【飯テロと飯マズの絶対格差】「極上メシとゲロオムレツ」
【飯テロと飯マズの絶対格差】「極上メシとゲロオムレツ」
『——射程内に害虫を捕捉。殲滅プロセスを開始します』
機械的なアナウンスが響いた直後、ポポロ村のゲートに設置された二基の『自動迎撃対空魔砲』が火を噴いた。
ズガガガガガガッ!! と、耳を劈く轟音とともに、極太の魔力光線と実弾の雨が降り注ぐ。
「ギ、ギギィィィッ!?」
先頭を走っていた数十匹の『死蟻型』が、酸を吐く間もなく、紙屑のように消し飛ばされる。
さらに、横に広がって村を包囲しようとした群れは、あらかじめ敷き詰めておいた『魔導地雷』を踏み抜いた。
ドゴォォォォンッ!!
凄まじい爆炎が上がり、周囲の土砂ごと死蟲機たちが吹き飛んでいく。
かつての古代大戦で世界を恐怖に陥れた死蟲王サルバロスの眷属が、まるで殺虫スプレーをかけられた羽虫のように、わずか数十秒で全滅していく。
『——害虫の駆除を完了しました。周囲の安全が確認されました。ポッキリショップをご利用いただき、誠にありがとうございます』
魔砲の銃身からシュウゥと冷却用の白い蒸気が上がり、何事もなかったかのように砲身が収納されていく。
「……お、終わった? あれだけいた死蟲機が、一瞬で……?」
キャルルは握りしめていたトンファーを下ろし、呆然と目の前のクレーターを見つめていた。ウサギの耳が信じられないとばかりにパタパタと動いている。
その後ろで、ニャングルが震える手で算盤を弾いていた。
「自動迎撃魔砲の弾薬費、魔導地雷数百個の展開費用……ざっと見積もって金貨2万枚。国家の防衛予算一年分が、たった数十秒で……」
「いや、だから銅貨1枚(100円)だって」
「お前のそのスキル、この世界の経済を根底からバグらせとるんやぞ!? アホちゃうか!?」
ニャングルが半泣きでツッコミを入れてくる。
商人の彼からすれば、俺のやっていることは市場破壊もいいところなのだろう。
「まあ、これで村の安全は確保できた。避難していた村人たちも呼んできてくれ。腹が減っただろうし、俺が炊き出しをするよ」
「た、炊き出し? タクミさん、料理もできるの!?」
「料理というか、調達だな。……カテゴリー:食品・レトルト。よし」
俺は再び銅貨を数枚放り投げた。
現れたのは、オリーブドラブ色に塗装された武骨な大型缶詰の山だ。
ルナミス帝国軍が正式採用している長期保存食、『戦闘糧食1型』である。
俺は缶詰の底に貼られている『微力火炎魔石』のシールを剥がし、ポンッと底を叩いた。
シュウゥゥゥ、と魔法化学反応によって缶が急速に加熱され、数分でアツアツの状態になる。
「さあ、食ってくれ。ルナミス軍傑作のメニューB『肉椎茸と米麦草の醤油草炊き込みご飯』だ」
プシュッ、と蓋を開けた瞬間。
醤油草が焦げたような香ばしい匂いと、肉椎茸の強烈な旨味を凝縮した香りが、ポポロ村の広場にブワッと広がった。
「うわぁ……! すっごくいい匂い……!」
「なんやこれ! 缶詰から湯気が出とるやないか!」
キャルルとニャングル、そして集まってきた村人たちがゴクリと喉を鳴らす。
キャルルが付属の先割れスプーン(魔導プラ製)で一口食べると、その大きな瞳に涙が浮かんだ。
「お、おいしぃぃぃっ! お肉みたいなすごい弾力と旨味! ご飯にもしっかり味が染み込んでて……それに、食べた瞬間から闘気が湧き上がってくるよ!」
「ホンマや! 携帯食料のレベルやあらへん! タクミっち、これ原価なんぼや!?」
「これも銅貨1枚(100円相当)だな」
「……これを金貨1枚で売り捌けば……ウハウハや……!」
ニャングルがよだれを垂らしながら、算盤を恐ろしい速度で弾き始めた。
村人たちも「こんな美味いメシ食ったの初めてだ!」と大喜びで炊き込みご飯を頬張っている。
こうして、俺のポポロ村での快適なスローライフは、大絶賛の中で幕を開けたのだった。
——一方、その頃。
勇者ゼロス・ディバインの天幕(の跡地)では、地獄絵図が展開されていた。
