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『「100円のゴミしか出せない」と追放されたが、魔導兵器も無制限調達でした〜緩衝地帯で要塞村を作ったら今更泣きついても遅いです』  作者: 月神世一


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第一章 兵站無双とゴッドチューブ大炎上編

【追放と崩壊の始まり】「地味な雑用はいらねぇ」

「お前、今日でクビな。もう俺のパーティにはいらねぇわ」

豪奢な天幕テントの中に、ふわりと甘い煙が漂う。

最高級の嗜好品である『ポポロシガー』を吹かしながら、勇者ゼロス・ディバインはひどく退屈そうに言い放った。

不自然なほど白く整えられた歯。シークレットブーツ……いや、この世界風に言えば『厚底の魔導ブーツ』で誤魔化した身長。

聖人君子として大陸中に名を轟かせる勇者の、カメラが回っていない時の素顔がこれである。

「……理由を、伺っても?」

俺、タクミは手元のタブレット端末(俺のスキルで出したものだ)から視線を上げ、淡々と問い返した。

「理由? 言わなきゃわかんねぇのかよ。お前のその【100ポッキリショップ】とかいう貧乏くせぇスキルのせいだよ!」

ゼロスは苛立たしげにシガーの灰を床に落とす。

表では「ポイ捨てされたタバコを拾う勇者」として売っているくせに、裏ではこの有様だ。

「いいか? 俺たちは神々が運営する配信サイト『ゴッドチューブ』でPV(視聴数)を稼がなきゃなんねぇんだよ! なのに、お前が裏でチマチマと『100円の魔導地雷』だの『100円の結界』だの小細工をするせいで、魔物との戦闘が秒で終わっちまうだろうが!」

「……俺のトラップや防衛陣地構築は、部隊の損耗率をゼロに抑えていますが。被害を出さないことが最優先でしょう」

「それがダメだって言ってんだよ!」

ドンッ! とゼロスがマホガニー調の高級デスクを叩く。

「視聴者が求めてるのはな、血湧き肉躍る死闘なんだよ! 兵士たちがボロボロになって、絶望的なピンチに陥ったところに、この勇者ゼロス様が【マネー】のスキルで課金強化して颯爽と敵をなぎ倒す! これが一番スパチャもPVも稼げるんだ。お前の地味な裏方作業は、俺の配信の『絵面えづら』を悪くしてるんだよ!」

呆れて言葉も出ない。

前世、日本のブラック企業で工程管理ディレクターとして死ぬほど働かされていた俺からすれば、ゼロスの言動は「炎上系迷惑ユーチューバー」のそれと何ら変わりない。

神界の新人である炎上神ワイズと裏で契約を結び、意図的に防衛線を崩して被害を出し、そこを救う自作自演のマッチポンプ。

それがこの勇者のやり方だ。

だが、こいつは決定的な勘違いをしている。

俺の【100ポッキリショップ】は、「100円相当のゴミを出すスキル」ではない。

地球上のあらゆる工業製品、建築資材、食糧、そして高度な現代兵器を「100円(または100ポイント)」相当として無制限に召喚・カスタマイズできる規格外の能力だ。

さらには、その「100円の価値」という概念をバグらせ、本来なら国家予算級の魔導戦車や防空システム、極上糧食すらも「100円相当のリース品」として調達し、部隊に配備していたのだ。

この豪華な天幕も、空調設備も、ゼロスが今飲んでいる極上のポポロ・コーヒーも。

全部、俺のスキルで「調達」し、維持管理しているものだ。

「……お前みたいな戦闘力ゼロの雑用係がいると、俺のブランドに傷がつく。今日限りで荷物をまとめて出ていけ。あぁ、これまでの未払い給料? 配信の邪魔をした違約金として相殺してやるよ。感謝しろよな」

