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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1272/1276

1238 おじさん不在の冒険者組合は阿鼻叫喚の地獄なのかい?


 暗黒三兄弟(ジョガー)

 その長兄がガイーアである。

 

 次兄がオールテガ、末弟のマアッシュ。

 とは言っても、血のつながりはないのだけど。

 それでも似たような環境で育ってきた三人である。

 

 長兄のガイーアは、弟たちを何かと守ってきた。

 常に矢面に立ち、面倒事を進んで引き受けてきたのだ。

 それも長兄の役割というものである。

 

 故に――守護られた経験がないのだ。

 まるでないというわけではないが、酷く経験が浅い。

 

 つまり、この状況。

 ウドゥナチャと侍女の二人が守護ってくれる。

 きゅんときちゃっても仕方がないのだろう。

 

「おおおん? ナメてんのか、おおん?」


 ウドゥナチャが胸ぐらを掴んで調子に乗った冒険者を持ち上げる。

 物理的に首が絞まって、返答できない冒険者だ。

 顔が真っ赤になって、ウドゥナチャの手を叩いている。

 

「ぬぎゃあああ!」


 残るのはガイーアに酒をかけた冒険者だ。

 そこから悲鳴があがったのである。

 犯人は侍女だ。

 

 ずごん、といったのである。

 ナッツを。

 のたうち回っている冒険者だ。

 

「ちょ、お前ら、なにやってやがんだ!」


 さすがに周囲の冒険者が止めに入ってくる。

 が、侍女が間髪入れずに言った。

 

「ああん? お前らもか!」


 はいやー、と一気に間合いを詰める。

 ずむ、と股間にめりこむ侍女の足。

 

「ッアアアアアア!」


 ごろごろと床を転がる冒険者だ。

 善意の第三者かもしれなかったのに。

 正しく三つ子の魂百までを地で行く侍女である。

 

 事ここに至って、数人のベテランが気づいた。

 あの侍女ってまさか血塗の乙女スカーレット・メイデン? と。

 

 瞬間、数人のベテランが悲鳴をあげた。

 

「でたああああ! 血塗の乙女スカーレット・メイデンだああああ」


 脱兎の如く逃げだすベテランたち。

 彼らは知っているのだ。

 ナッツクラッシャーこと、侍女のことを。

 

 もはや手のつけられない暴れん坊。

 触れるものの股間を蹴り上げてきた恐怖の象徴。

 恐らく、あの頃の男性冒険者で蹴られていない者はいない。

 

 それは正しく魔王の降臨であった。

 

「逃げろおおおおお!」


 おおん? その声に反応する侍女だ。

 少し助走をつけて、跳ぶ。

 

 テーブルに足をかけて、さらに跳躍した。

 混乱で立ち尽くす冒険者の頭を踏み台に、入り口まで一気に移動する。

 とんでもない身のこなしだ。

 

「げええええ! なんでこっちにいるんだよおおお」


「皆殺しといったはずですが?」


「いや、おれら関係ないじゃん!」


「ああん? 誰が口を開いていいって言ったああ!」


 はい! すみません!

 冒険者たちが声を揃えて、直立不動になった。

 

「おおん? これだから冒険者組合にくるのはイヤだったんです」


 一歩、前に出る侍女だ。

 

「弱いくせに、でかい口をすぐに叩く」


 もう一歩前に出る。

 

「全員、そこに直れ! その根性をたたき直す!」


 うひいいと声があがった。

 だが、そこに割って入ったきた声があった。

 

「ああん? なんじゃあ、この騒ぎは?」


 冒険者組合の一階に姿を見せたのは初老の男である。

 一見すると冒険者のようには見えない。

 筋骨隆々でもなければ、粗野な感じもないからだ。

 

「おおん? 誰だ、おめーはよお?」


 ウドゥナチャが絡みにいく。

 もはや最初につり上げていた男はぐったりしていた。

 床の上で。

 

「ほおん……元気でよろしい!」


 大らかに笑う男だ。

 死屍累々といった冒険者組合である。

 いや、死んではないのだけど。

 

 ただ、多くの冒険者が床でのたうち回っている。

 そして――お姫様のごとく、うっとりしているガイーアだ。

 

「あんだあ? こらあ? 調子狂うなあ」


 ウドゥナチャの毒気が少し抜かれた。

 ただ、冒険者などという職種はなめられたら終わりである。

 だから、さらにうざがらみしようとした。


「ん~? ああ――サイラカーヤ?」


 男が多少はとまどいながらも言った。

 その言葉を聞いて、ウドゥナチャは止まる。

 侍女の関係者か、と。

 

「ッアアアアアア!」」

 

 そして――侍女の前に立っていた最後の一人が倒れた。

 股間を押さえながら。

 

「ほおん……懐かしい顔ですね」


「知り合いなの?」


 ウドゥナチャが聞く。

 それに首肯する侍女だ。

 

「マッデン。元金級冒険者の一人ですわね」


「おう。よく覚えてたな」


 かかかと笑うマッデンだ。

 なかなか朗らかな人物のようである。

 

「で? 引退したのではなかったのですか?」


 おう、と答えるマッデン。

 その頭をボリボリと掻きながら言う。

 

「いや、ちょいと用があってな」


「ほおん……その用は私のあとですね」


「かまわんが……つか、こいつら何したの?」


「うちの仲間に手を出されましたので」


 即答する侍女だ。

 マッデンは笑った。

 

「そりゃあ、こいつらが悪いな」


「でしょう?」


 なんだか侍女と意気投合している。

 やっぱ金級冒険者はやべえのが多い、と思うガイーアだ。


 ちょっと現実に戻ってきたのである。

 冷静に見ると、ヤバい。

 

 何級かは知らない。

 が、今この場にいる冒険者で立っているのは四人だけ。

 侍女とウドゥナチャ、ガイーアの三人に、マッデン。

 

 すべてノックアウトされていた。

 あの見習い冒険者ですらも。

 

「あ、あの……」


 さすがにマズいと思ったのか。

 ガイーアが口を開く。

 

「これって問題ねえんですかい?」


「……?」


 首を傾げる侍女だ。

 ウドゥナチャも、なんだったらマッデンも首を傾げた。

 

 ――なにを言っているんだ、こいつは。


 そういう反応であった。

 ガイーアはつくづく思うのだ。

 こういうところが自分は凡人なのだ、と。

 

「ん~そういや組合長はどうしたんだ?」


 さあ? と首を傾げる侍女だ。

 

「あ……あのう……いいですか?」


 受付嬢が恐る恐る手を挙げた。

 言いたいことがあるなら言え、とばかりに侍女が頷く。

 

「……組合長ならそこに」


 受付嬢が指さす。

 その先には股間を押さえて、床に転がっている男がいた。

 

「……あ」


 今さら侍女は気づいたようである。

 

「ぎゃはははは」


 下品な笑いがウドゥナチャから漏れる。

 

「ぎゃははははは」


 マッデンも腹を抱えて笑っていた。

 

「ん……まぁ仕方ありません」


 弱い方が悪いのだと言わんばかりの侍女だ。

 

 ガイーアは思った。

 まともなのが一人もいねー。

 お嬢様、たしゅけて……と。


誤字報告いつもありがとうございます。

助かります。

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