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婚約破棄された雑用係の私、公爵様の甘々な求愛に無自覚なまま愛されすぎている件  作者: おーちゃん


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29話

第29話 帰り道は恋の嵐


 禁書庫を出た瞬間、恋の空気が生まれることもある。

 禁書庫の扉が閉まった瞬間、レティシアは深く息を吐いた。


(疲れた)


 出生の真実。

 影の一族。

 運命の相手。

 魔力の安定。

 頭がいっぱいで、胸がざわざわしている。

 そんなレティシアの横でヴィクトール公爵が、妙に静かだった。


「レティ」


「は、はい?」


「さっきの運命の話だが」


「忘れてください」


「忘れられない」


「忘れてください!!」


「忘れられない!!」


 レティシアは真っ赤になった。


(なんでこの人はわからないのよ!)


 アレクシア、胃痛で倒れそうだった。禁書庫の扉にもたれかかっていた。


「もう無理です」


「視察官殿、大丈夫ですか?」


 ハンスが心配そうに声をかける。ちなみにハンスは公爵副官。常識人だが、ヴィクトールの奇行に振り回される25歳。


「大丈夫じゃありません。禁書庫で恋愛騒動を起こす人間、初めて見ました」


「ですよね」


「あなたも胃が痛いのですか?」


「ええ、閣下のせいで」


「私もです」


 二人は静かに頷き合った。



 王宮の廊下を歩く一行。

 メイドたちはテンションMAXだった。


「レティ、さっき閣下に抱きしめられてたよね!!」


「完全に恋人」


「いや、夫婦」


「結婚式いつ?」


 メイドたち、恋バナで帰り道を破壊する。


「もう、やめてください!!」


 レティシアは赤ら顔で叫んだ。


(本当におしゃべりだわ)


 ヴィクトールは顔を赤くしながら言う。


「レティ結婚式」


「閣下!!」


「違うのか?」


「違います」


「違わない」


「違います!!」


「違わない!!」


「私の運命に影響され過ぎです」


 ドロシーが腕を組んで言った。


「まあまあ、レティ。閣下があんたに惚れてるのは全員知ってるんだから、もう観念しなさい」


「惚れてません」


「惚れてるわよ」


「惚れてません!!」


「惚れてるわよ」


「惚れてる!!」


 ヴィクトールが即答した。


「閣下!!」


 ドロシーは笑った。


「あははは、ほらね」


 ドロシーは恋愛を豪快に語った。

 その点ウォーレスはいつも通りに、紅茶を飲みながら言う。


「いやあ、禁書庫で恋が芽生えるなんてロマンチックだね」


「ロマンチックじゃありません。禁書庫ですよ」


「ロマンチックだよ」


「ロマンチックじゃありません!!」


「ロマンチックだよ」


「もう、やめてください!!」


 レティシアはさらに赤くなる。

 一方アレクシアは頭を抱えた。

 この人たち、恋愛の話しかしないのかと思う。


 帰り道、レティシアと公爵が二人きりになるチャンスが訪れる。

 王宮の庭園を通る道で、メイドたちが突然叫んだ。


「視察官殿!! 王宮の騎士団が恋バナに興味津々です!!」


「興味津々じゃありません!!」


「興味津々です!!」


「興味津々じゃありません!!」


「興味津々です!!」


「やめてください!!」


 アレクシアは騎士団に引っ張られる。

 メイドたちも騎士団に質問攻めにされた。

 ウォーレスは紅茶をこぼし、ドロシーは騎士団を追い払っていた。

 結果的にレティシアとヴィクトールだけが取り残された。


(二人きりに)


 レティシアの心臓が跳ねた。

 ヴィクトールも顔を赤くしている。


「レティ」


「は、はい?」


「さっきの運命の話だが」


「忘れてください。あれは書かれたあったことです」


「忘れられない」


「忘れてください!!」


「忘れられない!!」


 レティシアは真っ赤になった。


「閣下」


「レティ私は」


 ヴィクトールが言いかけた、その瞬間。メイドたち、全力で邪魔する


「レティーーーー!!」


「閣下ーーーー!!」


「二人きりにしちゃダメよ!!」


「恋が進む!!」


「結婚しちゃう!!」


「もう、やめてください!!」


 メイドたちが全力で走ってきた。レティシアはいつものように叫んだ。


「なんで邪魔するのよ」


「恋が進むと面白くなくなるからよ」


「恋はじらすのが一番」


「じらしてじらしてじらすのよ」


「いい加減に、やめてください!!」


 レティシアは構ってしまう。


(やはりみんな来たのは間違いです)


 ヴィクトールは怒鳴った。


「邪魔するな。これはレティシアとの問題だ」


「邪魔します」


「邪魔するな」


「邪魔します」


「恋愛の話は禁止にして!!」


 レティシアはさらに混乱する。


 アレクシアが戻ってきた。


「あなたたち!! 王宮の庭で恋愛騒動を起こすなと言ったでしょう!!」


「起こしてません」


「起こしてます」


「起こしてません」


「起こしてます」


 アレクシアは頭を抱え、視察官なのに、なぜ恋愛の仲裁をしているのかと考える。恋愛の仲裁で倒れそうであった。


 騒動が一段落した後。

 レティシアはヴィクトールの隣を歩いていた。


「レティ」


「はい?」


「私は、君が怖がるなら無理に言わない。でも君が嫌じゃないなら私は君の運命になりたい」


 レティシアの心臓が跳ね、閣下の言葉に胸が揺れる。


(閣下)


「わ、私は」


 言葉が出ない。

 でも、胸が温かい。


(嫌じゃない)


 その時。


「レティーーー!! 閣下ーーー!! 恋が進んでるーーー!!」


「邪魔です、やめてください!!」

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