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新たな王都ブルッケン(2)

 新王都ブルッケンに到着した日は慌ただしく、新たに加わったスルトに、旧王都からの一連の経緯を話した。終始「ご立派ですぞ!」と、俺を褒めたたえており、少々照れ臭かった。

 その間に人間族の捕虜――ジョン・サンダーの身柄を、城内の兵士が地下牢に移動し、その日は……いや、もう二度と会う事もないだろう。

 戦利品の自動小銃(アサルトライフル)などは、俺の一言「分解とか止めてね」で、魔族の技術者を抜け殻にさせた。そのため今は酒以外の戦利品は、城内の一室を使い保管されている。

 その後は疲れた体を癒すため、無駄に広い大浴場で汗を流し、これまた無駄に豪華な食事を堪能し、最高に無駄な豪華すぎる寝室でその日を終えた。ただ、その都度で少し変わった出来事が多発した。一体何だったのだろうか?

 それはそうと、スノーが灰になって以降、その日は合う事はなかった。あれほど「あぁ、魔王様!」と、終始まとわりついていたスノーが、だ。これは本格的に良心が痛み出した。

 そんな日を過ごした結果、資金源はどこから湧いて出たのか不思議に思った。これが税金とかなら考え直した方がいいと思う。庶民の俺には勿体ない。

 と、そこまでが新王都ブルッケンに到着した日の話。


 そして今は朝っぱらから会議室に出向いていた。

 会議室といっても、立派な部屋ではない。あるのは繊細な彫刻が施された長机が一つ、それに見合った椅子。後は部屋の隅で壁に張り付き、凛とした表情で待機している下女(メイド)が三名。

 そんな会議室に集まった面々は、上座に魔王の俺が座り、直属の臣下であるナナ、ラスク、スルト。そして俺が要望した魔力不適合者(魔族モドキ)の男性が一名。その四名プラス一名が、本日の会議室に集まった面々である。

 ちなみに魔力不適合者(魔族モドキ)の男性は、理由も聞かされずに連れられ、今にも嘔吐しそうなほど青ざめている。俺と二人きりならともかく、名の知れたナナ達の前では緊張を隠せないのだろう。

 更に余談だが、実は俺も会議の内容は聞かされていない。起床するなり「魔王様、本日は会議がございます」と、告げられた。


「魔王様、この会議の進行役は私が請負いますので、何かありましたら何なりとお申し下さい。なお、本日の議題は二点ございます。まず魔王様の就任にあたってのご説明、それを踏まえて旧王都奪還作戦について、でございます。その前に、一般人の彼を呼ばれた経緯の方を、ご説明よろしくお願いします。議題の内容を聞かれるのは好ましくないので、まずはそちらから処理を」


 進行役を買って出たナナが立ち上がり、俺の耳元で説明をしてくれた。

 なるほど、ついに召喚された理由を聞ける訳だな。

 ついでに人間族の技術力の水準について、事細かに教えてくれたら嬉しいのだが……。それを聞けない事には、旧王都の奪還など夢のまた夢だと思う。


「分かりました。まず彼を呼んだ理由、それは自動拳銃(ハンドガン)を撃てるか試したいからです。実は人間族――ジョン・サンダーに酒を飲ませ、自動拳銃(ハンドガン)について聞き出しました。その時に彼は『魔力を操る者、魔族には扱えない』そう言いました。なら魔力不適合者(魔族モドキ)は? その疑問を知るため、今後の彼らの活躍の場を広げるため、そのために彼を呼びました」

「素晴らしい! 素晴らしいですぞ、魔王様! 同族からも迫害され、忌み嫌われる魔力不適合者(魔族モドキ)に手を差し伸べるとは……。このスルト、感服いたしました!」

「あ、ありがとう……。それでは彼に試してもらいましょうか」


 俺は彼の元に向かい、弾を装填させる為にスライドさせる。

 そして彼に自動拳銃(ハンドガン)を持たせ、後ろから抱きしめるように撃つまでの手順を説明する。後ろから抱きしめて耳元で囁く俺、身を悶えて耳を赤く染める彼。この構図はまさに……ボーイズ、ラブ!

 勘違いするなよ! 彼はヒロインでもないし、俺はボーイスラブでもないからな!


 さて、一通りの説明も終わり、後は彼が撃つだけだ。

 窓の外に照準合わせた彼、そんな彼に固唾を飲んで見守る一同。数秒の沈黙の後、彼はゆっくりと引金を引き――。

 刹那、会議室に銃声が響く。同時に周囲がキナ臭くなり、一つの空薬莢(からやっきょう)が床に転がる。

 大成功だった。俺の予想通り魔力不適合者(魔族モドキ)には問題ない。彼らの場を増やせば、今までの様に迫害される事は無くなるだろう。

 そんな彼は、今まで体験した事のない衝撃に彼は震え、同時に恐怖からか額には大量の汗を流す。いつまでもギュッと握りしめる自動拳銃(ハンドガン)に手をかけ、力の抜き方を忘れた彼の指を一本、また一本と、グリップから剥していく。

 未だに呆然と立ち尽くす彼の肩を叩き、部屋の隅で控えていた下女(メイド)に目配りをさせる。彼の誘導する下女(メイド)に「彼にはお礼に食事でも」と、言い渡した。それで少しでも落ち着いてくれればいいのだが。


「結果は見ての通り、これで魔力不適合者(魔族モドキ)の彼らも共に戦う事ができます。なので、戦う意思のある魔力不適合者(魔族モドキ)を三十名、追々でいいので集めてもらってもいいですか?」

「か、畏まりました。それにしても……いえ、やはり我らが魔王様。人間族の武器を利用し、戦力の拡大を図るとは思いもよりませんでした」

「戦闘中は倒した敵の武器も大事な戦力。ちゃんと有意義に使ってあげないと」


 まっ、夜な夜なインターネットで調べた受け売りだけどね!

