1234 おじさんがウドゥナチャを拉致した件について
今、作ったばかりのツリーハウスである。
空間拡張を使っているので、見た目よりは随分と広い。
こういうこともあろうかとおじさんは用意していたのだ。
木の質感をいかした家具を。
テーブルをだす。
椅子もだす。
魔道具もだして、侍女にお茶の用意をしてもらう。
今回はロッキングチェアもある。
いわゆる揺れ椅子だ。
ある程度はスペースがないと使えない。
贅沢な家具である。
ロッキングチェアに、ぽすんと収まるおじさんだ。
前後に軽く揺れてみると、意外と良い感じである。
「でさ、お嬢。いったいなにしにきたの?」
ウドゥナチャも椅子に座って揺れていた。
けっこう気に入ったのかもしれない。
「かくかくしかじか……ですわね」
「う~ん。さっぱりわからん!」
すぱぁんと景気よく侍女がウドゥナチャの頭をひっぱたいた。
景気のいいツッコみである。
おじさんは少し苦笑気味だ。
「なにがわからないのですか?」
「いや、その違法煙草だっけ? 初めて聞いたし」
「ほおん……そうなのですか」
ん~と少し考えを巡らせるウドゥナチャだ。
侍女がお茶を淹れてくれた。
最近、おじさんが好きな花茶である。
自分とおじさんの前に。
ウドゥナチャの分は――ない。
「いやな、そのあれだ。お嬢はどこまで知ってる?」
「なんのことでしょう?」
「まぁいいや。違法薬物のことだよ」
一応だが、憚っていたのだ。
ウドゥナチャも。
こう見えてもおじさんは未成年だから。
「ひととおりのことは。その辺りはきちんと把握しています」
王国にも麻薬というものはある。
前世で言う大麻のようなものから、かなり危ないものまで。
加えて言えば、魔法薬という前世ではなかった分野のものもある。
「そっか。ん~例えば霧草って知ってる?」
こくんと頷くおじさんだ。
王国内では違法ではない薬物である。
依存性が低く、かつ、軽い陶酔感が得られるものだ。
かんたんに言えば、ぼうっとしてリラックスできる。
この作用から医療用として使われることも少なくない。
正式には夢見草。
ウドゥナチャが言う霧草というのは通称だ。
「あれは、ほら。専門店でも買えるだろ?」
「そうですわね」
貴族や裕福な商人などが購入する。
ただし買える量には制限があったりもするのだ。
「違法煙草って言うと、まっさきに思い浮かぶのがそれなんだよ」
確かに霧草は煙草のようにして吸うと聞いた。
「ん~確かにそうかもしれませんわね」
野良で霧草の煙草を売っている。
もちろん違法煙草なのだが、随分と印象がちがってくるものだ。
「それが正体だと決まったわけではありません。あなたはお嬢様の望みを叶えるように調べてくればいいのですよ」
侍女がお茶を飲みながら言う。
ことりとカップを置いて、口を開く。
「まぁそりゃあそうなんだけど……そういうことをしそうな組織って思い浮かばないんだよなあ。だって、それなりに数をばらまいているわけだろ? じゃなきゃ話が広がらないからな」
で、とさらにウドゥナチャが続ける。
「数をばらまくってことは、それを作るだけの人員を確保できてるってこった。どっかの村をのっとって作らせてるのかもしれねーけど。そんな手間を踏んでまで煙草をばらまくかって話なんだよな」
確かに金は儲かるかもしれねーけど、と付け加える。
「そこはうーちゃんに同意します」
「ってことだからよ。王都で流行ってるなら、ガイーアたちの方が詳しいと思うわけね」
「まぁそうかもしれませんわね」
「うん。ってことで、侍女さん。オレにもお茶ちょうだい」
ちらっとおじさんを伺う侍女だ。
小さく頷くのを見て、お茶を淹れてやる。
「ところで、うーちゃんはなにをしているのです?」
「オレ? 今は後始末ってとこかな。お嬢がほら、暗殺教団を潰しただろ?」
外なる神、予言神シスを倒したのだ。
おじさんではなく、ランニコールが、だけど。
結果的に潰したのはまちがいない。
そのついでに、ここ廃都ン・デストも支配下に置いた。
「ああいうのは潰した後の方が大変だからなー後始末が」
ちらっちらっとおじさんを見るウドゥナチャだ。
なにかを期待している目である。
「いいでしょう。そっちのお仕事が片付いたら報告を。温泉休暇をとってもいいですわよ」
やっふうううう! と喜ぶウドゥナチャである。
温泉休暇を気に入っていたのだ。
「さすが、お嬢! 労い方を知ってるね!」
「とは言ってもです。このお仕事が片付いてからですわよ」
「え?」
「え?」
ウドゥナチャが言うお仕事は後始末のことだ。
おじさんが言うお仕事は後始末の前に、違法煙草を差し挟む。
「つ、つまり――?」
「今から王都へいきますわよ! ガイーアたちに聞き込みですわ」
「い、いや。お、お嬢。オレはこっちの仕事が……」
ぐはああ!
ウドゥナチャのお腹に、侍女のいいパンチが入った。
「問答無用ですわ。いきますわよ!」
侍女とウドゥナチャをつれて転移するおじさん。
なんでだよーという声が響いていたとかいないとか。
誤字報告いつもありがとうございます。
助かります。
体調不良により短いです