「寒い……! 誰か、火の魔法を使える奴はいねぇのか!」
結界が消滅し、冷たい夜風が吹きすさぶ中、ボロボロになったテントの残骸でゼロスは震えていた。
豪華な家具は消え失せ、オリハルコンソードは錆びて折れ、兵士たちは疲労と飢えで地面に座り込んでいる。
「ゼロス様! 補給部隊から、残存している食糧をかき集めてまいりました!」
副官が青ざめた顔で、無地の茶色い薄型真空パックを抱えて走ってきた。
タクミのスキルによるロジスティクスが消滅した今、彼らに残されているのは、帝国軍需省がコスト削減のためだけに生み出した完全人工合成レーション——通称『戦闘糧食3型』のみだった。
「おお、でかした! 早く開けろ!」
ゼロスがひったくるようにパックを破ると、中から鮮やかな黄色をしたスポンジ状の四角い塊が飛び出した。
「なんだこのオムレツみたいなのは……? まあいい、腹にたまればなんでもいい!」
飢えに耐えかねたゼロスは、その塊に思い切り噛み付いた。
——その瞬間、ゼロスの脳髄を強烈な電撃のような『絶望』が貫いた。
「ンガッ……!? な、なんだこの異常な弾力は!? ゴムタイヤを噛んでるみたいだぞ!?」
主原料:スライムの死骸から抽出した工業用凝固剤、ロックバイソンの削りカス。
人間の顎では到底噛み切れない凶悪なテクスチャ。
しかし、本当の地獄はここからだった。
咀嚼した瞬間、防腐魔法と魔法化学調味料が最悪の化学反応を起こし、密封されていた『匂い』が口腔内で爆発したのだ。
「オェェェェェェェェェェッ!?」
強烈な胃酸の匂いと、腐った靴下を煮詰めたような悪臭。
ゼロスは白目を剥き、食べたものを周囲に撒き散らしながら四つん這いになった。
「ぜ、ゼロス様!? どうされたんですか!? 兵士たちも……あぁっ! みんな吐いている!」
配給された『ゲロオムレツ』を口にした兵士たちが、次々と塹壕の中で嘔吐し、胃を抱えてのたうち回っている。
部隊の士気は低下どころの話ではない。物理的に戦闘不能状態に陥っていた。
「ぜぇ、ぜぇ……っ! なんだこのゴミは!! こんなものを俺に食わす気か!!」
「し、しかし! これまで我々が食べていた極上の軍隊カレーや油そばは、すべてタクミ殿が独自に手配していたもので……! 正規の支給品は、この3型しか……!」
「あ、あいつ……っ! 俺たちをこんな目に遭わせやがってぇぇぇっ!!」
自分が追放したことなど棚に上げ、ゼロスは夜空に向かって怒りの咆哮を上げた。
ステータスだけは高い勇者パーティが、最悪の『飯マズ』によって内側から崩壊していく。
「ハックション!!」
同時刻、ポポロ村の広場。
食後の熱い陽薬茶を飲んでいた俺は、派手なくしゃみをした。
「どうしたん? タクミっち。風邪か?」
「いや……誰かが俺の噂でもしてるのかな。それより、明日はあの空き地に『24時間ファミレス』の建物を召喚しようと思うんだが」
「フ、ファミレス……? ま、またお前の100均が火を噴くんか……!」
極上のメシと温かい茶。
追放先での俺の毎日は、どうやら思いのほか楽しくなりそうだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「銅貨1枚でこの火力はチートすぎる!(笑)」
「タクミの飯テロと勇者のゲロオムレツの落差が最高!」
「ざまぁのスピード感が気持ちいい!」
と思っていただけましたら、ぜひ画面下(または上)にある
【ブックマークに追加】
【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価
をポチッと押して、本作を応援していただけますと、作者の執筆スピードが爆上がりします!
評価やブクマは、本当に大きな励みになります……!
次回、第4話「【強欲の歌姫】パンの耳からファミレス飯へ」
村の片隅で雑草を食べる元人魚姫・リーザが登場します! お楽しみに!




