらいの長さだろうか。

 いわゆる小型葉巻のサイズ感だ。

 

「う……あいつら!」


 組合長が顔をむける。

 床で大の字になっている中堅どころの冒険者たちを見る。

 

 だいたい中堅でも上の方になると、少し金に余裕ができてくるのだ。

 その金でこういう悪い遊びをする者だっている。

 

「で、どこまで進んでんのさ?」


 捜査がという話である。

 

「なーんで部外者にそんな話をしなくちゃいけねーんだよ」


 真っ当な返答をする組合長だ。

 だが、その瞬間だった。

 

 侍女がどんと床を踏みならす。

 

 ひぃと小さく悲鳴を漏らす組合長だ。

 受付嬢はとんとんをやめて、サッとその場を離れた。

 危機管理が抜群だ。


「うちのお嬢様も気になさっています。さっさと言う!」


「ず、ずるいぞ。サイラカーヤを連れてくるなんて!」


「侍女さん、この人、ケツを蹴っ飛ばしてほしいそうっす!」


 ニヤニヤとしながら言うウドゥナチャである。

 いいでしょう、と侍女ものった。

 

「やめてええ! 言うからあ」


 ちっと小さく舌打ちするウドゥナチャだ。

 げらげらと笑うマッデン。

 

「先に言っとくけどな、そっちで手出しはしてくれんなよ? 組合にも面子ってもんがあるからな」


 それに対しては頷く侍女たちだ。

 はぁと息を吐いて、組合長が言う。

 

「東門の売人は蒼天六騎が確保した」


 ……やっぱり、と思うガイーアだ。

 お嬢様に進言しておいて良かったと胸をなでおろす。

 

「ほおん……こちらからも一つ言っておきましょう。うちの身内に手を出されたら、お嬢様は動かれますわよ」


「……どういうことだ?」


「そのままの言葉の意味ですわ。私のお嬢様が動かれないように、せいぜい気張ってくださいな」


 帰りますわよ、とガイーアに声をかける侍女だ。

 既にウドゥナチャは姿を消していた。

 どこかの陰に潜んでいるのだろう。

 

「お、おい。さっきの煽ってたヤツは? どこ行ったんだ?」


 組合長の声が飛ぶ。

 が、振り向きもせずに侍女が言った。

 

「さあ? ふらりと出て行ったのでしょう」


 はぁと重い息を吐く組合長だ。

 

「面白えな、サイラカーヤ。オレにも会わせてくれよ、そのお嬢様に」


「お断りですわね」


 すげなく断る侍女だ。

 対して、笑い声をあげるマッデン。

 

「げえええ! なんなんだこりゃあ!」


 組合に入ってきた男が声をあげた。

 蒼天六騎のヴォイドである。


「……いったいなにが」


 と、侍女たちを見る。

 ああ、また面倒なという顔をするガイーアだ。

 

「なあ、あんたらいったい何があった……」


 ずむん、と侍女の蹴りが入っていた。

 

「ッアアアアアアア!」


 股間を押さえて、のたうち回るヴォイドである。

 

「さ、帰りますわよ」


 はええ、とガイーアは息を漏らした。

 そして若干だが、内股になりながら侍女の後ろをついていく。

 

 あんな目には絶対にあいたくない。

 そう、強く思ったのであった。


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