 それはそうと、これにて俺の実験も終了。後の事はお任せし、ナナに進行を促す。


「あっ、はい。それでは魔王様に説明をさせて頂きます。まず――」


 話が長いので要約すると、戦争になった経緯、人間族の技術力に関すること、今はまだ仮の魔王なこと、そして魔王として俺に求めること。その四点の説明を受けた。……のだが、結論からいうと、これは完全に負け戦だ。

 その前に大雑把に説明をしていく。

 まず戦争になった経緯だが、これは人間族のジョン・サンダーから聞いた噂話と一致した。人間族の偉い人が魔界の資源に目が眩み、あれこれ難癖をつけて戦争に発展。当初は和解の道を選んだ魔族だが、非道ともいえる行為に憎しみを覚え、今に至るらしい。

 最も気になる人間族の技術力、これが負け戦だと思う要因だ。戦争の前――数年前に人間族を助けた時、お礼として貰った街並みの写真が数枚。なんと、車が空を飛んでいましたよ! あと、立体映像が店の店員をしていたよ!

 それだけじゃない。次に見たのは、数年前に発行されたミリタリー雑誌。文字は読めないが、写真だけで何を伝えたいのか分かった。その中でも群を抜いていたのは、完全ステルス迷彩を施した戦車だった。……この時点で『降伏』の二文字が俺の脳裏から離れない。

 既に俺の心理的ゲージは底をついているが、それに構わず説明は続けられた。

 どうして仮の魔王なのか、それについて理由は簡単だった。俺が信用に値するか見極めるからだ。召喚させときながら! そう言いたいのは山々だが、魔族の言い分も分かる。

 何せ魔族を率いるトップであり、そのトップの指揮によって戦況が左右される。その魔王がバカタレだった場合、魔界どころか魔族の存続にも関係する。

 それだけではない。権力に物をいわせ、人間族の様に非道に走れば誰が敵か分からない。そのためにも仮が必要であり、お目当てでない場合は魔王から兵士に格下げされるらしい。

 つまり俺――魔王に求められること、それは戦争の『結果』と同族からの『信頼』。この二点であり、幸運な事に『信頼』については、着々と合格ラインに近づいているらしい。ナナとラスクを救い、スノーから絶大に慕われているのが高ポイントらしい。

 ちなみに魔王を召喚した経緯、それは異世界の知識、違う目線から勝利を見出すためらしい。残念だけど、現実世界の技術力はここより劣っているけどね!


 以上が四点の説明だ。

 あれだな。このままでは兵士に格下げされ、戦場を駆け巡るのも時間の問題だな。しかも初戦で戦死コースまっしぐらの勢いで……。何とかせねば命が危うい!


「何か質問はございますか?」

「……ちなみに聞くけど、今まで人間族に一戦でも勝利した事は?」

「ありません。全戦全敗でございます」


 はい、戦死コース確定。

 いや、まだだ!


「……今まで人間族を捕虜にして、そこから得た情報は?」

「ございません。魔王様が捕らえた人間族が初の捕虜でございます」


 だが、まだ諦めん!


「……人間族に対抗できそうな秘密兵器は?」

「なんですかそれは? 私達の戦い方、それは剣と魔法、スキルの三点しかございません」


 くっ、これなら!


「……今まで練った策で最も効果的だったのは?」

「我ら魔族に策など不要でございます。策を練るのは卑怯者のする事であり、誇り高い魔族は常に前しか見ておりません」


 そ、それなら――。


 その後も立て続けに質問を続けるが、帰ってくる答えは全てマイナスの出来事。

 えっ? もしかして魔族は俺を抹殺するために召喚したの?

 えっ? 本当に勝利を目指しているの?

 えっ? 実は魔族ってドエムなの?


 質問を終えた頃、先ほどまで脳裏から離れなかった『降伏』の二文字が、『戦死』に移り変わっていた。誰でもいいから俺を助けてくれ、マジで……。


「それでは次の議題に移ります。皆様の記憶に新しいと思います。卑劣な人間族に奇襲を許し、甚大な被害を出した旧王都。その奪還作戦――」


 あっ、続けるのね。勝てる見込みもないのに、戦いを挑むのね。策も練らないのに作戦会議するのね。

 そんな俺の心境を知ってか知らずか、進行役のナナは内容の無い、名ばかりの『旧王都奪還作戦』を話し始めるのであった。それを俺は頭を悩ませて聞くだけだった。

ここまで見ていただきありがとうございました。

甘口から辛口の感想やご意見、お気軽に下さると嬉しいです。


以前の執筆した作品なので当分は毎日投稿となります。

よろしくお願いします。



混乱する前にプチ登場人物紹介

・【スノー】妖精族の小鳥?、女性。魔王の側近。魔王に恋する一人の女性。

・【ナナ】妖精族のエルフ、女性。ラスクの嫁。魔王直属の臣下。魔法特化型。

・【ラスク】妖精族のエルフ、男性。ナナの夫。魔王直属の臣下。魔法特化型。

・【スルト】爬虫類族のサラマンダー、男性。魔王直属の臣下。防御力と俊敏性に優れている。

・【ショウグン】昆虫族のカマキリモドキ、男性。魔王直属の臣下。←消息不明。

・【ドルガ】鳥獣族のグリフォン、男性。魔王直属の臣下。←戦死。


・【ジョン・サンダー】人間族の男性。十三部隊の部隊長。仲間は全員戦死。←捕虜

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