【100均チート発現】「これ、銅貨1枚(100円)だけど?」
【100均チート発現】「これ、銅貨1枚(100円)だけど?」
勇者パーティを抜け出した俺は、ルナミス帝国とアバロン魔皇国、そしてレオンハート獣人王国の三カ国が接する緩衝地帯——『ポポロ村』へと足を踏み入れていた。
のどかな田園風景が広がる、人口千人程度の小さな村。
空気がうまく、日差しが暖かい。前世のコンクリートジャングルや、勇者ゼロスのタバコと欲望の匂いが充満した天幕とは大違いだ。
「ここなら、誰にも邪魔されずに快適なスローライフが送れそうだな」
そう独りごちて村の入り口ゲートに近づいた時だった。
「そこのキミ! 止まりなさい! 見ない顔だけど、商人? それとも冒険者?」
元気の良い、よく通る声に呼び止められた。
振り返ると、頭にピンと立ったウサギの耳を持つ、可愛らしい少女が立っていた。
動きやすいラフな衣服に身を包み、足元にはなぜかガテン系御用達の『安全靴(タローマン製)』を履いている。
「俺はタクミ。元冒険者というか……裏方をやっていたフリーランスだ。この村に定住できればと思って来たんだが」
「定住希望!? わぁっ、大歓迎だよ! 私はキャルル・ムーンハート! このポポロ村の村長をやってるの!」
月兎族のキャルルは、人懐っこい笑顔で俺の手を両手でギュッと握ってきた。
だが、その背後から、コテコテの関西弁と、パチパチと算盤を弾く音が聞こえてきた。
「あかんで村長。素性の知れん兄ちゃんをホイホイ入れたら。ただでさえ、前の村長が村の資金を持ち逃げして、ウチらは火の車なんやから」
現れたのは、煙管を吹かしながら気怠げに歩いてくる、猫耳族の青年だった。
金の装飾が施された上着を着崩しているが、その目は値踏みするように俺を観察している。
「ゴルド商会のニャングルや。この村の財務を担当しとる。兄ちゃん、定住希望っちゅうことは、家を建てる資金とか、村への協賛金は払えるんやろな?」
「ニャングル! お金の話ばっかりしちゃダメだってば! タクミさんが困ってるでしょ!」
キャルルが慌ててニャングルを咎めるが、ニャングルは「世の中、金なんやで」と肩をすくめた。
なるほど。前村長が駆け落ちして資金を持ち逃げしたせいで、村の財政はどん底らしい。
だが、それなら俺にとってはこの上ない好条件だ。
「協賛金なら問題ない。それに、インフラ整備や村の防衛なら、俺がタダで請け負ってもいい」
「タダで!? 兄ちゃん、気前ええこと言うけど、ウチの村は今、ただの資金難やないんやで?」
ニャングルが煙管の灰を落とし、眉をひそめたその瞬間。
カンッ! カンッ! カンッ! カンッ!
