【バグる経済】「ポポロ村、世界一のインフラ拠点へ」
【バグる経済】「ポポロ村、世界一のインフラ拠点へ」
「飯と寝床、それに防衛網は完璧だ。だが、最高のスローライフを送るためには、まだ足りないものがあるな」
ルナキン(ファミレス)での極上ハンバーグ朝食を終えた俺は、タブレット端末をスワイプしながら呟いた。
傍らでは、すっかり俺に懐いた元人魚姫アイドルのリーザが、食後のメロンソーダをちゅうちゅうと幸せそうに吸っている。
「足りないもの? タクミさん、もう十分すぎるくらい村は豊かになったと思うけど……」
月兎族の村長・キャルルがウサギ耳を傾けて不思議そうに聞いてくる。
「いや、文化的な生活には『風呂』と『日用品の調達拠点』が不可欠だ。俺が前世で一番の楽しみにしていたのは、仕事終わりのサウナだったからな」
俺はポケットから銅貨を二枚取り出し、指先でピンッと空高く弾いた。
チャリン、と硬貨が消滅する音を合図に、スキル【ポッキリショップ】が起動する。
「インストール——『ルナミスーパー銭湯(ポポロ村店)』、および総合ホームセンター『タローマン』」
ズゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォッ!!
二日連続となる凄まじい地響きと共に、広大な空き地に巨大な建造物が二つ、文字通り『生えて』きた。
一つは、立派な瓦屋根と巨大な煙突、そして『ゆ』と書かれた巨大な暖簾が風に揺れる、超大型の温浴施設。
もう一つは、武器防具からガテン系職人の作業服、さらには生活雑貨まで何でも揃う、無機質だが巨大な四角い要塞、ホームセンター『タローマン』だ。
「……まーたやりよった。銅貨二枚(二百円)で、城みたいな施設が二つも……」
ニャングルが煙管を落とし、白目を剥きながら膝から崩れ落ちた。
「おいおい、ニャングル。商人がそんなに驚いてどうする。タローマンの中を見てみろよ。お前の商売道具になるものが山ほどあるぞ」
「な、なんやて……?」
ニャングルはフラフラと立ち上がり、タローマンの店内へと足を踏み入れた。
そして数秒後、店内から猫が尻尾を踏まれたような絶叫が響き渡った。
「ヒィィィィィィッ!? なんやこの服!? 軽くて丈夫で、しかも防刃・防弾の魔法繊維が編み込まれとる!? こんなん、ドワーフの国でも金貨百枚は下らん国宝級の防具やぞ! これが、棚にズラッと……ひ、ひゃくえん!?」
ニャングルは陳列された『魔導戦闘服』や『魔導防弾チョッキ』を抱きしめ、ガチガチと歯を鳴らして震え始めた。
「タ、タクミっち……お前、自分のスキルのヤバさ分かっとるか? この『タローマン』にある商品を周辺の三カ国に横流しするだけで、ワイら、大陸の経済を完全に支配できるで……!」
「俺は商売には興味ない。インフラの維持管理は任せるから、出た利益で村を豊かにしてくれ。俺はサウナに入ってくる」
「任せときぃ!! ワイの算盤が、火ィ吹くでぇぇぇっ!!」
商魂に火がついたニャングルは、村の婦人たちを即座に雇用し、『タローマン』の物資と『100均戦闘糧食(弁当)』を使った、三国駐留軍向けの超強気な宅配ビジネスの構築に走り出した。
原価100円のものを金貨数十枚で売る、利益率数万パーセントのバグった錬金術の始まりである。
「はぁぁぁぁ……極楽ですわぁ……」
一方、ルナミスーパー銭湯の『露天風呂』では、リーザが頭にタオルを乗せ、だらしなくお湯に溶けていた。
「すごいねリーザちゃん! お湯が勝手に湧いてくるし、シャンプーって言うの? これを使うと髪がツヤツヤになるよ!」
「ええ、ええ……! 今までデパートの化粧室の石鹸で顔を洗っていたのが嘘のようですわ……! タクミ様は神様ですの!? こんな贅沢、バチが当たりませんこと!?」
キャルルとリーザは、最新の温浴設備と充実したアメニティに大興奮していた。
サウナで汗を流し、水風呂で整い、風呂上がりには休憩処でキンキンに冷えた『フルーツ牛乳』を腰に手を当てて一気飲みする。