ニヤニヤと下劣な笑みを浮かべるゼロス。

本来なら労働基準法違反で労基に駆け込むところだが、あいにくこのアナステシア世界にそんなまともな機関はない。

だが、俺はブラック企業で鍛え上げられた元社畜だ。

理不尽な上司のトカゲの尻尾切りなど、想定の範囲内である。むしろ、こんな胸糞の悪いヤラセ部隊から堂々と抜けられるなら好都合だった。

「……そうですか。わかりました」

俺は深くため息をつき、タブレットの画面を数回タップした。

「未払い給与の件は了承しました。放棄します。——その代わり、俺が手配したインフラや装備品はすべて『契約解除』とし、所有権を引き上げさせてもらいますね」

「はっ! 負け惜しみかよ。お前の出した100円のガラクタなんて全部置いていけ。兵士の暇つぶしの的くらいにはしてやるからよ」

「……ええ。では、失礼します」

俺は一礼し、天幕を後にした。

引き留める者はいなかった。ゼロスの取り巻き連中も、俺のことをただの「飯炊きと雑用係」程度にしか思っていないからだ。

外に出ると、澄んだ空気が肺を満たした。

爽快だった。重くのしかかっていた責任感から解放され、肩の荷が下りたのがわかる。

「さて……退職金代わりの資金は十分にあるし、緩衝地帯の『ポポロ村』あたりで、のんびりスローライフでも始めるか」

俺は一切の未練なく、勇者部隊の拠点に背を向けた。

足取りは軽く、心は晴れやかだった。

これからあの部隊に何が起こるか。

マリーシア(巧妙な罠)を仕掛けたわけではない。ただ純粋に、俺が「仕事サポートをやめた」だけだ。

——俺が敷地を出てから、ちょうど『1秒後』のことだった。

「ひゃはははっ! あーあ、やっとあの小うるさい説教男がいなくなったぜ」

天幕の中で、ゼロスは足を机に乗せ、ポポロシガーの煙を深く吸い込んだ。

「『契約解除』だぁ? バカじゃねぇの。あいつの出した100円の鍋とかコップなんて、どうでもいいっつーの。俺にはこのオリハルコンソードと、無敵の……え?」

ゼロスが腰に立てかけていた愛剣——魔王軍の幹部すら両断するという『オリハルコンソード』に視線を落とした瞬間だった。

ボロボロ……ッ!

輝きを放っていたはずの白銀の刀身が、突如として赤茶色に変色し、乾いた音を立てて崩れ落ちたのだ。

「は……?」

ゼロスは目を丸くした。

彼には理解できなかった。その剣が常に新品同様の切れ味を保っていたのは、タクミが毎日「100円相当の超高分子ナノ研磨剤」と「魔力修復スプレー」でメンテナンス(リース保守)をしていたからだということを。

タクミが『契約解除』を行った瞬間、すべてのバフと保守管理がリセットされ、金属疲労が一気に牙を剥いたのだ。

異変はそれだけではなかった。

『——警告。防衛結界のサブスクリプション契約が解除されました。システムの稼働を停止します』

無機質なアナウンスが響き渡ったかと思うと、拠点を覆っていた鉄壁の魔導フィールドが、パリンッ! とガラスが割れるように消滅した。

「な、なんだ!? 結界が消えた!?」

パニックになるゼロス。

さらに、彼がくつろいでいた最高級のマホガニー調デスクがただの丸太に変わり、座っていたふかふかのソファが腐った藁束へと変貌する。

手元にあった極上のポポロ・コーヒーは、泥水のような悪臭を放ち始めた。

「うおっ!? げほっ、なんだこれ! 臭え!」

外からは、兵士たちの怒号と悲鳴が聞こえてくる。

『おい! 魔導ライフルの弾倉が空だぞ!』

『戦車のエンジンがかからねぇ! 魔力タンクが消え失せてる!』

『ダメだ、食糧庫の備蓄が全部ただの石ころになってるぞ!!』

ゼロスは信じられないものを見るような目で、崩れ落ちた自陣を見渡した。

彼の【マネー】スキルは、自分自身のステータスを一時的に上げることはできても、兵站ロジスティクスを構築することはできない。

彼らが当たり前のように享受していた「快適な拠点」「無尽蔵の弾薬」「絶対に破られない結界」「美味しい食事」は、すべてタクミというたった一人の男が、異常なスキルで完全に管理・維持していたものだったのだ。

「う、嘘だろ……? おい、タクミ! タクミィィィィッ!!」

ゼロスの情けない絶叫が、結界の消えた拠点に虚しく響き渡る。

しかし、有能すぎる裏方はもういない。

兵站を失った軍隊がどうなるか。

ヤラセと虚飾で塗り固められた勇者パーティの、惨めで無様な崩壊が、今ここに始まったのである。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

「ヤラセ勇者の崩壊がスカッとした!」「100均スキルのチートっぷりをもっと見たい!」「タクミのこれからのスローライフが楽しみ!」と思っていただけましたら、

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次回、第2話「【100均チート発現】これ、銅貨1枚(100円)だけど?」でお会いしましょう! 引き続きよろしくお願いいたします!

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