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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1271/1275

1237 おじさん不在の冒険者組合での一幕


 その日、王都の冒険者組合は活気づいていた。

 いやまぁいつもの通りではあるのだ。

 

 冒険者という仕事をする者たちは無頼が多い。

 要は跡継ぎではない者たちが集まる場所だから。

 頼るべき場所がないのだ。

 

 故に殺伐としているのかというと、そうでもない。

 冒険者という仕事があって食っていけるのだから。

 

 ただまぁ一般的な人たちよりは騒々しい。

 もちろん一般論である。

 個々人によって資質はちがうのだから。

 

 そんな中、一人の侍女が入ってきた。

 侍女服のままである。

 これは非常に珍しいことだ。

 

 もちろん貴族からも依頼をだすことがある。

 が――その場合は従僕が依頼にでるのだ。

 

 侍女が、というケースは本当に珍しい。

 だから、多くの者が息を飲んだのだ。

 

 とても珍しい存在を見たから。

 そして――供をしているのは二人の冒険者だ。

 

 一人はすらりとして背が高く、美男子である。

 王国ではあまり見かけない褐色の肌が特徴的だろうか。

 ニヤニヤとした笑みを浮かべ、周囲をそれとなく見ている。

 

 もう一人はパンチが効いている中年の男性だ。

 こちらはどこか恥ずかしそうな、気まずそうな感じがでている。

 周囲に気を使っているのだろう。

 

 そんな二人を従えた侍女は、真っ直ぐに受け付けに向かった。

 

「組合長をお願いしますわ」


「は? 組合長ですか?」


 受付嬢は一瞬だが、何を言われたかよくわからなかった。

 なにせ組合長を呼べと、開口一番で言われたのは初めてだったから。

 

「ええと……どちらのお家の御方でしょうか?」


 とりあえず、そう返すのが精一杯な受付嬢だ。

 

「ん? ああ――これは失礼。私は貴族家の依頼できたのではありません」


「というと――個人でということですか」


「依頼というのでもないのです。少し込み入った話ですので、組合長を呼んでくださいな。サイラカーヤがきたと言えば通じますから」


「は、はあ……」


 受付嬢の混乱は増すばかりである。

 侍女はモデル体型の美女だ。

 およそ冒険者には似つかわしくない美貌の持ち主でもある。

 

 そんな侍女が個人的に組合長を知っている?

 よくわからない受付嬢だ。

 彼女の頭の中は、疑問でいっぱいだった。

 

「いいから、報告してきなさいな」


「ええと……はい。畏まりました。少々お待ちいただけますか」


 そう言って、受付嬢は席を離れた。

 

「なぁ侍女さんは何級だったんだ?」


 ウドゥナチャが軽く聞く。


「私は金級ですね。まぁ上がってすぐにやめましたけど」


「認識票は?」


 冒険者の認識票はやめたとて返却の義務がない。

 そもそも辞めるも辞めないも個人の自由だから。

 

 企業に雇われているわけではないのだ。

 個人事業主といったところだろうか。

 

「ん~私室にはあるでしょうが、どこに仕舞ったものか」


「ほええ」


 口が半開きになるガイーアである。

 金級冒険者にもなれば、准貴族的な扱いを受けるのだ。

 

 なので、その認識票はとても大切なものになる。

 それをそんな雑に扱っているとは。

 

「あ、あの……」


 雑談を交わす三人に近づく者があった。

 年若い冒険者だ。

 恐らくは見習いだろう。

 

「ん? なんだボウズ、どうした?」


 ガイーアが対応にでる。

 この二人に任せていたら、どうなるものかわかったものではない。

 

「ええと……あっちのテーブルの人たちが良かったら飯……ご飯でもって」


 見れば、テーブル席に四人くらいの冒険者がいた。

 恐らく年齢的には中堅どころだろう。

 まだ、若いところを見ると、それなりに才能があるのかもしれない。

 

 が、侍女が一瞥して言った。

 

「……面倒ですわね。ちょっと黙らせておきますか」


 すぅと侍女の手が動いた。

 が、それをウドゥナチャが押さえる。

 

「ちょい待ち。さすがにそれはダメだってば」


「そうでやすよ。あっしがちょっと行ってきやすんで。ここは堪えてくだせえよ」


「あ、あの……」


 一連の話についていけない若い冒険者だ。

 結局、どうなのだ、と。

 

 要はいつものナンパである。

 連れて行ければ、いつもよりちょっと豪華な飯を食わせてもらえるのだ。

 彼にとっては死活問題でもある。

 

