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それでも僕らは平行線

土曜日。

いきなり二人っきりにされたらどうしていいか分からない。

だからつい心にもないことを言ってしまう。一種の照れだろうか。

それでもミツキちゃんは清々しいほどまっすぐだ。

いつもはどうにか寸前のところで踏ん張って来た。

でもそれも限界だ。ミツキちゃんを突き放すだけの精神的な余裕はない。


疲れてる…… 碓氷さんが修学旅行を境に態度を硬化させた。

敵対視するようになってしまった。あの頃の思い出はもう遠く遠くへ。

どうしてと考えても意味がない。すべては光のせいだ。

三年になって三人とも同じクラスになったから。

今までどうにかなっていたものが爆発し抑えが利かなくなった。

こうなってはミツキちゃんへの依存度は高くなるばかり。

危険だと分かっていながらもそれでもやめられない。突き放せない。

ただこれからどうなろうと変わらない。僕らはいつだって平行線。

どんなに愛そうと僕には碓氷さんがいるしミツキちゃんには光がいる。

もし僕が変わってしまえばミツキちゃんはきっと戸惑うだろう。


残念な話僕が碓氷さんを諦めればきっとミツキちゃんは僕への興味を失うはず。

他の女に現を抜かしてるからその魅力を失わない。

しかしきれいさっぱり諦めたらその日の内に関係を断つに違いないんだ。

この絶妙な関係の上に僕たちは成り立っている。

今ミツキちゃんまで失う訳にはいかない。

その面でも僕らは平行線であり続ける必要がある。

だからってこうなってはもうどうしようもない。

覚悟を決めたからには前進あるのみ。


「僕に付き合う必要はない。さあ帰るんだ! 」

「はあ? 元気のくせに生意気! 」

うわ…… 気を遣ったつもりが逆効果。どうしてこうなる?

まったく本当に嫌になる。でも妙に興奮するんだよな。

そうか。このシチュエーションが燃えるからか。

「いや…… ミツキちゃんに悪いかなと思って…… 」

「悪くない! 元気は私が本当に帰っていいの? 」

二人きり。夕方まで誰も帰って来ない。それは気を遣ってのことなのだろう。

だからそんな気の回し方するなよ。あと予定は事前に言って欲しいな。

「いいか悪いかで言えばいいかな」

「はあもう一度? いいの悪いの? 」

「いいはずないだろう? ミツキちゃんを帰らせたくない! 」

まずい…… つい感情的になってしまう。

「うん。素直に最初からそう言えばいいのに。格好つけるからバカみたい」

散々な言われよう。ははは…… はっきり言うんだよな。

しかし実際のところどうしよう?


「だったら何をする? ほら元気? 」

やはりミツキちゃんも自分からは嫌なのか僕から言わせようとする。

でもそれだとこっちとしても焦らしたくなってしまう。

「うーん。そうだな。新入部員の集め方を考えるのは? 

ミツキちゃんも遠慮なくアイディアを出してね」

「はあ? そうじゃないよね? きちんと答える! 」

ミツキちゃんはまだふざけてるだけ。本気で怒ってない。ただこれ以上はまずい。


「部屋の掃除かな? 一週間以上掃除してないんだ…… 」

「夜にでもやれば」

どうやら却下らしい。これは困ったぞ。

「では一緒にお風呂…… 」

まずい。願望が抑えられずに口走ってしまう。

「元気ってば本気? 」

「ああ風呂掃除もしないとな。それから作りかけのプラモデル。ドローンも」

「はい。今日はそう言う日じゃないでしょう? 」

おっとこれもダメらしい。


「だったら一緒にゲームでもどう? 」

「何をするの? 」

「ババ抜き」

「はいそこまで。二人でやれる訳ないでしょう? ふざけるなら帰るから! 」

まずい。怒らせた。焦らしたつもりはないんだが……


「ああ…… また今度な」

「いい加減にして! 」

「ごめんミツキちゃん。ほら落ち着いて。じゃあさっきの続きでもしようか? 」

「元気がそれがいいならどうぞ」


ついにこの日が来た。散々迷った挙句についに決行することに。

二人っきりになったら楽しまなくちゃな。

でも本当に受け入れてくれるかな? 若干不安なんだよね。

僕はその辺のオスと違って理性があるからどうしても考えてしまう。

そうすると立ち止まることになる。情けないがそれが僕と言う人間さ。


「しまった! 大事なものがない。ちょっと買って来るわ」

「はい。これでしょう? 」

例のブツを投げつける。

用意がよろしいことで。これで準備万端。

今目の前には僕にはもったいないぐらいの女の子がいる。

前回のようなミスがないようにと事前に用意してくれた。

何と気の利く子だろうか? やはり僕にはもったいないし相応しくない。

今こそダラダラ続けている関係を清算しないとな。

そう思ってはいるがつい流されてずっとこのまま。


「そうだ。戸締りしたっけ? 」

いきなり入って来る奴はいないだろうが念のため。

「大丈夫! 邪魔者はいない」

「はあ光…… いや何でもない。本当にいいんだね? 」

確認を取る。情けないがこれが主流。ただ強く否定しない限り問題ない。

「好きなの…… 」

どうやらお許しが出たらしい。でも相手は…… いや考えるのはよそう。

相手が誰かは関係ない。僕たちは一歩前に進むんだ。

彼女が望むならそれで構わないさ。


しかしすべてがクリアだと逆に緊張するな。誰か邪魔してくれないかな。

そんな風におかしな感情になる。

正直にすべてをさらけ出す勇気などない。

そもそも土曜の午前中から何をやろうとしてるんだか。


まずはゆっくり腕を掴む。多少強引に。

「ちょっと元気…… 」

「ごめん」

最小限に。言葉を発すればついふざけたくなるし怒らせたくもなる。


「行くよ」

しかし返事がない。これだとどっちかよく分からない。しかしゴーだ。

まずは抱き寄せてキスをする。

これは毎日のようにやってるので問題ない。緊張も焦りもない。

ただゆっくり長くだと暑苦しかったり圧迫感があったりと嫌われる原因にもなる。

お家デートはいつの間にか堪え切れずに求め合ってしまう。


ついにミツキちゃんと正面から向き合うことに。

もう戻れない。本当に戻れない。取り返しのつかないところまで来てしまった。

どうしてこうなったのか? 後悔してる? いや…… それはないか。


                 続く

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