村の物見櫓から、けたたましい半鐘の音が鳴り響いた。
「キャルル村長! ニャングルさん! 大変です! 北の森から『死蟲機』の群れが向かってきてます! その数、およそ二百!」
「なっ……死蟲機だと!? なんでこんな緩衝地帯に!」
キャルルのウサギ耳がピンと張り詰め、表情が一瞬にして武闘派のそれへと変わった。
死蟲機。かつての古代大戦の残滓であり、死蟲王サルバロスが操る機械と虫の融合モンスターだ。酸を吐く『死蟻型』が群れをなせば、小さな村など数分で更地になる。
「あかん! 前村長が防衛結界の維持費まで持ち逃げしたせいで、今の村には魔導フィールドが張れへん! 傭兵を雇う金貨100枚もあらへんぞ!」
「自警団だけで迎撃する! 村のみんなを地下シェルターへ避難させて!」
キャルルが両腕に特注のダブルトンファーを構え、最前線へ飛び出そうとする。
月兎族の特性である異常な脚力と、安全靴による蹴り技で戦うつもりらしいが、多勢に無勢だ。
「待て、キャルル。素手で二百の機械化モンスターを相手にするのは非効率だ」
「タクミさん!? 下がってて、私が村を守るから!」
「いや、俺が定住する予定の村が壊されるのは困る。ニャングル、さっき『金貨100枚ない』と言っていたな?」
俺はポケットを探り、銅貨を1枚——つまり、日本円にして「100円」相当の硬貨を取り出した。
「これだけで十分だ」
「はぁ? 兄ちゃん、頭沸いたんか? 銅貨1枚(100円)で何が買えるっちゅうねん。パン一個しか買えへんぞ!」
ニャングルの呆れた声を背に、俺は村の防衛ゲートの前に立ち、タブレット端末(に見せかけたスキルのインターフェース)を起動した。
俺のユニークスキル【100均】。
このスキルの真髄は、「100円」という概念の拡張にある。
例えば、地球の100円ショップには「おもちゃの兵隊」や「防犯ブザー」が売っている。俺のスキルは、その『概念』をアナステシア世界の現実に合わせて、国家予算級の軍事兵器としてスケールアップして実体化させることができるのだ。
「カテゴリー:防犯・セキュリティ。アイテム検索……よし、これだ」
俺は銅貨1枚を空中に放り投げた。
硬貨が光に包まれて消滅すると同時に、俺は足元の地面を軽くタップする。
「展開しろ(インストール)——『魔導地雷原(防犯用)』および、『自動迎撃対空魔砲(害虫駆除スプレー)』」
ズゴゴゴゴゴゴォォォォッ!!
地響きとともに、村の入り口周辺の土がボコボコと隆起した。
地中には、ルナミス帝国軍が採用している最新鋭の『魔導地雷』が数百個単位で一瞬にして敷き詰められる。
さらに、ゲートの両脇には、黒光りする二基の巨大な『魔導長距離自動迎撃魔砲』が、ガチャガシャン! と重厚な金属音を立ててせり上がってきた。
銃身には、ご丁寧に「ポッキリショップ・品質保証」というシールが貼られている。
「な……ッ!?」
「は……えぇ!?」
背後で、ニャングルの煙管がポロリと地面に落ちた。
キャルルはトンファーを構えたまま、ポカンと口を開けて固まっている。
「ど、どういうことや!? ルナミス帝国の最新防衛システムやないか! あれ一基で金貨1万枚はする代物やぞ!? なんでそれを、一瞬で、しかも銅貨1枚で!?」
「あぁ、俺のスキルで買ったんだ。これ、銅貨1枚(100円)だけど?」
「バグっとるやろその算盤ぁぁぁっ!?」
ニャングルが頭を抱えて絶叫する。
商人としての金銭感覚が、俺のスキルの前で完全に崩壊したらしい。
「ギチチチチッ……!!」
「グルルアァァッ!」
そんな俺たちのやり取りをよそに、森の奥から土煙を上げて、鋼鉄のアゴを持つ『死蟻型』の群れが押し寄せてきた。
酸の唾液を撒き散らしながら、一直線にポポロ村のゲートへ突撃してくる。
「タクミさん! 来るよ!」
「問題ない。……システム、迎撃開始」
俺が指を鳴らした瞬間。
『——害虫の接近を検知。駆除プロセスを開始します』
銅貨1枚(100円相当)で買った防衛システムが、無慈悲な殲滅の光を放ち始めた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「銅貨1枚で魔導砲はおかしいだろ!(笑)」「ニャングルのツッコミが良い!」「死蟲機が一瞬で消し飛びそう!」と少しでも楽しんでいただけましたら、
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次回、第3話『【飯テロと飯マズの絶対格差】「極上メシとゲロオムレツ」』
タクミが振る舞う最高の軍用メシと、勇者パーティを襲う最悪の食事の対比をお楽しみに!