「ぷはぁっ! 生き返るね!」
「最高ですわ……! もう絶対にこの村から出ませんわよ!」
マッサージチェアに座りながら、二人は天国のような時間を満喫していた。
極上のメシ、最強の防衛網、そして最高の娯楽施設。
追放された雑用係が作ったポポロ村は、たった数日で『世界一のインフラ拠点』へと進化を遂げたのである。
——だが、天国があれば、必ず地獄がある。
「くそっ……! なんで俺がこんな目に……!」
冷たい雨が降りしきる森の中。
勇者ゼロスは、泥だらけになりながら、岩陰で身を丸めていた。
タクミが『タローマン』で調達していた「魔導戦闘服」や「防水テント」の契約を解除したため、彼らの装備はただのボロ布へと変わり果てていた。
さらに最悪なことに、ゼロスが身長をごまかしていた『厚底の魔導ブーツ』の魔法も切れ、見すぼらしい本来のチビな体型が露わになってしまっている。
「ゼロス様……兵士の半数が、風邪と食中毒で倒れました……。残っている食糧は、泥臭いピラダイの生肉と、あの『ゲロオムレツ』だけです……」
副官が絶望的な報告を上げるが、ゼロスにはどうすることもできない。
と、その時。ゼロスの懐に入っていた『エンジェルすまーとふぉん』が、不吉な着信音を鳴らした。
『——もしもし? ゼロス君。僕だけど』
画面に映し出されたのは、専用のマイタンブラーでカプチーノをすする、嫌味な笑みを浮かべた男。
ゴッドチューブの配信スポンサーであり、ヤラセを助長する新人の炎上神・ワイズだった。
「ワ、ワイズ様! も、申し訳ありません、今ちょっと機材のトラブルで……!」
『言い訳はいいよ。君の配信チャンネル、さっき確認したけど……PV(視聴数)が底辺まで落ちてるね。泥水すすって吐いてるだけの配信なんて、誰も見ないんだよ』
「そ、それは……っ!」
『僕が【マネー】のスキルで君のステータスを底上げしてあげてるのは、君が“絵になる悲劇”と“逆転劇”を演出して、PVを稼いでくれるからだ。……このまま数字が取れないなら、契約は打ち切り。君のステータス、全部剥奪するからね』
ブチッ、と無慈悲に通信が切れた。
ゼロスの顔から、さぁっと血の気が引いていく。
【マネー】によるステータス底上げがなくなれば、彼はただの「チビで非力な凡人」に逆戻りしてしまう。それだけは絶対に避けなければならない。
「くそっ……どうすれば……! そうだ! また『村を襲う魔物から人々を救う勇者』のヤラセをやればいいんだ!」
ゼロスは血走った目で立ち上がった。
ターゲットは、つい先日まで自分の裏方をやっていた無能な男、タクミが向かったという『ポポロ村』だ。
「魔王軍の幹部、魔人ギアンに連絡しろ! 謝礼は弾むから、死蟲機の群れをポポロ村に向かわせろと伝えろ! 村が火の海になったところを、俺が颯爽と助けに入ってPVを稼ぐ!」
ゼロスの歪んだ命令に、副官は青ざめながら頷いた。
だが、哀れな勇者はまだ知る由もなかった。
彼らが襲撃しようとしている『ポポロ村』が、すでにタクミの100均チートによって、魔王軍すら手出しできない『要塞リゾート』と化していることに。
そして、その村の快適すぎる様子が、まもなく『神々』の目に留まり、ゴッドチューブの勢力図を根底からひっくり返す大事件に発展することに——。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「銅貨二枚でスーパー銭湯とタローマンはヤバい(笑)」
「リーザが幸せそうで何より!」
「ゼロスの厚底ブーツ解除は草ww ざまぁの準備完了!」
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次回、第6話「【PV大逆転】神々も注目するS級スローライフ」
タクミたちの快適すぎる生活が、ついに神々の目に留まる!? 勇者のヤラセ配信は完全終了へ……! お楽しみに!




