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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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1232 おじさんと遅めの昼食で蛮族たちがてんやわんや


「リー!」


 おじさんの姿を見つけた蛮族たちが駆けた。

 ぐるぐると衛星のように周囲を回る。

 

「師匠がしゅごい!」


「しゅごい!」


 二人は興奮しているようだ。

 それに反して、侍女の方は小さくなっている。

 なにせ二回目なのだから。

 

「まぁ……仕方ありませんわね」


 ぱちんと指を鳴らすおじさんだ。

 錬成魔法を発動したのである。

 一瞬で修復されるゴブリン人形。

 

「はう! 申し訳ありません、お嬢様」


「もう直してしまいましたので、気にしなくていいですわ」


 さらっと受け流すおじさんだ。

 そんなおじさんの袖を蛮族たちが引っ張る。

 

「どうしたのですか?」


「お腹空いたー!」


「空いたー!」


 ああ、と思うおじさんだ。

 そう言えば、昼食を取る前に帰ってきたのを思いだす。

 

 野営料理の素材を探しに行っていたのだ。

 その途中で瀕死の冒険者たちを見つけてしまった。

 

 まだ犯人が森にいる可能性も考えて帰ってきたのである。

 その後で母親やシャルワールと話していた。

 

 クラスメイトたちも、少しは気分が落ちついたのだろう。

 それでお腹が空いていたことに気づいたのかもしれない。

 蛮族たちは別として。

 

「そうですわね。少し遅くなりましたが昼食としましょう」


 と言っても、だ。

 男子も含めて、二十人くらいはいるわけである。

 この中途半端な時間に食事を作ってくれというのも悪い。

 

 ということで、ここはおじさんの保存食を放出することに決めた。

 あれなら在庫はたくさんあるし、この際だから感想も聞けばいい。

 

 宝珠次元庫から保存食の在庫をだすおじさんだ。

 フリーズドライのものはもちろんのこと、カップ麺まである始末。

 それに目を輝かせたのは聖女だった。

 

「リー! あんたってば……あんたってば! 控えめに言って最高かよ!」


 ぎゅっとおじさんの手を握る聖女だ。

 その目にはうっすらと涙を浮かべるほどである。

 

「ええと……エーリカ?」


「あたしゃあ、もう嬉しくって嬉しくって……」


 聖女の心の友だったのだ。

 インスタント食品というやつは。

 

 前世でのジャンクな味というのは、この世界ではなかなか味わえない。

 もちろん聖女とて拙い知識で再現しようとはしたのだ。

 しかし、何度か食中毒事件を起こしてしまった。

 

 それ以降、養家であるコントレラス侯爵家では料理を禁止されたのである。

 自分が食べる分は除いて。

 

 要は他人に食わせるなという話である。

 けっこうな人数を巻きこんだこともあったから。

 

 だから聖女自身は開発を諦めたのである。

 目の前にあるカップ麺を見て。

 

 なんだかんだで言ってフリーズドライのものとはまたちがうのだ。

 いや、同じだろうという人もいるかもしれない。

 しかし聖女の中では明確なちがいがあったのだ。

 

「リー、これなに?」


 ケルシーが手に持っているのはあれだ。

 カップ焼きそばである。

 

 ちょっと作ってみたのだ。

 戯れに。

 

「それは……元々は麺を炒めた料理ですわね。ただ、この食べ方だとお湯で戻すことになるので、炒めてはいないです」


「よくわからん!」


 にはははは、と笑うケルシーだ。

 だが、気に入ったのだろうか。

 もう食べる気満々である。

 

「それは少し作るのが難しいので、わたくしが作りましょう」


「いやっふうううう!」


 喜びの踊りを見せるケルシーである。

 

「皆も気になるものを選んでくださいまし」


「あの……リー様。こちらはどのようにして調理するのでしょうか?」


 ジャニーヌ嬢である。

 薔薇乙女十字団(ローゼンクロイツ)の料理番だけに興味津々だ。

 

「こちらも基本的にはお湯を注ぐだけですわね。ただ……見せた方が早いですか」


 ひとつ手に取るおじさんだ。

 うどんのものである。

 

 ふたになる部分をペリペリとめくる。

 中にはお揚げと小さな袋が入っていた。

 

 ちなみに器は厚手の紙を使っている。

 内側にはお湯が漏れないように、薄い油紙を重ねているのが特徴だ。

 魔法でなんとかなるものである。

 

 出汁が入っている袋もパラフィン紙だ。


「この小袋を破くと……中に粉が入っています。これは味付け用のものですわ」


 と、実演してみせるおじさん。

 あとはお湯を魔法でだして、ふたをする。

 

「これであとは五分ほど待つだけですわね」


 おお、と声があげる薔薇乙女十字団(ローゼンクロイツ)たちだ。

 男子はもう目が点になっている。

 驚きすぎて。

 

「これは新型の保存食として売り出す前のものなので、ここで食べたことは内緒にしておいてくださいな」


 ニコッと微笑むおまけ付きだ。

 

「リー! なに食べてもいいの?」


「いいですわよ。ただし食べ過ぎはいけませんわよ」


「わかってるって!」


 ――絶対にわかってない。

 だって蛮族だもの。

 

 この場にいる蛮族以外はそう思ったのである。


「ふんふーん。見てなさいよ、ケルシー」


「おう!」


 聖女はカップ焼きそばを作っているようだ。

 お湯は魔道具で入れてもらった。

 

 おじさんが以前に作ったものだ。

 侍女や従僕たちに大人気だったお湯がだせる魔道具である。

 

「エーリカ、まだ三分経ってない!」


 ケルシーが今気づいたと言わんばかりに叫ぶ。

 

「いいのよ。これはこっちの方が美味しいんだってばよ」


 おじさんが宝珠次元庫からだした小ぶりのバケツを足下に用意する。

 そこで容器を持って、聖女がどぼどぼとお湯を捨てていく。

 

「いい! このお湯を捨てるときが危ないのよ」


「なんでさー。お湯にかからなかったらいいんでしょ?」


「ばっかね! ここで失敗してきた人間がどのくらいいると思ってるのよ」


「初めて食べるのだから、誰もまだ失敗していないのです」


 パトリーシア嬢が聖女にツッコンだ。

 その言葉に、は! となる聖女である。

 

 つい、口が動いてしまった。

 同時に油断したのである。

 

 斜めにした部分の押さえが緩んでしまった。

 そして――ずるんと麺がバケツに落ちてしまう。

 

「あっーーーーー!」


 ケルシーが叫んだ。

 

「麺が泳いどる!」


 すくおうとしたのだろうか。

 手をバケツに伸ばすケルシーだ。

 

 あ――とおじさんは思った。

 が、もう遅かった。

 

 熱湯が入ったバケツに手を入れるケルシーだ。

 

「あっづうううううう!」


 みぎゃあああと聖女が叫ぶ。

 ケルシーが手を引き抜いたことでお湯が跳ねたのだ。

 聖女の顔に。

 

 今度は容器そのものがバケツの中に。

 ばちゃんと音がして、さらに熱湯が跳ねる。

 

「あっづううううううう!」


 ジタバタとする蛮族たちだ。

 

「まったく。大騒ぎですわね」


 治癒魔法を二人にむかって発動してやるおじさんであった。


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