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あんた?

土曜日の朝。

いつものようにミツキちゃんが勝手に上がり込み引っ掻き回す。

もう日常の風景になりつつある。これはお仕置きをしないといけない。

何がいいかな? へへへ…… 迷うぜ。


「ああ…… 元気ってば大きくなってる」

「そうか? 昨日と変わらないと思うけど」

妙に細かいことに目が行くミツキちゃん。

伸びようが縮もうがそんなことはどうでもいいじゃないか。

一日や二日でどうなるものでもないだろう。気にし過ぎだよ。


「そうじゃなくて下の方…… 」

言いにくそうに頬を赤らめる。もしかしてこっち?

「悪い。起きたばかりだからコントロールできないんだ。それで今日は何の用?」

毎週のように用もないのにやって来るしつこさ。まるでベテランの勧誘。

一応は恋人だからそれは構わないが何日も連続となると話も変わって来る。


「元気と一緒に出掛けようと思って」

とんでもないことを言いやがる。まさか買い物に付き合えと言うのか?

冗談じゃない。そんなの光について行ってもらえ。一応は保護者なんだから。

「悪い。今日は運勢が最悪なんだ。家にいないと。ラッキーカラーは緑だってさ」

「今起きたのにどうやって? 」

当然の疑問を口にする。下手な嘘をついて追い詰められていく。

「それは…… 何となく」

「はあ? だったらここで楽しいことしよう? 」

そんな風に笑う。僕としてもどうせ暇だから構わないがあまりにも大胆。

甘いな。一度口にしたからには取り消せないぞ。ついでにお仕置きもしないとな。


「やっぱり外に…… 」

言い切る前に抱き着いて来るミツキちゃん。今日の格好も素敵だ。

白のワンピースが輝いてる。これは帽子が似合うかな。キャップではなく深いの。

時期はまだ早いがひまわり帽みたいな堅いのがいいだろう。

「ごめん。今はこれくらいで」

積極的だったミツキちゃんが態度を変える。きっと恥ずかしいのだろう。

「なあもう少しいいだろう? 」

「それは…… 」

どうしたんだ? 何かを気にしてる様子。らしくない。今までの積極性はどこに?


その時だった。ドンと勝手にドアが開いてお茶が運ばれてくる。

朝っぱらからそこまでしなくてもいいのに。余計なことを。

「あらごめんなさい」

そう言いながらも部屋に入る母さん。いや分かってるなら入って来るなよ。

「また? このパターン何度目? 」

結局ミツキちゃんに嵌められたのか? どうでもいいや。そろそろ起きるか。


「それで留守番と買物どっちにする? 」

ミツキちゃんがおかしなことを口走る。いきなりの二択を迫るから苦労するよ。

「はあ? 留守番でいいよ。じゃあ行ってらっしゃい! 」

本当は気分転換に運動したかったが生憎の空模様。運動はいつか気が向いたら。

あと一時間もすれば雨が降って来そうなどんよりとした曇り空。

予報通りだな。最近の予報は当たるから助かる。

最悪買物に付き合わされるくらいならここでゴロゴロしたい。


「ハイご飯だよ」

そんな風に自然とミツキちゃんがご飯を寄越すものだからつい手に取る。

相手のペースに乗せられてる気が。

「あの…… 冷えてるんですけど。まさかミツキちゃんが作った? 」

なるべく優しく刺激しないようにさらっと。

冷凍ご飯を解凍せずに渡すところなどワイルドだぜ。いや解凍できてないだけか。

「ごめんごめん。つい…… ほらこれでいいでしょうあんた? 」

それを言うならあなただろう? でも指摘しないぞ。

もし言えば僕が意識してると思われるからな。そんなプレー誰も望んでない。

あれ…… 恥ずかしそうに俯いたぞ。まさか本気で間違えた? かわいいかも。

それでもフォローしてあげない。それが厳しさだ。

ミツキちゃんは招待を受けたのではなく勝手に入り込んだ侵入者。

いくら母さんの許可を得てもそんなの関係ない。


「どう魚は? 」

と言っても缶詰だからいつもと変わらない。

骨が溶けて食べやすいし焦げてることもないから食事が進む。

美味いが缶詰ではさすがに個性がでない。

できるならゆっくり食べたい。ずっと見てられると食い辛いんだよね。

何となく美味いと言わないといけないプレッシャーがある。


「食った食った。もうお腹いっぱい! ミツキちゃんまだ行かないの? 」

おかしい。なぜかゆっくりしてる? 日常の食事風景はどうでもよくないか?

「何を言ってるの元気? 行かないよ」

そんな風に宣言する。行かないってのはアリなのか?

「はあ? だったら買い物は? 」

おかしいな。出掛けるんじゃなかったのか? 聞き違い?

「何を言ってるの元気? 私たち留守番でしょう」

嘘…… てっきり母さんと買物にでも…… そんな訳ないのか?

でも娘ができたみたいだから嬉しい。私もですお母様って言ってたよな?

するとただの社交辞令で本当はそうでもない? 

おっと…… どうでもいいことだった。


「それでいつ戻るって? 」

「さあ…… お昼は勝手に食べてねと言ってたから夕方? 」

とんでもない親だな。なぜ二人っきりにさせる。問題がおきたらどうする?

うわまずい。つい意識してしまう。

「どうしたの元気? 興奮した? 」

意味不明だがつい見つめたのを勘違いしたらしい。

しかし本気でこれでいいのか? どうも展開が軽すぎるんだよな。

大体普通は反対だろう? 僕がお願いして断るのが正しい男女の在り方だ。

僕って古いのかな? それともミツキちゃんがイカレてるだけ?

たぶんミツキちゃんの方が変なんだろうな。


「だったら父さんは? 」

「出張じゃないの? カレンダーにはそうなってるよ」

またしても細かいところにも気が付く。役に立ってるじゃないか。

だったらこの状況も理解しろよ。なぜ二人っきりにしようとする?

朝っぱらからロクなことが起きない。


「よし。もう帰っていいいぞ」

これも優しさ。だってそう言わないとずっと突き合わせることに。それは悪い。

買物に行けばいいし友だちと遊びに行けばいいさ。

僕になど構わなくていい。さあ好きなところに行きな。

でもそんなこと言えばまた元気のくせに生意気って言われるんだろうな。


                続く

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