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強制的に転生させられたおじさんは公爵令嬢(極)として生きていく  作者: 鳶丸
本編

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第1126話 おじさんの絶対失敗してはいけないお茶会の種明かし


 おじさんは聖女と母親を伴って衣装部屋に移動していた。

 

「楽しみだわ。リーちゃんがどんな手を使ったのか」


 母親が言う。

 それに対して、ニコリと微笑むおじさんだ。

 

「まぁ種明かしは、もう少し待ってくださいな」


 部屋のドアを開ける。

 すると、猿ぐつわを噛まされたキルスティがいた。

 

「もー! もいもいもー!」


 キルスティを見張っているのは侍女だ。

 故に、彼女は逃げたくても逃げることができない。

 

「あら……ふぅん」


 おじさんが目配せをすると侍女が猿ぐつわを外した。

 

「ぷはあ! リー! どうだったの?」


 姿はキルスティ。

 だが、そのしゃべり方は聖女そのものだった。


「問題ありませんわ。すべて丸く収まりましたから」


「いいいぃぃぃやっふううううう!」


「……なんだか複雑ね、いつものとちがう自分の姿を見るのは」


「え?」


「え?」


 聖女とキルスティの目があった。

 そして、キルスティが口を開く。

 

「パイセンってば自覚ないの!?」


「私はそんなことしません!」


 ケタケタとキルスティの中にいる聖女が笑った。

 

「……なるほどね。巨大ゴーレムのときの魔法を使ったのね?」


 母親はおじさんの悪巧みを看破していた。

 

「そのとおりですわ。魂だけを切り離す魔法ですから。それを応用してみました。お互いの魂を離脱させ、身体を入れ替える」


 ほおんと母親の目が光る。

 

「言うなれば、憑依(ポゼッション)といったところでしょうか」


「いいわね! リーちゃん。その魔法」


「まぁ使いどころがなかなか難しいと思いますけど」


 苦笑するおじさんだ。

 こういうときでもなければ、わざわざ身体を入れ替えたりしないのだから。

 

「ということで! キルスティ先輩、本当に助かりました。ありがとうございます」


 スッと頭を下げるおじさんだ。

 

「よしてちょうだい。私だって偶にはリーさんの役に立つってところを見せておかないとね」


「そんな……」


「リーちゃん、素直に受け取っておきなさい」


 母親の言葉に頷くおじさんだ。


「リー、そろそろ元に戻して!」


 いいでしょう、と指を弾くおじさんだ。

 聖女とキルスティ、二人の胸の辺りがぽわっと光る。

 そして――その光は交錯するように飛び、それぞれの身体に戻った。

 

「ううん……」


 聖女だ。

 

「やっぱ自分の身体がいいわね」


 そりゃあそうだと思うおじさんだ。


「パイセンの身体はなんか重くってさー」


「し、ししし失礼な! 私の身体は重くありませんわ!」


「ん~でも重かったよ?」


 聖女は首を傾げている。

 

「エーリカ、それは当たり前というものです」


 おじさんがたしなめるように言った。


「本来、人と魂は不可分のもの。それを一時的にも無理やり分けているのです。どこかで負担というものはでてきますわ」


「ん~それもそっか」


 ニカッと笑う聖女だ。

 キルスティの方に向き直って、がばっと頭を下げた。

 

「あざすざす! パイセン!」


「もう、あなたまで」


「いいや、本当に今回ばっかりは助かったと思ってんの。リーのママにも迷惑かけずにすんだし! あざすざす!」


 キルスティの手をぎゅっと握る聖女であった。


「エーリカ、ひとつ言っておきますわよ。手助けするのは今回だけです。次からはちゃんと自分で対応してくださいな」


「え゛!?」


 おじさんの一言に顔を青くさせる聖女だ。

 

「……当たり前ですわよ。せめて学園に在籍している間に、基本的な礼儀作法を身につけておかないと大変ですわ。卒業後には公の場にも出ることが増えますし。いつまでも先輩に頼るわけにはいかないでしょう?」


「う……」


「そうよ。せっかく協力したのに、身体が重いとか言うんだもの。次からは自分でがんばるのよ!」


 ちょっとした意趣返しをするキルスティだ。

 

「ぱ、ぱいせん……酷い! そんなこと言うなんて」


 シクシクと泣いているふりをする聖女だ。

 

「う……ちょっと、そんな風にとらなくても」


「先輩、あれは嘘泣きですわ!」


 妖精女王から学んだおじさんである。

 聖女の嘘泣きを喝破したのだ。

 

「いや、本当に泣いているんだけど……」


「え!?」


 どきりとするおじさんだ。

 そんなにショックが強かったのか、と。

 

「うっそぴょおおん! なああんちゃって!」


 ごちいんと聖女の頭にげんこつが落ちた。

 侍女である。


「みぎゃああああああ!」


「ちょうどいいですわ。うちにも一人いますからね、礼儀作法を身につけないといけないのが」


 ケルシーのことである。

 

「私が責任をもって面倒をみましょう!」


「サイラカーヤにお願いしておけばまちがいないですわね!」


 ほほほ、と笑うおじさんだ。

 

「リーちゃん、そろそろいいかしら?」


 母親がおじさんの腕をがっしりと掴んだ。

 

「よく考えたわね、さっきの魔法。さぁ地下の実験室に行くわよ!」


 おじさんは苦笑しながら、母親に付き合うのであった。

 

「……ねぇねぇパイセン」


 聖女がキルスティに問う。


「リーの使った魔法ってすっごく難しいんじゃないの?」


「そうね……たぶん、ものすごく難しいわね」


 二人の問答を聞いて、はぁと息を吐く侍女だ。


「なにを言っているのです。お嬢様からすれば、あの程度の魔法はさほど難しい部類ではありませんよ」


「そ、そうなんだー」


 おほほほ、と聖女が笑う。

 

「さぁ、いきますわよ!」


「どこへ?」


「特訓に決まっているじゃありませんか? 言っておきますが、私は優しくありませんよ」


 脱兎のごとく逃げだす聖女だ。

 だが、侍女は既にドアの前に移動していた。

 

「げえええ!」


 ふっと笑う侍女である。

 

「私から逃げられるとでも思っているのですか? ケルシーとクロリンダもよく逃げようとしていましたが……一度も成功したことはありませんよ」


 と、聖女をロープで縛る侍女だ。

 

「これでもう逃げられませんわね」


「ちょ、ちょっと! キミの縄ってか!」


「なにを訳の分からないことを! キルスティ様はサロンに」


 ここは巻きこまれてはなるまい。

 そう判断したキルスティは、苦笑いをしながら衣装部屋を抜ける。


「え? わ、私は?」


「これからケルシーと一緒に特訓ですわ!」


「い、いやだあああああ!」


 ふん、と侍女の拳が聖女の腹に突き刺さった。

 きゅうと目を回す聖女だ。

 

 そんな聖女を肩に担いで、侍女もまたサロンへ向かうのだった。

 

「な、なにをするだー!」


 無事に拉致されたケルシーと聖女。

 この日、二人は夜遅くまで特訓させられたそうである。

 

「こんなことなら素直に勉強しとけばよかったー」


 とは聖女の弁だ。

 

 ――聖女といえども礼節を欠けば祈りが届かない。


 後の世において広まる格言である。

 後悔先に立たず、と似た意味であった。


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