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婚約破棄された雑用係の私、公爵様の甘々な求愛に無自覚なまま愛されすぎている件  作者: おーちゃん


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30話

第30話 元婚約者、恋の戦場に降臨


 屋敷に戻った瞬間、恋の空気が漂うことになるのだった。

 王宮からの帰り道。

 レティシアは、胸の奥がまだ熱かった。


(閣下。運命になりたいなんて。どうしよう)


 思い出すだけで顔が熱くなる。

 屋敷の門をくぐった瞬間、ヴィクトール公爵がレティシアの手をそっと取った。


「レティ今日は疲れただろう。部屋まで送る」


「だ、大丈夫ですよ。一人で歩けます」


「歩かなくていい。私が送る」


「送らなくていいです」


「送る!!」


「送らないでください!!」


「送る!!」


「やめてください!!」


 メイドたちが壁の陰からひそひそ声を漏らす。


「閣下、完全に恋人ムーブね」


「いや、夫婦ムーブよ」


「結婚式いつ?」


「聞こえてますから!!」


 レティシアは突っ込む。



 アレクシア、胃痛で倒れそうだった。

 頭を押さえながら言った。


「私は視察官なのに。なぜ恋愛の仲裁をしているのかしら」


 ウォーレスが紅茶を飲みながら答える。


「視察官殿、恋愛は国家の一大事だよ」


「違います」


「違わないよ」


「違います」


「違わないよ」


 アレクシアは屋敷に来て失敗だったと思う。


 ドロシーが腕を組んでレティシアに言った。


「レティ、あんたもう観念しなさい。閣下はあんたに惚れてるのよ」


「惚れてません。私は雑用係です」


「惚れてるわよ」


「惚れてません」


「惚れてる」


 ヴィクトールが即答した。


「閣下!!」


 ドロシーは笑った。


「ほらね」


 その時、屋敷の門が開いた

 ガチャリ。

 屋敷の門が開き、黒い馬車がゆっくりと入ってきた。

 メイドたちがざわめく。


「誰か来たわよ?」


「王宮の使者?」


「刺客?」


「恋のライバル?」


「最後のは違います!!」


 レティシアは慌てて否定した。

 だが、馬車から降りてきた人物を見て、レティシアは固まった。


「ギルバート様」


 伯爵家嫡男。

 レティシアの元婚約者。

 ギルバート・ラングレイだった。


(なぜ来たのかな)


 彼は完璧な笑みを浮かべて言った。


「久しぶりだね、レティシア」


 元婚約者の登場に、公爵は即座に警戒モードとなる。

 ヴィクトールの目が細くなる。


「なぜここに来た」


 ギルバートは微笑んだまま答えた。


「レティシアを迎えに来たんだよ」


「迎えに?」


 レティシアは首を振る。


「ギルバート様、私は」


「レティシア。君は伯爵家の娘だ。そして僕の婚約者だった」


「元、です!!」


(元なのに、しつこい)


「元でも、僕は君を諦めていない」


 ヴィクトールの眉がピクリと動いた。


「諦めろ」


「嫌だね」


「諦めろ!!」


「嫌だね!!」


「二人とも、やめてください!!」


(ギルバートが来ると、ろくなことがない)


「きゃーーー!! レティを巡って恋のバトル!!」


「閣下VS元婚約者!!」


「これは恋愛戦争!!」


「勝者は誰?」


「レティのハートを掴むのはどっち?」


「私の恋愛で遊ぶのは、やめてください!!」


 レティシアは叫んだ。


 公爵に否定されてもギルバートはレティシアの手を取った。


「レティシア。君は伯爵家に戻るべきだ。危険な屋敷にいる必要はない」


 ギルバートは甘い言葉で攻める。


「危険って」


「刺客が来るんだろう? 君が狙われるなんて、僕は耐えられない」


 たまらず、ヴィクトールが割って入る。


「レティは私が守る。手を離せ」


「君が守れているようには見えないね」


「守っている」


「守れてない」


「守っている!!」


「守れてない!!」


「二人とも、やめてください!!」


 レティシアは、ギルバートのある変化に気づく。

 レティシアはギルバートを見つめた。


(ギルバート様前より優しい?)


 昔のギルバートどこか冷たく、レティシアを飾りとして扱っていた。

 だが今のギルバートは、レティシアの手を優しく包むようだ。

 真剣な目で見つめている。


「レティシア。君が幸せなら僕はそれでいい。でも君が危険に晒されるのは耐えられない」


 レティシアの胸が少しだけ揺れた。


(ギルバート様変わったの?)


 しつこいギルバートに対して公爵は嫉妬で爆発する。

 ヴィクトールは顔を真っ赤にして叫んだ。


「レティの手を離せ!!」


「嫌だね」


「離せ!!」


「嫌だね」


「二人とも、やめてください!!」


 レティシアは二人に言った。


(まだ続けるのか)


 ドロシーはこの恋愛戦争を豪快に仕切ることになった。

 ドロシーが手を叩いた。


「はいはい、二人とも落ち着きなさい!! レティが困ってるでしょ!!」


「困ってない!!」


 ヴィクトール。


「困ってる!!」


 ギルバート。


「はい、困ってます!!」


 レティシア。


「ほらね」


 ドロシーは腕を組んだ。


「レティの気持ちを聞くのが先よ。レティ、あんたはどうしたいの?」


 レティシアは胸に手を当てた。


「私は」


 レティシアは深呼吸した。


(ここは、はっきりとした態度をします)


「伯爵家には戻りません!!」


 ギルバートが目を見開く。予想外の答えだったから。


「レティシア!」


「でもギルバート様が心配してくれるのは嬉しいです。ありがとうございます」


 ギルバートは少しだけ笑った。


「君は優しいね」


 ヴィクトールが割り込む。


「レティは優しい!!」


「閣下!!」


 ギルバートの宣戦布告が開始されることになる。

 ギルバートはヴィクトールを見据えた。


「公爵閣下。僕はレティシアを諦めない」


「諦めろ」


「嫌だね」


「諦めろ」


「嫌だね」


「まだやるのか!!」


 レティシアは叫んだ。

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