「なぁボウズ。あれってお前らの教導なの?」


 首を横に振る冒険者だ。

 

「まだ教導についてもらってないです」


「ああ――そういうこと」


 ウドゥナチャがにやりと笑った。

 

「お前らさ、あんなのに付いてちゃダメだよ。いや、マジで。碌な大人になれねえからな」


 かかか、と笑うウドゥナチャだ。

 どの口が言うのだとガイーアは思った。

 邪神の信奉者たち(ゴールゴーム)の首領だったくせに。

 

「騒ぎにしなければいいのでしょう。お嬢様に百歩神拳という遠間から当て技を習いましたからね。この距離なら誰にも気づかれずに……」


「いや、それはマズいですって、姐さん。オレがちょっと行ってきますから」


 即座に動くガイーアだ。

 その背中を見ながら、ウドゥナチャが言う。

 

「ん~お嬢くらいの美人がきたら、どうなるのかね?」


「一切手出しさせませんね。この私がお嬢様についているのですから」


「ま、それもそっか」


 またもや軽やかに笑うウドゥナチャである。

 おほほ、と侍女も軽く笑った。

 

「ンだよ? おっさん。なにか用か?」


「ああ――お前らがちょっかいかけようとしてるのは、さる高貴な御方に仕える人でな。まぁ今回は縁がなかったってことで」


「高貴な御方ぁ? なに言ってんだよ」


 ゲラゲラと笑う冒険者たちだ。

 相当に酒を飲んでいるようである。

 

「オレたちぁな、近いうちに金級になるんだよ」


 成れるわけねーだろ、と心の中でツッコむガイーアだ。

 だいたい金級なんてのは、どいつもこいつもバケモノである。


 数少ない金級の顔を思い浮かべるガイーアだ。

 緑の古馬に在籍するコルリンダというエルフに、その相方であるペゾルド。

 どっちもガイーアからすれば、スゴい実力者だ。

 

 それに金級になるには、品性も問われる。

 なにせ貴族待遇を受けるのだから、下手な者を挙げるわけにはいかないのだ。


「なぁ兄さんたち、ちょいと飲み過ぎだ。いいか、もう一度だけ言うぜ。あちらのお人は、さる高貴な御方にお仕えしてるって言ってんだ。この意味がわかるよな?」


 貴族家の侍女といってもピンキリだ。

 なにせガイーアたちのような一代貴族に仕える者もいるから。

 そして――高貴な御方にお仕えしていると言えば、それは文字通りの意味だ。

 

 伯爵家以上の爵位を持つ家に仕える者と、一般的には解釈される。

 つまり、そんな権力者にケンカを売るのかと問うているのだ。

 

「なぁ。ここは穏便にすまそうぜ。ほら、酒代なら払ってやるから」


「うるせえ! おっさん! こらあ!」


 冒険者の一人が立ち上がった。

 そして――ガイーアの顔に酒をぶっかける。

 

「ははは……マジか。お前ら」


 ぶち切れ寸前のガイーアであった。

 まさかここまでの暴挙にでるとは。

 

 こんなのが教導につく?

 とんだ笑い話である。

 

 どうしてくれようか、と考えたときであった。

 冒険者の一人が吹き飛んだ。

 そのまま壁に当たって、ずるりと落ちる。

 

「よくもうちのに手ぇあげてくれたなぁ。おう?」


 ウドゥナチャだ。

 ガイーアよりも先に切れたのである。


「おめぇら、こら。こっちこぉー。全員ぶちのめす!」


 ウドゥナチャの言葉が終わらないうちであった。

 またもや絡んできた冒険者の一人が吹き飛ぶ。

 

 こちらも勢い良く壁にぶち当たって、意識を失う。

 壁がべっこり凹むほどだけど。

 

「さて……よくも手をだしてくれましたわね」


 お前ら、皆殺しだこらあ!

 侍女の声が組合の中に響いた。

 

 ――やだ、かっこいい。あたい、惚れちゃう。

 二人の勇姿にガイーアはきゅんとくる。

 

 いや、そこは止めなくていいのか。

 年若い冒険者は、離れた場所で揉めごとを見つつ、そんなことを思うのだった。


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― 新着の感想 ―
 あー、何も知らんまま阿呆やった中堅冒険者は、生涯これ以上へ上がれない事が保証されたな。
極めると虎とか獅子とか出せる超人拳法を…ニャンコとか出しそう。
4馬鹿のナッツをクラッシュしてあげれば何者かすぐにわかりそうなのに
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