表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1261/1269

1227 おじさんトラブルに遭遇しちゃうのかい?


「……リー様」


 アルベルタ嬢が蛮族たちを見て絶句していた。

 なぜなら彼女たちはもはや屍のようであったから。

 

「ま……そういうことですわ」


 おじさんは見ていた。

 侍女が稽古をつける様子を。

 まぁ常識の範囲内だろう、と。

 

 ただし、それはおじさんや侍女基準での常識である。

 ここが非常に危ういのだ。

 常識というものは。

 

 万人に共通するものなどないのだから。

 

「エーリカとケルシーのことはこちらで見ておきます。ゴトハルトたち騎士を中心に野外料理に進んでくださいな」


 はい! と元気な返答があった。

 やはり野外での学習というのは楽しいらしい。

 

 騎士たちが中心になって、基本的なことから教えている。

 その様子を見ながら、おじさんは口を開く。

 

「エーリカ、ケルシー」


「……」


 返事がない。

 まったく、と言いながら治癒魔法を発動するおじさんだ。

 

「昼食はどうしますの?」


「……食べる」


 ぼそりと呟く聖女だ。

 がばっと上半身を起こす。

 

「でも、今日は作りたくなーい!」


 ゴロゴロと地面を転がる聖女だ。

 ケルシーも同じようにしている。

 

 まぁわからないでもない。

 さっきまで限界を超えて訓練していたのだから。

 しかも二人が嫌がる地味な筋トレだ。

 

 なにせ、おじさんのようなきれいなカーテシーを決めるには、相応の筋力が必要となってくるのだから。

 

「では――」


 とおじさんが口を開こうとしたときだった。

 ミグノ小湖の周りにある夜迷いの森、その空に火の魔法が打ち上がったのだ。

 

 花火の魔法である。

 あれは比較的にかんたんなので、騎士の間で緊急の信号として使われていた。


「ん? なにかありましたか」


 おじさんが侍女に目配せをする。

 

「わたくしが行ってきます。サイラカーヤはこの場で待機、エーリカたちの面倒を見ておいてくださいな」


「……畏まりました」


 異論はあるが、スッと頭を下げる侍女だ。

 では、とおじさんが立ち上がった。

 

 トントンとつま先で地面を叩く。

 直後、おじさんの姿が消えた。

 

 圧倒的な速度で移動しただけ。

 だが――もう姿が見えなくなっている。

 

「ほええ……」


 蛮族たちが息を漏らす。

 

「あなたたちもいずれはできるように……」


 なります、とは言わない侍女だ。

 まだまだ先は長そうだから。

 

 一方でおじさんは森の中を高速で移動していた。

 木の枝から枝へと跳んで縦横無尽に駆けていく。

 

 ほどなくして、おじさんは信号弾をあげた騎士を見つけた。

 アストリッドだ。

 

「お嬢様!」


 地面に降り立ちながら、おじさんはだいたいの事情は把握できた。

 だって、アストリッドたちの前に倒れている者たちがいたから。


「装備を見ると、冒険者ですわね」


 人数は三人。

 全員が青年だ。

 十中八九は駆け出しの新人である。

 

「はい。認識票で確認をいたしました。全員、息はありますが……」


 アストリッドが言葉を濁したのも当然だろう。

 なにせ、冒険者たちの背中には大きな傷があったのだから。

 

 それも魔物によるものではない。

 これは刃物で傷つけられたものだ。


「本日の訓練は中止とします。良からぬ輩がいるようですから」


 アルベルタ嬢たちの班だ。

 少し顔を青くさせている。


 それもそうだろう。

 こうした傷つけられた者を見るのは、恐らく初めてのことだから。

 

 ――ぱちん。

 

 と、おじさんは全員を連れて、ミグノ小湖の湖畔に転移していた。

 

「アストリッド、信号弾を定期的に放ってくださいな」


「畏まりました」


「サイラカーヤ! 周囲を警戒、怪しい者がいれば制圧して構いません」


「はい!」


 実に嬉しそうな侍女である。

 おじさんが治癒魔法を発動させて傷を治す。

 

「エーリカ、この者たちに治癒の続きを。致命的な部分は直しておきましたから」



「がってん! この聖女におまかせだもんに!」


「ケルシーはこの場を守ってくださいな。今日はギャルのケルシーではなく、ガーディアンのケルシーですわね」


「わははは! ガーディアンだもんに!」


 蛮族たちは切り替えが早い。

 さすがに森の中で生きてきただけのことはある。

 

「皆、ここは安全ですわ。いざとなればサイラカーヤがいますから」


「お嬢様はどちらへ?」


「残りの班を回収してきます」


 言うや否や、おじさんは転移で姿を消す。

 まずは馴染みのあるゴトハルトの魔力を掴んだのだ。

 

「むううん」


 聖女が冒険者たちに治癒魔法を発動させる。

 さすがに聖女といったところだろう。

 

「ねぇねぇこの人たち大丈夫かな?」


「問題ないわよ。誰が治療しているのと思ってんのさ」


 蛮族たちが、ニハハハと笑う。

 その姿を見て、少し余裕を取り戻してアルベルタ嬢だ。

 

「ニュクス……なにかこれに連なる情報は?」


「特には……強いてあげるのなら」


「王都では違法な煙草が流れているという情報がありますが」


「違法な煙草?」


 こくんと頷くニュクス嬢だ。

 

「重度の依存性がある煙草のことですわ」


「それって……」


 絶句するアルベルタ嬢だ。

 程なくして、おじさんが男子組を連れて戻ってくる。


「ゴトハルト、わたくしが不在の間はあなたが指揮を」

 

 ハッと短くも強い答えを返すゴトハルトだ。

 

「ちょっといいかしら」


 男子班に声をかけるアルベルタ嬢だ。

 

「王都で違法な煙草ですか?」


 男子にも情報を聞いてみたのである。

 

「そのような話は初耳です」


 目立たなくっても彼らは良家のご子息たち。

 そのような情報は知らないらしい。

 

「エーリカ殿、治癒にはあとどのくらいかかりそうですかな?」


 ゴトハルトが確認をとった。

 

「ん~もう終わるかな。でも、気を失っているから」


「……なるほど。承知しました」


 冒険者が三人、傷つけられた。

 人の手によって。

 

「まったく……」


 これもお嬢様だからだろうか。

 少しそんなことを考えるゴトハルトであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